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あの日のベトナム~狂気のテーマパーク①

2016年から2017年にかけて、仕事のため半年ほどベトナムに滞在した。
滞在中は休日のほとんどを観光や街歩きに費やした。次の休みはどこに行こう、何を見ようと考えるのが本当に楽しかった。
そんなちょっと昔のベトナムで見つけた、最高に“ベトナム”な瞬間との出会いの記憶を掘り起こしてみようと思う。

ベトナムに行く前から、行きたい場所はいくつかリストアップしておいた。その中のひとつに「スイティエン(スゥォイティェンと聞こえる)パーク」があった。あまりに有名なこのテーマパーク、写真集で見た、知ったという方も多いのではないだろうか。

こちらはスイティエンパークの公式HP。
不審なところはひとつもない。が、
”楽しい”、”若者に人気”の謳い文句だけで一向にパークの全容が掴めない胡散臭さと、やたらとチケット購入につなげようとするサイトの作りがなんともベトナムらしい。好きだ。

こちらは公式インスタグラム。
アオザイのセクシーなお姉さん画像に騙されてはいけない。
https://www.instagram.com/suoitienthemeparkofficial/

ホーチミン郊外にあるこのテーマパークは、世界有数の「狂気のテーマパーク」。仏教をテーマとしたアトラクションや仏像、著作権が心配になるキャラクター像が所狭しと並び、プールあり、ワニ園あり、ドクターフィッシュの池(足湯風)あり、ド定番の遊園地的乗り物あり(あまり存在感はない)と、かなり雑多なラインナップ。そんなスイティエンパークを訪れたのは、確かベトナムに渡って3週間ほどたった頃だったと思う。ベトナム独特の強烈な湿気と暑さにも慣れ、何度か市街地を歩いた後にようやくスイティエンパークに行ってみようという気になった。

パークは市街地から車で約40分ほど北東に行ったあたりにある。短期の旅行ではなかなか行きにくい環境のせいか、時期外れで人気のプールが休業中だったせいか、平日の昼近くのパークは人もまばらで閑散としていた。
パーク内はそこまで広い施設というわけでもない(と思っていた)のだが、閑散とした中にポツンとひとりたたずむと、なんだかとても広く感じられた。入口を入ってすぐのところに髭の老人の人形が立ち、何かありがたいお話をする仕掛けになっている。やや時代遅れの、そして妙にリアルな人形にノスタルジックと得体の知れないうっすらとした不安を感じながらパークの奥へと進んでいく。

プールにはかの有名な巨大な顔があった。
しかしオフシーズンのメンテナンス工事中のため、周囲は無機質なフェンスで覆われプールの水も完全に抜かれ、残念ながら写真で見たような衝撃と感動は得られなかった。山のような顔とフェンスのシュールな組み合わせがなんだか可笑しかった。

正直なところ、プールのビジュアルに惹かれて訪れただけだった。ほかの施設については事前情報も持っておらず、入口でもらったパンフレットを見ても興味をそそられるものはなかったので、少しだけパーク内をうろついて帰るつもりだった。
だが、これが甘かった。
スイティエンパークが「狂気のテーマパーク」と呼ばれるに足る理由はこれだけではなかったのである。



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