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君への手紙

こんばんは、元気かい?
僕は今日、風呂で君との思い出に溺れたよ。
10年以上も前の日々が鮮明に思い出されて今まさに君とサンマルクの小さなテーブルいっぱいスケッチブック広げて2人で落書きしてるようだった。

君が雨ふる若草山の頂上から鹿のクソまみれで転がってきて出会ったことや、吐くまでくるくるまわり続けたことや、新世界で牛乳ぶっかけたことも、天王寺で鼻っ柱ぶん殴られたことも、ネパールで水便にまみれたことも、淡路島を足引きずるほど歩いたことも、バスで漏らしかけたことも、電車で俺と間違えて知らんおっさんのちんこ触ろうとしてドン引きされたことも、下関の浜辺で三日前に落とした財布を見つけて一緒に踊ったことも今ではいい思い出です。

僕は全力で詩を描く中で、筆や鉛筆や紙やペンよりも、もっと全身でもっと全身全霊でこのクソ広い世界に体当たりして、一遍の詩のような人生の軌道を描こうと、君を放り投げた。
そして自分の道を模索して、悩み迷走しながらも突っ走っていった、金もなしにあちらこちらを歩き回った、地べたで寝た、ダンボールは断熱材だ、人生に金なんて要らなかった、エネルギーがあれば人は生きれる、カロリーは何も食わなくても沸き上がってきた、それは燃やせば燃やすほど燃えるようになった、俺の体はいつだって核融合していた、孤独はまるでみんなと遊べる公園のようだった。

空気を吸っては火を吐いた、燃えるように生きた、30で死ぬつもりで生き抜いたつもりだった、けども俺はおめおめと生きています、燃え滓絞るように生きているんだ、君と電話で話したのはいつぶりだろう、俺たちはお互いに大人の真似が上手になった、握り拳のように使った言葉たちは今では槍や弓矢のようで、なかなかお互いの振動が伝わらないことに、イラつく毎日さ。

それでも、俺は君といつぶりかわからないくらい久しぶりに話して、心にスッて入ってきた大空の大気が、涙の一雫になって目頭に湖を作るのを感じていたんだ、大人になれなくてイラついて、上司に噛み付いて、上司を無視する君があまりにも変わらなくて、変わらないアホのまま進化していて、俺までなんだか胸いっぱい誇らしくなった、そんな誇らしさが恥ずかしくなったよ、俺はなんの上に立っていたつもりなんだ?

俺はまた紙屑のように地べたを転がろうと思う、そして風にまかれる楽しさをもう一度この全身を使って感じたい、あんなにちっぽけだった俺たちだったからこそ感じられた世界のバカデカさに、竹槍一本で立ち向かっていく人生の無敵が俺たちのハートに杭を打ち込んだ、その杭を俺は思い出したよ。

君の相変わらずな無茶苦茶さは君の勤勉さに支えられてる、真面目に生きることだ、まっすぐ、誰にことわりをいれることなく自分の正直と正義を生き抜くことの大切さを、俺は馬鹿らしいことにも君に説教を垂れようかとも思った、けども人の幸せなんてものはこれからの俺たちがそれぞれに作り上げていくものだ、前例なんてまるで当てにならない、誰かの幸せをなぞることはすでに不幸だ、新しい今日を全力で生きることの中から幸せを実験することだ。

俺たちにはまだまだ色とりどりの不運が用意されているだろう、それでも大丈夫だ、俺たちの胸にはポカラで吸い込んだ大気がある、澄んだ湖がある、西成の側溝に溜まったゴミで遊んでいた少年がいた、あの街が俺たちだろう、世界はどうしようもなく不親切かもしれない、けれども俺たちにはどうせいつかの正直がある、あのどうしようもない夕暮れがある、黒鉛で真っ黒になった手のひらがある、破れたタコから滲む汁よ、俺たちが進む未来よ道を開けろ、今から俺たちが押し通る、どんな不幸にも色褪せない俺たちの定義がそこにはあるだろう、ふざけんなよ、まだまだこれからだ、まだ体の動かせるところはある、まだ腰も死んじゃいない、人生は遊びだ、そうじゃないとは言わせない、俺が実験してやる、お前が続けるように、自分にコントローラを突き刺すだけだ、それだけで俺たちは自由になれる、己の実直なる理性の奴隷でありつづけよう。

あぁ、今俺は、鉄棒の上を歩く時だけ正気でいられる、水風呂に入って痺れている時だけ正気になれる、倒れてくる木の下でだけ正気でいられるんだ、ずり落ちる斜面、降りかかる岩の前でだけ正気でいられるんだ。

生きることは美しく、生かされることにしがみつくことはこんなにも醜い。俺とお前ははるか遠くにいて、まるで別の人生を生きて、お互い別の人を愛しているのに、こんなにも近いのは何故だろう、まずは俺が飛び降りて次にお前が飛び降りた、ここまで俺に近づいたのはお前がはじめてだよ、尊敬しています。

マイアミでお前が恋しくて俺は頭を壁に叩きつけた、お前とケンカして俺は新世界のあの家の床に頭よ割れろと叩きつけた、今もあの衝撃がこの頭蓋に響いています、脳震盪は素晴らしい、脳震盪の中でのみ俺たちは正気でいられる。
世界は不細工だ、敬語は不細工だ、忖度は不細工だ、自分を裏切り生きる人間のケツを舐めることをやめたお前は素晴らしい、俺もこれからもやめ続ける、こんな国いつか卒業してやるつもりだ。

マスクで顔隠したブサイクたちを見てみろよ、笑わせる、自分で勝手に呼吸困難の胸呼吸で切羽詰まったパラノイアが運転席に座ってるぜ。まずは俺が飛び降りた、そして次にお前が飛び降りたんだ、俺には責任がある、この先には絶大な幸福が待っていることをまずは俺が証明してやる。

俺は心から君を応援する、俺が応援されたから、あの頃と同じ角度で飛んでいく君が誇らしかったから、だから死ぬな、生きろ、複数のお前になって生きろ、その先には幸せが待ってる、命を実験してきた人間にしか味わえない幸せが待っている。ぶんぶんうっとおしいほど狂おしく生きろ。

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