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夫、パートナーによる「経済的虐待」を知っていますか?Economic Abuse

イギリスで、女性への家庭内虐待の一つの形態として認識されているものにEconomic Abuse「経済的虐待」があります。

日本語で「経済的虐待」と検索すると、高齢者の財産を親族が不当に処分するといった高齢者への虐待として問題視されている記事がほとんどです。例えば、日経新聞の記事、「家族による「経済的虐待』が増加 高齢者の年金・預金搾取」(2010年)では

高齢者の預金や年金を使ってしまう、家族らによる「経済的虐待」が増えている。ただ、収入減などを理由に親世帯に家計を頼る子世帯は多く、虐待と判断しきれない例が少なくない。行政などはどこまで介入すべきか、悩みが尽きない。

家族による「経済的虐待」が増加 高齢者の年金・預金搾取 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

と「経済的虐待」が取り上げられています。日本では、親のお金を子どもが勝手に使うことに関しては「虐待」と認識されていることが分かります。一方で、夫やパートナーが女性の金銭や経済的独立の機会を奪うことには関心が薄く、虐待という認識は薄いように思います。

今回は、イギリスの「経済的虐待」に取り組んでいるニコラ・シャープ=ジェフス博士Dr. Nicola Sharp-Jeffsによる経済的女性をサポートする組織、SES; Surviving Economic Abuse(経済的虐待を生き延びる、の意味)による「経済的虐待とは?」の記事を紹介します。What is economic abuse? - Surviving Economic Abuse



What is economic abuse?、経済的虐待とは?

"お金があれば幸せになれるわけではないが、お金がなければ行き場がない。だから私にとって、経済的虐待は最大の支配なのです。"

経済的虐待は法的に認められた家庭内虐待の一形態であり、家庭内虐待法に定義されています。経済的虐待は、親密なパートナーからの暴力として起こることが多く、パートナーや元パートナーによるお金や財産、そしてお金で買えるものを支配することを含みます。

英国では女性の5人に1人が、現在または以前のパートナーから経済的虐待を受けた経験があります。

収入、支出、銀行口座、請求書、借り入れの主導権を相手に握られることを経済的虐待と言います。他にも、交通機関やテクノロジーなど、私たちが働いたり、連絡を取り合ったりするためのものだったり、財産や衣食住のような生活必需品を手に取ることを制限されることも含まれます。また、物品を壊されたり、生活費を支払わないことも経済的虐待です。

この種の虐待は、強制的で支配的な行動で、別れた後もその負の影響が生涯にわたって続くこともあります。

支配的または強制的な行動とは、ある個人が他の個人に対して権力、支配力、または強制力を行使するために、長期にわたって行われる意図的な行動パターンである

イギリス内務省

経済的虐待の影響

経済的虐待は単独で起こることはまれで、通常は身体的、性的、心理的虐待を含む他の形態の虐待と一緒に起こります。家庭内虐待の95%は経済的虐待を伴います。

この種の虐待は、相手を経済的に不安定にさせるために行われます。経済的に依存させ、その自由を制限することを目的とした虐待です。お金がなかったり、お金で買えるものが手に入らなければ、虐待者から離れ、安全を確保することは困難です。この種の虐待を経験している人は、加害者との関係の中に閉じ込められ、加害者の支配に抵抗できなくなり、さらに危害を加えられる危険性があります。このように、経済的安全が身体的安全を支えているのです。

経済的虐待は、生活の再建を困難にしてしまいます。虐待から逃げるために多くの女性は何も持たずに家を出て、必需品を買うお金さえなく、ゼロから再出発しなければならなりません。被害者の多くは多額の借金を抱え、信用度も低いため、長期的な経済的安定が得られず、経済的安定のための貯蓄ができません。


経済的虐待チェックリスト


経済的虐待にはさまざまな形態があります。虐待者は、以下のような行為を行う可能性があります:

あなたの収入やお金へのアクセスを妨害する行動:

□ 教育や就職を妨げる
□ 労働時間を制限する
□ 給料を取り上げる
□ 手当の請求を拒否する 
□ 子どもの貯金や誕生日のお金を取り上げる
□ 銀行口座へのアクセスを拒否する

お金や物の使い方を制限する行動:

□ お金の使い方を管理する
□ あなたが買えるものに口を出す  
□ お金を要求させたり、小遣いを与えたりする
□ 領収書をチェックする 
□ 出納帳をつけさせる
□ すべての買い物の理由を説明させる 
□ 携帯電話や車などの財産の使用を管理する
□ すべての金融資産(貯蓄や家など)を自分の名義にする
□ お金の状況を秘密にする

あなたの経済状況を悪用する行動:

□ あなたの金銭や財産を盗む。 
□ あなたの財産に損害を与える。 
□ 生活費、家計の負担を拒否する。  
□ 家財道具や請求書に必要なお金を使い込む。 
□ 共同銀行口座のお金を悪用する。 
□ すべての請求書、クレジットカード、ローンがあなたによるものであるとして、あなたに支払わせる。 
□ あなたの知らないうちに、あなたの名義で借金を重ねる 

*虐待者が経済的な権力や支配力を行使する方法について「経済的虐待の輪」参照(英文pdf)

金融虐待と経済的虐待の比較

経済的虐待と金融虐待は類似した行動を伴いますが、金融虐待を経済的虐待のサブカテゴリーと考えることは有益です。経済的虐待は、例えば雇用や住居など、虐待者が誰かの経済的状況をコントロールする様々な方法を包含しています。

金融虐待
金融資産の支配、窃盗、借金の強要

経済的虐待
住宅、食料、交通、雇用など、その他の資源を支配する。



記事を読んで思うこと

以上が記事内容なのですが、日本の夫婦関係は虐待とは言わないけれど…、経済的不自由によって妻は夫に支配されていて、容易に経済的虐待に発展する関係なのでは?とハッとしました。

日本は、夫と妻それぞれの役割があって、「男性と女性にはそれぞれ生まれ持った特性があるのだ」という男女特性論に基づいた性別役割規範があります。この規範そのものが女性の経済的な独立の障害になっていることもあり、女性自身が虐待とは認識していない経済的虐待があったり、愛と支配を混同した経済的虐待予備軍の夫(男性)が少なくないのではないかとも思いました。

参考:What is economic abuse? - Surviving Economic Abuse


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