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リベラルアーツについて知る

創造性を身につけて、本当に自由な生き方をするために


東京工業大学
リベラルアーツ研究教育院長
上田 紀行 教授




〈目次〉 
1.真の教養が求められている  
2.答えがない問題にどう対処するか  
3.自由人として生きるための学問


1.真の教養が求められている

「リベラルアーツ」という言葉が大学教育の中でよく聞かれるようになってきました。 

日本語に直すと「教養教育」がいちばん近いのですが、内容はちょっと違います。

教養という言葉には悪い意味はありませんが、これまで大学における「教養教育」という言葉には「専門教育」の前に学習する一段低い教育といった意味がつきまとっていました。

ですからリベラルアーツ教育と言うときには、昔の「教養教育」とは違うんだぞという意味合いが含まれています。

最近まで多くの大学は「役に立つ人材」を育てようということで、なるだけ早く専門教育を行い、その専門のスペシャリストを育てようという傾向がありました。

しかしそうなると自分の専門のことは詳しいけれど、それ以外のことはあまり知らないという人たちが生みだされてしまいます。

また、最近の大学入試は科目数がとても少なくなっています。

そうすると高校生の皆さんはどうしても入試に出る科目を集中して勉強すると思います。

そうすると例えば理工系では「数学と物理と化学には詳しいけれど、それ以外の分野はほとんど知らない」といった学生が増えてしまいます。

また、文系でも「法律や経済は知っているけど、科学技術も文学も知らない」といった学生が増えてしまいます。


でもそうやって一つの分野のことしか知らない人が社会に出ていった場合、その人は社会のいろいろな問題に対処することができるでしょうか? 

現代社会の問題はさまざまな要因が絡まり合っています。

例えば原発の問題を対処するにも理科系と文系の両方の知識が必要です。

高齢化の問題に向き合うにも、心理、経済、社会福祉などのさまざまな分野の知識が必要になるでしょう。

専門教育だけを受けてきた人が「役に立つ」とは限らないのです。

むしろ幅広い「教養」を持っている人が必要とされているのが現代なのです。


2.答えがない問題にどう対処するか 

また誰もが「正解を求めてしまう」のも大きな問題になっています。

皆さんは小学校からずっと「正解」を求める勉強をしてきたと思います。 

だから物事には正解があって、それを答えられれば優秀だと思い込んでいる人が多いでしょう。

しかしこの社会で起こっていることは、一つの正解を見いだすことが難しい問題ばかりです。

グローバル社会の中での国際紛争は、民族も宗教も違う人たちが「自分の考えは正しい」と言って争っています。

その中で「正解はこれだ」という発想は役に立ちません。

日本の中でさえ、生まれや立場の違う人たちは、まったく違った意見を持っています。

一つの家庭の中でも、お父さんとお母さん、兄弟姉妹で考え方は違います。

その中で「正解を見つける」ことよりも、ものの考え方・感じ方が違う人たちの中で、

いかにほかの人たちの立場を理解し、他人の主張を聞き、自分の主張も述べ、調停し、共存していけるのかが問われているのです。

そこでは「ひとつの正解」よりも「多様性の理解」がとても大切になります。

ビジネスパーソンも海外の文学を読めば、その国の国民性がわかります。

弁護士も人々の心理や人間関係のあり方を知っていたほうがいいはずです。

そうやって「物事にはいろいろな見方があるのだ」ということを学んでいることが、私たちの人生を切りひらくときにとても大切になるのです。

多様な見方ができるとは、「他の人の言っていることを鵜呑みにしない」ということでもあります。

どんな偉い人が言ったことでも、必ずしも正しくないかもしれない。

ある時代のある場所では正しくても、ほかのところでは通用しないかもしれない。

だからそれをすぐに信じてしまうのではなく、自分の頭で考え、自分のハートで感じ、自主的に判断し行動することが求められています。

もちろんそうやって自分で判断するためには、たくさんのことを知っておかなければなりません。 



3.自由人として生きるための学問

リベラルアーツという言葉は元々ギリシャ・ローマ時代の「自由7科」(文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽)に起源を持っています。

その時代に自由人として生きるための学問がリベラルアーツの起源でした。 

「リベラル・アーツ」、つまり人間を自由にする技ということです。

現代社会は一見自由に見えます。

しかし多くの人たちが生きづらさ、不自由さを感じているのはなぜでしょうか。

いま私たちが直面しているのは、評価をたいへん気にして、「正解」を求めていないと不安だという意識です。

ですから多くの人たちが「評価されること」にがんじがらめになっています。

しかしそれが本当に自由な生き方でしょうか。

「評価される正解」にがんじがらめになっている人は実はとても不自由で、そして結局のところ新しいものを創り出す創造性を欠く人になってしまいます。

それでは自分も楽しくないし、社会に貢献することもできません。

リベラルアーツとは自分を多様な世界へと解き放ち、より良い自分、より良い世界へと導く入口となります。

ぜひリベラルアーツを広く学び、生き生きとした自分を発見してください。



引用先: 「夢ナビ」ホームページ

以上

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