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いわき市の被災状況と、僕たちができること

今月8日から9日にかけて、関東と東北南部は台風13号の猛威を受けた。その記録的な大雨により、福島県、千葉県、茨城県において浸水や土砂崩れなど大きな被害が発生している。

特に福島県いわき市では、1,000棟以上の住宅が床上浸水に見舞われ、発生から数日が経過した現在もまだ復旧作業が続いている。そこで僕は、いわき市に住む友人で、大学の後輩であるマー君に連絡をした。

彼は被害の発生直後から地元の友人たちと被災地域に入り、復旧作業にあたっている。電話を通じて、現場の状況と必要な支援について細かく教えてもらうことができたので、ここにその内容を多くの人と共有したいと思う。「被災地のために何かアクションを起こしたい」と思っている人の参考になれば幸いだ。

広域に分散した被災地域

いわき市の中で、大きな被害の出ている地域は内郷、勿来、植田、常磐などの地域だ。これらをおおまかにマッピングをすると、以下のようになる。

台風13号によるいわき市の被災地域

見て分かるように、被災地域は同一市内とはいえ広範に分散しており、そのことが効率的な救援物資の配布や人々のサポートを難しくしている。

したがって、もしボランティアに入る場合は、現地に行く前に必ずボランティアを取り仕切っている団体に連絡をしてほしい。事前に連絡することで、現地で適切な人員の配置を検討することができるからだ。(※ 連絡先など詳しい情報は本記事の後半に記載)

また、地域間の移動のためには自動車などの交通手段があると良い。幸い、氾濫した川の水は既に引いているため、現地での車移動は問題なく行えるとのことだ。なお、ボランティア活動の場合は高速道路料金が免除される制度がある。

ただし、山間部の被災地も多くあるため、そういった道の運転に慣れていない場合は無理せず電車で向かってほしい。その場合も、事前に連絡を入れることで、マー君たちのボランティアチームが駅から被災地域まで送迎する手筈を整えられる。とにかく、被災地に入る前は事前に連絡が必須だ。

浸水した家屋の復旧作業

浸水被害の1,000棟超という数字は、上記の地域の合計数である。床上浸水が発生した家の住民は、一時的に避難所での生活を余儀なくされた。

現在は水も引いて自宅に戻れる状況だが、日常生活を再開するために以下の復旧作業をしなければならない。これがボランティアに入った人たちが実際に行なう作業の工程だ。

1. 家財の運び出し

被害に遭った家屋は、建物も家財も泥まみれになっている。泥を被った家財は基本的に再利用することはできないため、外に運び出して集積所に持っていかなければならない。棚、畳、布団、絨毯、冷蔵庫などの家電と重たいものが多く、運び出すには多くの人の力が必要だ。

写真やお金などは別の箱に、また廃棄の判断が必要そうなものは脇にどけるなど、仕分けをしながら片付けていって家主の方とコミュニケーションを取ってトラブルにならないよう気をつけてほしい。

2. 家の中の泥の掻き出し

家財を運び出したら、泥の掻き出しだ。高圧洗浄機やブラシを使って外に掻き出し、最後は雑巾を使って拭き掃除を行なう。

3. 床板を外す

洗浄作業が完了したら、次に床下の泥を取り除くために床板を外していく。

4. 床下の泥の掻き出し

板を外したら、床下の泥掻きを行なう。先ほどと違い、単に掻き出すことはできないので、一定の量ごとに土嚢を作って外に運び出していくことになる。

家財の運び出し、泥の掻き出し、床板の撤去、床下の泥の掻き出し。ボランティアの人たちで行なっている作業はここまでだ。泥水には衛生上の問題もあるため、この後に消毒液を散布する処理が必要だが、それは行政の協力のもとに機械を使って対応していくことになる。

なお、ボランティアが行う一連の作業だが、一つの家屋を処理するのに大人5〜6人で丸一日かかるそうだ。そこまでやってようやく日常生活が送れるようになるわけだが、一度浸水してしまった家というのは柱が腐ってしまったりして、結局は建て直しをしなければならないという。本当の意味で生活者がもとの生活を取り戻すには、長い月日と労力がかかる。

僕たちがいわき市にできること

以上は、いわき市に住む僕の友人たちが行なっている復旧活動だ。ここでは、彼らの活動を支援するための方法をいくつか紹介する。

※ もちろん、復旧活動を行なっている団体は彼ら以外にもある。いわき市の公式ホームページにはボランティア活動の窓口情報が掲載されているので、公的な機関によるものはそちらを参考にしてほしい。

1. ボランティアに参加する

浸水した家屋の復旧作業には、とにかく多くの人手が必要だ。既に書いた通り、被災地域は点在しているため、事前に連絡をして現地でのリソース配分の判断・指示を仰いでほしい。

連絡先(担当:ヨシダ)
電話:080-6027-5517
LINE:https://line.me/ti/p/amfm4ItbFk

※ 連絡の際は、この記事を読んだことを伝えれば話がスムーズなはず!

2. 支援物資を送る

マー君たちが被災地での炊き出しを予定しており、そのために必要なものをまとめた Amazon のウィッシュリストがあるので、それを貼っておく。

ウィッシュリストは、商品を選んで購入すればあらかじめ設定された送り先に届けられるようになっているのだが、一部の商品でそれがうまく機能しない場合があるらしい。その場合はウィッシュリストからではなく、普通に商品をカートに入れて以下の宛先まで送ってほしい。

郵便番号:〒971-8185
住所:福島県いわき市泉町7丁目21-1「米処 結」
宛名:新妻美沙 宛
電話番号:070-8976-1160

また、マー君たちは既に農家からお米を集めておにぎりにして、被災地域の小学校で配布することを実施している。こういった被災地における飲食物の提供についても、何か協力のアイデアがある人がいたらぜひ連絡を取ってみてほしい。

3. お金を送る

マー君たちが行なっている復旧活動は、現状彼らの手弁当で行われている。もし彼らの活動に金銭的な支援をする場合は、以下のNPO法人に振り込みをしてほしいとのことだ。

銀行名:七十七銀行(金融機関コード:0125)
支店名:小名浜支店(支店コード:912)
口座番号:5002960
口座名義:NPO法人 まーく

もちろん、より直接的に被災者に資金援助をしたい場合は、行政や赤十字などの団体が行なう義援金活動に送るのがよいだろう。ただ、僕が調べた限りでは、まだ市のほうでも寄付金の窓口などは開設されていないようだ。逐次情報を確認し、更新があり次第こちらに記載する。

余談:報道による印象とボランティアの動員について

ここからは本記事の主旨とは関係のない蛇足となる。

いわき市は2019年10月にも台風による被害があり、夏井川に面する平窪という地域全体が沈むということが起きた。

2019年10月の被災状況

実は、このときもマー君率いる現地の若者集団が復旧作業にあたり、僕は彼らと連絡を取り続けながら、同じ大学の友人たちに声をかけて支援物資を送ったりしていた。まさに今回の一件と同じような状況で、このときの経験があったからこそ、今回は現地の若者集団もかなり迅速かつ的確に動くことができているようだった。

ただ、マー君によれば、今回と前回とでは大きく違うところがあるという。それは、彼のところに集まったボランティアの人数だ。2019年のときは40名弱が集まり、毎日20〜25名が稼働していたが、今回は20名程度の集まり、実働は10数名だという。

人手を集めるために、彼は前回集まってくれた人たちに個別に連絡をして、復旧作業の協力を要請した。すると誰もが一様に「え? 今回もそんな大きな被害なの?」と驚いた反応が返ってきたそうだ。

2019年の平窪の被災は、窪んだ土地に二つの川から氾濫した水が流れ込まれ、町全体がまるまる沈み込むようなものだった。その様子はヘリコプターからの上空映像で報道され、多くの視聴者に強烈なインパクトを与えた。

一方、今回の被災は、山間部などで発生したバックウォーターによる越水がもととなっている。床上浸水に至った家屋の数は2019年と同程度で、家の中の被害状況も同じ光景なのだが、傾斜の多い地域であることが幸いし、水はすぐに捌けた。そのため、映像を見ただけでは前回よりも被害規模は小さいような印象になる。

マー君は「報道によって災害の規模が印象づけられ、そのことが支援のモチベーションに関わっているのではないか」と言った。

たしかに、被害の視覚的印象がボランティアの動員に影響しているというのは大いにありそうなことだ。これは報道の姿勢が悪いとかいう話ではなく、しかたのないことだと思う。僕たちは情報を受け取るとき、どうしても視覚的な印象にとらわれてしまうものだ。

今回僕は、たまたまマー君と電話で話をしたことで「思っていたよりも大きな被害が起きている」と感じたので、みんなにも知らせたいと思って記事を書いた。みんなも現地の様子や情報を手に入れたら、SNSやブログなどを活用して発信してもらいたいと思う。