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ボードゲーム「パンデミック」から学ぶ我々がとるべき道

時期が時期だけに不謹慎ではあるのですがためになるかとも思いまして。

「パンデミック」というボードゲームがあります。日本語版も発売されていますから、世界でもかなり有名なゲームなのでしょう。

ところで、このゲームはルールが難しく、プレイするならば(見た目だけでも)知的レベルの高い人たちが集まってやることをお勧めします。それにより格段にゲームの質が上がることでしょう。つまり「大人のゲーム」なのですw。

また、このゲームの秀逸なところは、プレイヤー同士の戦いではなく、協力し合って病原体を封じ込めていくところにあります。ランダム引かれるカードはかなりの高確率でエピデミック(感染流行の発現)を起こし、そこからアウトブレーク(爆発的に拡大)を起こします。

次々とエピデミックとアウトブレークを起こしまくる病原体に対して、様々な技能とロールを与えられたプレイヤーが自らと他のプレイヤーの特徴を理解し、協力し、解決し、人類を救う。

一定の時間内に病原体を抑えられればプレイヤー達の勝ち、アウトブレイクが最終的に抑えられないと負け(人類の滅亡!?)であり、全員で病原体を抑えた後にはチームとしての清々しい一体感すら出てくるw、そんなゲームなのです。

プレイヤーそれぞれに与えられるロールは検疫官や科学者、感染対策の専門家など様々。感染症を治療することに長けたロールもあれば、プレイヤーに指示を出し正確にコントロールするロール、そして病原体を封じ込めるワクチンを開発することができるロール等々。

しかし、この「パンデミック」ゲーム。まさに昨今の状況を理解するのに非常に勉強になります。使われているワードはまさにニュースで聞く言葉ばかり、そしてそこに対する対処法もまさにそのまんまだから驚くこと間違いなしです。

だとすると、このゲームから学ぶことは、リアルなパンデミック対策についても何かの知見があるはず。そこで、実際にプレイして気づくことをいくつか挙げてみましょう。(念のため、これはゲームの中での話であり、実際の感染症対策とは関係ないことを明記しておきます。)

1.エピデミック(流行の発現)は止められない
プレイの中で与えられたロールは様々です。感染者を治療すること、情報伝達、そしてワクチン開発に長けたロールなど。プレイヤーは自分が何者なのかを仲間に明らかにし、仲間と協力をする必要があります。

リアルな世界でも同じかもしれませんね。そして、ゲームの中でランダムに起きるエピデミックは実際のところ止めようがありません。一見根絶したように見えてもまたボヤのように吹き上がります。

しかし、ゲームをプレイしてみるとわかりますが、エピデミック(流行の発現)自体は全く怖いことではありません。怖いのはエピデミック後に感染がコントロールできなくなること。ボヤから徐々に感染が始まる段階でコントロールができないと次々と周りに広がっていってしまいます。

プレイヤーたちは、「感染症対策」の専門家を中心にリソースをうまく配分し、全体の感染者数をコントロールします。重要なのは、この場合、感染者をゼロにすることが目的ではなく、感染者の総量をアウトブレークに達しない程度に適度に抑えることが目的です。

2.隔離と検疫は有効な手段である
ゲームの中ではアウトブレークを防ぐ特別な力をもったプレイヤーがいます。それが「検疫官」です。エピデミックはランダムに起きますが、起きたタイミングでうまく隔離ができれば連鎖反応的に広がっていくことはありません。結果、壊滅的なアウトブレークは防げるのです。

ゲームをプレイすると、この検疫官がうまく立ち回り感染地域を物理的に「隔離すること」がいかにアウトブレークの阻止に効くのかが非常によくわかります。ある意味バグを起こしたシステムを一時的にネットワークから切り離すことに似ています。

地域的な隔離を行えば、周りに感染することはありません。そして重要なことは、閉じ込められて適切な処置が行われた感染症は、時間がたてばいずれ脅威ではなくなります。隔離はいずれ解除されます。隔離地域においても、「あとは時間が解決するだけ」の問題となるのです。

3.封じ込めることがわかれば怖くなくなる
ゲーム内での感染症の広がりは恐ろしいほど速く、容易にアウトブレークに達してしまいます。ゲームではこのアウトブレークが規定回数以上起こると自動的にプレイヤー達の負けになってしまうため、プレイヤー達はアウトブレークが起きるたびに恐怖におののき、冷静な判断ができなくなっていきます。

しかし、さすがはその辺も良く考えられているゲーム、おそらく実際に起きた過去のアウトブレークを相当研究しているのでしょう。プレイヤー達が冷静な判断を取り戻す機会も与えられているのです。それは、処理が適切に回り、一か所でも感染症を封じ込めることができたタイミングです。

感染症が封じ込めることができるとわかれば、それまでの「何が起きているかわからない」という不安からくる恐怖が嘘の様に消えていきます。これはリアルな世界にも言えることではないでしょうか。今は怖くてしょうがない病原体ですが、いったん封じ込める方法がわかれば、後は実行するだけ。

トンネルの出口がどこにあるかさえわかれば人間は安心できます。後は進むだけだし、その時間を耐えることもできるでしょう。小さな封じ込めの成功事例が集まってくれば、恐怖も、そして恐怖からくる社会的混乱もスーッと消えていくのではないでしょうか。

4.怖いのは同時多発的な流行連鎖
ゲーム内では病原体の数は4つあります。この4つの病原体がランダムにエピデミックを起こします。

前述しましたが、ゲームを通してわかることは、実際のところエピデミックもそして感染が広がっていくことも「大して怖くない」ということです。怖いのは感染がコントロールできないレベルにプレイヤー側のリソースが拡散してしまうこと。

それはアウトブレークが同時多発的かつ連鎖的に起きることを引き起こしてしまうからです。同じ病原体の場合もあれば、そうでない場合もあります。これはリアルな世界でも同じことかもしれません。

実のところ、世の中にパンデミックを引き起こす可能性のある病原体は1つではないのです。人類は普段から複数ある病原体をうまくコントロールしてきています。この点も、ゲームの中で気づくことができる重要なポイントです。

しかし、パンデミックが起きているときには、ある特定の病原体の対応、ある特定の地域での対応にすべてのリソースを投入してしまっているうちに、別の病原体・場所がコントロール不能になっている状態というのが起きる可能性があります。

実はこれが一番怖いのです。

5.最終的には時間が解決する
ゲームの中では、最終的にワクチンを開発していくことがゴールです。これがうまくできる人たちが「感染症研究」の専門家たち。そう、「感染症の専門家」と一括りに語られがちですが、感染症「対策」と感染症「研究」の専門家は専門性が別なのですね。見ている視点も違うということがわかります。

前述のとおり、エピデミック(流行)は「ランダムに起き得るもの」でありそれ自体を恐れる必要はありません。起きても状態が適切に管理されていれば、局所的なアウトブレークは起こったとしても、時間がたてば徐々に対応は進みます。

その対応の経験を積み重ねれば、不安からくる社会の混乱も落ち着くに違いありません。

このゲームでわかる最大のこと。それは、感染症の流行が適切な水準でコントロールさえできていれば、あとは時間が解決してくれるということです。局所的な不自由は起きるでしょう。短期的には身近な恐怖に打ちひしがれることがあるかもしれません。

しかし、コントロールがされている状況下では、粛々と対応が行うことが可能です。混乱さえ起こさなければ病院の数も医療従事者の数も十分に対応できる量が維持できるはず。局所的に隔離される地域も、不自由はありつつも、出口さえ見えていれば、社会は大混乱をすることなく、耐え続けることができます。

そうしているうちに必ずテクノロジーが追い付きます。ワクチンや治療薬が開発されるのです。そして人類はパンデミックに勝利していくことでしょう。それが体感できるゲーム「パンデミック」。すごいですね。

是非おすすめです。

追記)アプリでもでているようです!こちらはアンドロイド版。でもやっぱり、コミュニケーションがカギとなるゲームですので、ボードゲーム版がおすすめかな?あとで試してみます!

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