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Ordinary people - (近所の)普通の人々(1)

この街にきて3ヶ月が過ぎた。

私の住んでいる町は昔は工場地帯で栄えていたのが寂れてしまった場所らしい。「東京湾を囲む昔の工業地帯で今は寂しい地域」みたいなイメージだと近いのかな、知らないけど。なので街の歴史を知るポルトガル人には人気がない。けれどテージョ川沿いで、川に沿った公園と公園の先に広がるひろびろとした川面とその向こうにはリスボンという、先入観のない無知な外国人には申し分ない場所だが、人気がないので家賃も安く低所得者層の方々が多い(らしい)。

私が住んでるアパートは内部はリノベしてあるとはいえ築100年のボロい小さなビルの中にある。黄色に塗られたビルの外壁の表面はぼろぼろになっていて、ドアもぼろぼろだ。

この小さなビルには最上階の屋根裏部屋のような小さなアパートもいれて8つのアパートが入っている。

私のアパートの下の階(地上階)にはベリシモおじいさんが1人でくらしている。彼はこのビルと壁を共有している隣の建物の地上階にあるCafe Jardim(ガーデンカフェ)のオーナーだ。とくに庭があるわけではなく、カフェが面した通りの名前がガーデン通り向かい側は公園なのでガーデンカフェ。テーブルが5つぐらいで飲み物しか出さない小さなカフェで、おじいさん1人できりもりしている。従業員はいない。毎日かなりの人で賑わっているが、客は100%ローカルでブルーカラーぽい人も多い。観光客が来るような場所ではないので、このカフェで観光客を見たことはない。

私の上の階は持ち主のエンリケおじいさんが数年前に亡くなった後に相続で揉めているので空き家になっている。息子さんが近所に住んでいるらしい。

最上階の屋根裏部屋みたいな小さな部屋には中年の男性と配偶者のインド系の唖の女性が住んでいる。引っ越してすぐにこの女性に「(私の隣のアフリア系の家族は)悪い人々だというような事をジェスチャーでいわれた。男性の方がアパートの持ち主なのだが何年も管理費も修理費も未払いである。

8つのアパートのうち4つは賃貸用になっている。

私の隣のアパートには黒人系の家族がすんでいる。子供が3人(か4人)いて、全員が鍵を持たされているわけではないらしくしょっちゅう「開けてえ」と子供がドアを叩いている。一番下の女の子はトフが大好きだし、お母さんは私がスーパーにいると声をかけてくれるし、なにかしていると「手伝う?」と聞いてくるお兄ちゃん達だし、音楽がうるさかったりするけど、最初の印象と違って気持ちのよい人々だ。息子が日本から来た時のお土産に「ピカチュウ東京ばな奈」をさし上げました。大家さんはフランスに住んでいる。

この家族の上は3部屋のアパートを数人の若者(Young professional?)がシェアしている。そのうちの1人は移民弁護士で、シェアなのに500ユーロも払っていて高すぎるので引っ越そうと思ってると言っていた。ここの大家さんはどこにすんでいるか知らないがこの人も管理費を払わない困った人らしい。

他の二つの賃貸はいまは空き家で、大家さんはリスボンあたりにすんでいる。

と、なかなかいろんな事情のありそうな不思議な隣人に囲まれている。とかいって、一番不思議だと思われてるのは突然やってきて住み着いたアジア人の女なのだとは思う。しかもこのアジア人はなんだか妙に情報通になっている。