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コワーキングと秘密結社とネットワークと働き方の変化

コワーキングの供給増加

コワーキングの総供給量が増えているそうです。記事によると、その供給量は2000年代後半から徐々に増え、2010年代に入ってから加速度を増して増加しています。
https://www.statista.com/chart/19028/coworking-spaces-worldwide/

コワーキングと一括りにされますが実は多種多様です。

イノベーションのエコシステムが息づくためにはメンバー同士がランダムかつ双方向のネットワークを構築することができるコミュニティを生み出す必要があり、コワーキングに限らず、ベンチャー・カフェやシチズン・ラボ、スタートアップ・サロンの増加は世界的な兆候となっています。

特にスタートアップが集まりピッチを繰り返すような場はボストンやシリコンバレーには昔からありました。ボストンにはハーバードやMIT、シリコンバレーにはスタンフォードやUCバークレーがあり、行き場所のない若者達のたまり場だったのかもしれません。


起業家を育むアメリカのドミトリー文化

また、著名な大学の周辺にはアメリカ独特のフラタニティ(男子寮)やソロリティ(女子寮)が数多く点在しています。寮は大抵学生の自治で運営されており、セメスター毎に入居退去を繰り返すので、ランダムなコミュニケーションや特殊な人間関係が生まれやすいのも事実でしょう。

実際には秘密結社並みのつながりを持つフラタニティ・ソロリティもかなりあります。こればかりは実際に住んでみないとわからないとは思うのですが。強いて言うなら、ハリーポッターのグリフィンドールを想像してもらうと良いでしょうか。共同生活をする中で事業アイデアやコーディングをまなび切磋琢磨していったのでしょう

実際、寮で起業したという起業家は多く、ビル・ゲイツもマーク・ザッカーバーグもマイケル・デルも寮で起業したり、後の共同経営者と寮で出会ったりしたとされています。前述のように、「寮の一室で起業」という日本語イメージはミスリードであり、むしろフラタニティの「秘密結社的なコミュニティを基底として起業」しているのです。

アメリカの大学の寮ほどではないですが、コワーキングの良いところは、多様なバックグラウンドを持つ人材が、物理的に近い空間で働き、コミュニケーションすることによりよりお互いの力を引き出しあい出すことができることです。本来は、寝食を共にするほど近い環境なのが良いのかもしれません。

コ・ロケーションを起点としたネットワーク

ちなみに、コワーキングは上位概念であるコ・ロケーション(
Co-Location)とさらに上位概念であるシェアリング・エコノミーの一類型です。ですから、シェアリング・エコノミーに特徴的なネットワーク効果を内部に生じます。

コワーキング等を起点としたコミュニティは、独自文化のネットワークを構成します。特徴として、参加人数の数が増え、活性化すればするほどイノベーションの種となるネタの数が爆発的に増加し、個々の管理コストは効率化するというのが特徴です。これがコワーキング、コ・ロケーションののネットワーク効果です。

コ・ロケーションは個人所有のリソースを一か所に集中しておいておくことにより、効率的に管理とシェアリングを行うという考え方ですから、初期のクラウド・コンピューティングや共同倉庫なども、コ・ロケーションの一類型といえるでしょう。

行政や大企業が身近にイノベーションを起こしたいときに、意図的かつ物理的にコ・ロケーションの場を設けることは有効な戦略であると言えます。そして、意図的に多様性をもった人が集められるべきでしょう。

行政や大企業がコ・ロケーション拠点を設け、ネットワークの興りを煽ることはできても、ネットワークから生じる成果を管理するのは非常に難しいと考えています。特に、コ・ロケーションに対して収益性を求めるのは最悪ですし、収益が出ないからといって短期間であきらめるはもっと最悪です。

信頼のおけるネットワークは10年単位で根気良く育てる必要があります。また人口減少対策という意味では、地方行政は強制的に市区内各企業の本社機能を一か所のコ・ロケーションに強制的に集めるような強硬策をとっても良いのではないでしょうか。

コ・ロケーションのネットワーク外部性

ところで、コロケーションは内部にもネットワーク効果を生じますが、外側にもネットワーク外部性を生じます。つまり同じサービスを使う人が増えるほど便益が増すという現象です。コ・ロケーションの数が一定の閾値を超えた瞬間に、皆が雪崩をうってそのサービスを利用し始めるという事が始まります。

私は、ありとあらゆる企業オフィスがいずれコワーキングやシェアリングオフィスへの移行を選択肢に入れる時が来るのではないかと考えています。どこかの閾値を超えた瞬間にその流れが一気におきます(もう起きているかもしれません)。

もちろん機密情報などは独自オフィスである必要があると思いますが、作業ができればよいとかもっとフレキシブルに各所にオフィスが欲しいという向きも多いのではないでしょうか。そうしていろんな企業がコワーキングの中で混ざり合えば、働くという概念もずいぶん違うものになるでしょうね。

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