ローカルプロジェクトのつくりかた③:企画づくりのプロセス
当日の運営だけでなく全体の企画からボランティアが主体を担う、渋谷の真ん中でみんなでつくる音楽祭「渋谷ズンチャカ!」。
2014年の立ち上げから「どうやったら関わる人たちの"やりたいからやる"を増やせるかな?」と現場で重ねてきた試行錯誤が、ローカルプロジェクトづくりのショーケースになるんじゃないかと以下のトピックでまとめています。
3. 企画づくりのプロセス
5. コミュニケーションツール
6. 決め方ケーススタディ
7. 振り返り
8. 伴走しながら考えたこと
9. キックオフ
今回は「企画づくりのプロセス」について。
渋谷ズンチャカ!づくりの主体を担うボランティア(「チーム・ズンチャカ!」と呼んでいます)が思い思いに、音を楽しむアトラクションを企画し実現していくまでの具体的なステップを解説していきます。
Step0:ちらかす 「ためしに企画の練習」
渋谷ズンチャカ!は、あらゆる人がその創造性を発揮できる機会でありたいと思っています。
とはいえ「さあ企画しましょう!」でアイデアをポンポン出せる人ってそんなにいないし、固くなってしまうことも多いので、まずはためしに企画の練習からはじめていきます。
企画することに慣れてない人でも進めやすいように、具体的な企画に入る前に練習という"遊び"を通して準備体操していきましょう。
また、ここでアイデアをどーんと発散しておくことで企画の取っ掛かりの選択肢を増やすとともに、アイデアを雑に扱う(=固執しない)練習も兼ねます。
具体的には次の2つをやります。
a. 企画のタイトルだけ出しあってアイデアを被せてみる会
b. 他人の企画タイトルの中身を勝手にふくらましてみる会
順番に解説していきます。
a. 企画のタイトルだけ出しあってアイデアを被せてみる会
まずは企画の種をたくさん出してみる練習です。
それぞれ渋谷ズンチャカ!であわよくば実現させてみたいことについて、仮の「企画タイトル」だけでいいので、1タイトル1枚で紙にたくさん書き出してください。
Step0はとにかくアイデアをちらかす回なので、ふわっとした案も大歓迎。面白がってるなら実現性もひとまず気にせずどうぞ。この段階では優劣は気にせず、質より量を出すことにこだわってみてください。
なお、この時間は喋らず相談せずの個人ワークでいきます。
また、書くことで「いったん場に出す」のは企画を前進させるためにめちゃめちゃ有効です。
考えって場に出すまではさまざまな葛藤をめぐらせがちですが、いったん場に出してしまえば、強かった思い入れを客観視できたり、周囲への忖度を洗い流せたり。ジグソーパズルを解くときにためしに場にピースを置いてみるくらいの気軽さで、頭の中に浮かんだものをどんどん書き出してみてください。
個々で思いついた企画タイトルを書き出したら、3人組になってアイデアを被せて展開させます。
ひとりが企画タイトルをひとつ場に出したら「こんなん加えてみるのはどう?」と連想ゲーム的に乗っかりアイデアを順番に被せていき、加えたいアイデアが出なくなったら、次の人が別の企画タイトルを場に出してまた連想ゲームを繰り返していきます。
ここでやってみてほしい振る舞い方は、仲間のアイデアに積極的に乗っかること。
なので、この時間はメモは取らず目の前の話を聴くことに集中してみてください。
なお、乗っかり連想ゲームを2回繰り返すのはアイデア発散の目的もありますが、はじめましての有志が集まって任意参画で担うプロジェクトって「次回も話せる最初のひとり」と早めに出会えるかどうかで定着するかが分かれがち。なので、話の合いそうな人と遭遇する確率を上げるために、少人数で何かをする機会を多めに設けるようにしています。
最初は懇親会とかに放牧されるより何かの任務を共にする方が、話すネタが明快でコミュニケーションを取りやすいですし。
で、連想ゲームで頭と心をほぐしたら、またひとりになって企画タイトルだけを追加で書き出していき、時間になったら全員分の書き出した企画タイトルたちを場に並べます。
b. 他人の企画タイトルの中身を勝手にふくらましてみる会
次は企画の中身をサクッとつくってみる練習です。
この会のチームとしてまた別の3人組になってください。「今日まだあんまり喋ってない人同士でどうぞ」ってアナウンスすると"ぼっち"を防ぎやすいのでおすすめです。
で、前の会で場に並べた企画タイトルの中から、自分たちのチームで勝手に中身をふくらませてみたい他人のタイトルをひとつ選んでください。
まずは、選んだ企画タイトルの好きなところか、もっと面白くするために付け加えたいアイデアを、順番に出し合ってみてください。
この5分間は、もしも懸念点を指摘したりネガティブな面を批判したくなったとしても、ポジティブな提案を通して表現してみてください。
そしたら、15分間で企画の中身をつくってみましょう。
単なるA3用紙などにまとめてもいいですが、渋谷ズンチャカ!では企画の補助線&フォーマットに慣れる機会にできればと、後述する「チキチキ企画シート」に描いてもらっています。
企画ができたら、各チーム2分で以下3点を発表してもらいます。
その上で、元の起案者から1分で「ホントはこんな企画だったんよ」を話してもらって終了です。
短時間ですが、あんがい企画の骨組みをつくれるんだなって実感できると思います。
アイデアをひらめくまでのプロセス
(このパートはアイデアを生み出し続ける必要のある人向けにまとめました。単発のアイデアならきっとこれまでの人生経験をもってナチュラルに生み出せます。なので必要な人以外は読み飛ばしてください)
『アイデアのつくり方』という本で、気になるテーマの材料を集めてひとしきり考えたら、考えるのやめて他のことやっている時にひらめきが降りてくるとありますが、この「寝かせる工程」を置くことってとても大事です。
『アイデアのつくり方』の話をもう少し引用して解釈すると、まずアイデアとは「既存の要素の新しい組み合わせ」で、取り掛かりたいテーマについての「特殊知識」と、人生やこの世の様々な出来事についての「一般的知識」の新しい結合を見出したときに像を結ぶそう。
(さっきの「乗っかり連想ゲーム」は強制的に新結合する"遊び"でした)
新しいアイデアすなわち「既存の要素の新しい組み合わせ」は、自分なりの編集をもって生まれます。
一般的知識については、普段から自分が気になることをどんどん浴びたり試したりしていると自分の好きなことがわかってきて、さらに「それをなんで好きなのか?」を言語化できるようになると、いろんなことを繋げてストーリーにしやすくなっていきます。それに、なにより「内なる愛」が差異をつくるので、好きが「自分なりの編集」の原資になっていきます。
また少し話はズレますが、要素を組み合わせるときに、届けたい人にとって【未知 × 未知】なものだと「自分には関係なさそう」とスルーされがちです。なので、未知な要素に取り組みたいときは少し既知に擬態するというか【未知 × 既知】で「自分にも関係ありそうだ」と認識の入口をつくってあげるといいと思います。
取り掛かりたいテーマについての特殊知識集めについては、それを延々とやられている人も見ますが「やり過ぎも注意では?」と思います。というのも、ある範囲に絞って情報を集めすぎると最大公約数に呪われるというか「正解のようなもの」が刷り込まれてしまって逸脱(=自分なりの編集)しにくくなるかと。エコーチェンバーみたいに。
なので、特殊知識については、まずは自分の言葉で人に説明できるくらいまでのインプットを目指して、その上で「個人的にしっくりくる/こない部分がわかった」くらいの解像度までいけたら、その先は新たな組み合わせに文脈やストーリーを見出すための"編集"に時間や労力を使ったほうが上策かなと思います。自分という資源って有限ですし。
また、もしインプットしながら別の興味が展開したら、そっちも掘ってみると自分なりの編集のための原資を増やすので、ことアイデア創出に関しては好奇心に蓋をしない方がよいです。
一通りインプットした後はまとまった時間をつくって、集めた特殊知識と自分なりの一般的知識のいろいろな組み合わせを空っぽになるまで書き出して、面白いストーリーにならないかをガッツリ考えてみる。
するとバックグラウンドで自分なりの編集プログラムが起動している=アンテナが立っている状態になるので、あとは寝かせてインキュベーションタイム。他のことをやりながら卵を抱えて孵化を待ちましょう。
ちなみに、急いで寝かせたいときにおすすめは「お散歩」です。
それとアンテナが立ってる状態になったら、テーマに直接関係なくても気になるポッドキャストとか聴きながら歩くとけっこう勝手に繋がって降りてきたりします。おためしあれ。
(個人的には「コテンラジオ」と「超相対性理論」にビガップっす)
企画チームを募る場合
もし企画チームをつくって進めたい場合は、Step1以降の具体的に企画を進めていくプロセスに入る前に、A4用紙を場の中央に置いて「チームリーダーとなって取り組んでみたいアイデアがある人は、A4用紙に企画タイトルを大きく書いて前へどうぞ」とアナウンスして待ちます。
で、チームリーダーが出揃ったら一言ずつ意気込みを話してもらい、他のメンバーは興味のある企画タイトルに集合してもらいます。
このとき、起案したけれども「他の企画に合流したい!」もOKです。
暫定のチームが組まれたら、チームリーダーを他のメンバーが以下の3つの問いで「囲み取材」をしていきます。
それぞれ10〜20分ほど取材したら、学びを整理する時間を5分ほど入れてください。
またチームリーダー以外のメンバーは、囲み取材ごとにチームを移動しても構いません。
3回の囲み取材が終わったら、改めて今回取り組んでみたい企画に集合してチームを編成し、Step1へと進めていきます。
ただ、渋谷ズンチャカ!では基本、個々の企画はチームではなく「まずは個々人で起案」としています。
というのも、面白さの火種って小さいしその面白さに自信満々でいられる方が珍しいので、なかなか「0→1」の起案ってためらいがち。なんですが、企画の起案をチームで担ってしまうと面白さの熱の中心がぼやけがち。
渋谷ズンチャカ!という場は、つたなくていいので普段は引っ込めがちな「0→1」にトライする機会であれたらと。
なので、チームを組むとしても次のStep1の後としていて、チームで企画を進めていくときも正解はない(≒たくさんある)けれど、最終的には元の起案者が選ぶ・決めるとしています。
これは直感的な「面白そう」から立ち上がるアート的なものって再現性がないから議論に弱いけど、多数決に依らないほうが尖った企画になりやすいので、起案者のイメージやニュアンスを大事にしていきたいからです。
(だからこそ、起案者はその企画について一番汗かく人でいよう!とも)
また、チームを組まず「ひとりでやりたい!」って場合はその意志を尊重するようにしています。
、、『自分をいかして生きる』にあった、ある漫画家さんの社是↓って大事なことを言ってるなあと。
ただ、渋谷ズンチャカ!の場合は、プロジェクト全体の設計をチームで企画して進めていく(次回まとめます)ので各コンテンツの企画は個人主体としていますが、もしコンテンツのみの企画を担うプロジェクトの場合、個人主体だとどうしてもコミュニケーションの総量が少なくなってしまうので、コンテンツもチーム単位で進めた方がよいと思います。
Step1:ひろげる 「チキチキ☆プレゼン」
さあ、ここから具体的な企画づくりのプロセスに入っていきます。
アイデアの種を実際の企画へと展開していくために「チキチキ企画シート」という補助線を準備しました。
チキチキ企画シートの項目は以下です。
各項目に少し補足します。
「どんな企画になるか、いまイメージできる範囲で具体的に描いてみて」について、アイデアを文脈でつないで物語にしたものが企画です。アイデアそのものだと流れにはならないので、アイデアを元に登場人物がどんな行動をすると面白い展開になるのかを描いてみてください。
「特にどんな人に届けたい?」について、あんがい具体的な誰かをイメージした方がめちゃめちゃいい企画になりがちです。老若男女みんなに楽しんでほしい気持ちもわかりますが、いったん「特にどんな人」って絞ってみてください。
「この企画を一言でまとめるとどんな?」について、アイデアだけが散らかってて「で、具体的にはどうやって楽しむ企画?」ってわからなくなっちゃう場合があります。
企画ってシンプルにすると「誰が何をどうする(能動)」か「誰に何をどうしてもらう(受動)」のどちらかの構成になることがほぼほぼなので、もしどうやって楽しむ企画かわからなくなった場合は、散らかってるアイデアの中から特に思い入れの強いものを2−3選んで、ためしにどちらかの構成の型に当てはめて短い文章にしてみてください。
「この企画を実現させるために不足していることやハードルになるのは何?」については、やるべきことだけでなく、実現のイメージが不明瞭な部分があれば挙げておいてください。その際、どの部分が実現のイメージが湧いていないのか、できるだけ焦点を絞ってみてください。
なお「チキチキ企画シート」について、はじめは描けるところだけの虫食い状態でもOKです。大事なのはシートの完成度よりも「熱量」や「やりたさ」。企画の完成度を上げていくのに仲間の力を借りるために描くシートでもあるので、いま描けるベストで大丈夫。まずは項目に沿って埋めてみてください。
また、企画を進めていく上での諸注意として以下をアナウンスしています。
それと、継続して行っているプロジェクトだと「前回やった企画をまたやりたい」となることもありますが、基本スタンスとしては既存のものよりも新しい企画を優先させたいと考えています。
とはいえ、毎年恒例の企画とかがあってもいい。ただ「定例モノ」って、ややもすると"聖域"になってしまいがちなので、同じ発案者で同じ企画を行う場合は、風通しをよくする&惰性防止のために「今年のチャレンジ(過去の気になったところを改良するでも、よかったところをさらに尖らすでも、どっちでもOK)」と「なんでまた今年もやりたいと思った?」の2点を明快にしてもらっています。
どんなことでも新たに探索するのって簡単なことではないからこれまでの延長を選んでしまいがち。
なので、既存の企画は深化を促しつつ、新たな企画は「完成度よりも創造性の炸裂を重視しよう!」とためしにやってみるハードルを下げています。
また、企画をつくる際に「枠組だけつくって中身を募る」ってプロセスを踏もうとすると、自分の体重を載せきれなくて自然消滅することが多いです。
大事なのは「主観→客観」の順番で、興味・関心・好奇心を人に聞く前に自分に聴く時間をつくって、まずは自分の内から外へ考えを出せるところまで出してみて、その上で外の力を借りるといいです。あんがい「存在しないもの」を改善しようとしてること、あるなあと。
それと、いざ「チキチキ企画シート」にまとめてみようとすると、言語化できない面白さというか、言葉にしてしまうとこぼれてしまいそうな場合もあるかと思います。
そんな時は、性急に言語化や要約しようとせずに、ためしに遊んでみたり想像をめぐらせたりして、まずはただただその面白さを味わってみてください。
そしてその面白さがある閾値を超えたとき、言葉で切り取る決断ができると思います。
あと、もしもプロジェクト全体としての表現と貢献のバランス(表現↔貢献 / 新価値創出↔課題解決 / プロダクトアウト↔マーケットイン、、メモまで)が、貢献志向の方が強いなら「チキチキ企画シート」の項目に以下も加えてみてください。
それぞれの「チキチキ企画シート」が描きあがったら、他のメンバーたちに向けて話してフィードバックをもらう「チキチキ☆プレゼン」をやっていきます。流れは以下です。
プレゼンについて、ただ「チキチキ企画シート」を読み上げても熱量が伝わりづらいので、まず各自でシートを黙読してから、以下3点に絞って企画者からプレゼンしてもらっています。
フィードバックについては以下の4つのカテゴリーで、付箋に1トピック1枚で書いてもらいます。
付箋たちを貼るホワイトボードはこんな形にしておきます。
そしてレビューの際に「?:質問や問いかけ」については、その場でパッと答えられるものは企画者に答えてもらっています。
その上で、ネクストステップは「じゃあ次はまず何から取り掛かりたい?」と本人に決めてもらいます。もしあまりに難しそうなことを設定した場合は、着手しやすいように分解や整理のサポートをしますが、「どうしたいか?」を決めるのはあくまで企画者本人です。
なお、レビューは全員ホワイトボードのまわりに集まってやった方がいいです。
今回コロナ対策でソーシャルディスタンスを保つために座席に座ったままやってみましたが、物理的距離が心理的距離となり、思った以上に他人ごと感が強くなってグルーヴしにくかったなと。
フィードバックにあたって
他の人の企画にフィードバックする際は、「企画者の考えを理解しようと思うこと」と「自分が感じた違和感も掘ってみること」の両方を大事にしてみてください。
フィードバックというと改善のための「あら探し」をやってしまいがちなのですが、まずは相手が何を面白がっているのかを理解しようと努めてみて「だったらこうしたらもっとよさそうじゃない?」って異なる意見を加えてみる。自分の枠組みだけで見るのではなく、相手の枠組みで自分なりに考えてみると、より建設的な提案になっていきます。
(この話、以下の投稿がとてもわかりやすくて秀逸でした)
ただ、相手の枠組みを尊重しすぎて何でも「いいね!」にしてしまうと、アイデアは発展しません。
自分の考えを場に出すことって、それだけですごい勇気だと思う。だからこそ大事にしてあげたい。
だけど、違和感を感じた自分も、同じように大事にしてください。
自分のアイデアや声を表明することって、決して簡単なことじゃない。むしろ難易度の高いことだと思う。その前提を共有した上で目指したいのは、アイデアも場に出しやすくて、それに対して多様なリアクションも出しやすい「フレッシュ!!」な状況。
とはいえ、場に考えを出すって簡単ではないから、まずは「ぬるい」ゾーンでも万々歳。ためしに出してみたの量を増やしながら「フレッシュ!!」を目指していくのがよいと思います。
また、フィードバックを受け取るにあたって、もらったフィードバックは全部を受け取らなくていいです。
必ず一読してほしいですが、味わった後は受け取りたいものだけ受け取って、企画者の思う「よりよいかたち」に活かしてみてください。
答えって、自分の中にしかないと思うので、選ぶのは「わたし」です。
ブラッシュアップするのも、みんなじゃなくて「わたし」。
何を受け取るかを選ぶのが企画者だからこそ、フィードバックする際は変に忖度しないでそれぞれが感じた違和感を伝えてほしいし、企画者がそれを選ばなかったとしても、ひとつの問いとして糧になっていきます。それに、この段階でもらったリアクションって、世に出す前のテストとしてとてもいい材料になるはずです。
それと、フィードバックの際に"why"にまつわることをもらうことも多いと思いますが、この"why"もまた「わたし」の中にしかないです。
"why"を深堀りしておくことって、いい企画を実現しきるためにとても効果的なのでぜひやってみてください。
はじまりはただ「楽しそうだから」「やってみたいと思ったから」で全然よくて、それを「なんで楽しそう・やってみたいと思ったんだろう?」ってもう一歩進めて、自分で「なるほど」と思えるところまで掘ってみてください。
そうしておくと「来てくれる人や関わってくれる人との共感を深めるため」また「実現に向けてのやっていくで自分の熱量を保ち続けるため」そして「もし描いてるかたちでの実現が難しいときに別の一手を見出すため」にとても頼りになります。
なお、"why"は大層なものじゃなくていいです。
むしろ「わたし」という小さな主語である方が、より強い"why"になると思います。
「ローカル」の素数は「人」だからこそ、こうしたローカルプロジェクトの企画たちは、どこでやっても同じようなかたちになる企画ではなくて、それぞれの「わたし」がこのチームで実現させたからこその「らしさ」あふれる企画であってほしいと願っています。
それぞれの「らしさ」の集合が、文化をつくっていくと思うので。
ただ、たとえば「渋谷ズンチャカ!らしさ」もまた、それぞれの「わたし」の中にあるものです。
なので、フィードバックの際「ズンチャカ!らしい」とか「ズンチャカ!っぽい」って言葉は使わずに、もう一歩踏み込んで"自分の言葉"に翻訳して伝えるようにしてもらっています。
そして「チキチキ☆プレゼン」でフィードバックをもらって、実現に向けてのネクストステップを決めたら、それらをより活かすために15分の「壁打ち会」を設けています。
壁打ち会では、追加のアイデアを加えたり募ったりするのではなく「もらったフィードバックをどう活かすか?」「どうやってネクストステップをクリアするか?」を深堀りしていきます。
ここで壁打ち相手役がやることは、アドバイスではなく「聴く」ことがメインです。
助言や提案をしそうになったらグッとこらえて「つまりこういうこと?」って相手を理解しようとする方に頭と心を使ってください。
企画をふくらますのではなく、絞り込んだときに「一番は何が実現できるといいんだっけ?」を企画者が見出す手助けをしてあげてください。
もしも壁打ちに詰まったら「大事にしたいことは何?」「困ってることはある?」「何からはじめるとよさそう?」といった問いをどうぞ。
まとめると、Step1全体の流れは以下となります。
Step2:まとめる 「バンバン★オリエン」
渋谷ズンチャカ!では、施工や機材等についてイベント制作会社さんに入ってもらっています。
Step2の「バンバン★オリエン」では、企画者から制作会社さんにどんな企画をやりたいのかを個別にオリエンテーションし、実現のために必要なことのシミュレーションしていきます。
手順としては、Step1で仕上げた「チキチキ企画シート」を元に、より具体的に設計していくための補助線として「バンバン企画シート」を描いてきてもらいます。
これも全部埋めてから「バンバン★オリエン」に臨む必要はなくて、制作会社さんと一緒にオリエンテーションを通してクリアにしていくので虫食い状態でもOKです。ただ、あんまり空白が多いと時間がかかりすぎてしまうので、やれる範囲のベストで埋めてきてもらっています。
「バンバン★オリエン」の冒頭でまず、この日が初見の制作会社さんにも全体像がイメージできるように「具体的に何をする企画なのか?」を話してもらい、その上でもしもいま描いているイメージでの実現が難しいとなったときの提案材料のために「なんでまたやってみたいと思ったか?」や「特に思い入れの強いポイントは?」を共有してもらってから、全体を確認していきます。
何かを「つくる」というのは、自分の中の理想と世の中の現実との認知の不一致を修正していく行為なので、どこに不一致があるのかをひとつひとつちゃんと見ていくのがここでの目的です。
なので、各プロジェクトで「バンバン企画シート」のような補助線フォーマットをつくる際は、実現にあたっての要件に抜け漏れがないように項目を組んでおくのがポイントです。
「チキチキ企画シート」はわりと汎用的に使えると思いますが、「バンバン企画シート」にあたるものはそれぞれの実施要件にあわせてつくってみてください。
また、もし施工や機材等を外部に発注しないのなら、プロジェクトリーダーやファシリテーターが「バンバン★オリエン」の壁打ち役を担ってもいいし、メンバー同士で互いに担い合ってもいいと思います。
その際「バンバン企画シート」は誰かが企画者を管理するツールではなく、あくまで企画者が自身でプロジェクトを前に進めていくための補助線ですので、壁打ち役は担いつつも判断や実現は巻き取らず、企画者当人が自律性を発揮する機会を奪ってしまわないよう気をつけてみてください。
Step3:しあげる 「お披露目◎プレビュー」
そしてStep3では、企画の全貌を他のメンバーに話して、最終のブラッシュアップのためのフィードバックをもらいます。
「お披露目◎プレビュー」の流れは以下です。
2分プレゼンでは以下の2点に絞って話してもらいます。
フィードバックは「チキチキ☆プレゼン」同様に以下の形で書いてもらいます。
なお「お披露目◎プレビュー」のときは、特にレビューしたり「?:質問や問いかけ」に答えたりネクストステップをここで決めたりはせず、ただフィードバックたちを共有するだけで、あとは企画者に委ねます。
また、このタイミングで改めて体験の推敲をしよう!と促しています。
大事なのは「つくり手」モードから、「受け手」モードにちゃんとスイッチして見直してみること。
「何をどう届けたいか?」も大事だけど、「何がどう届くかな?」をしっかり感じてみましょう。あんがい、つくったらつくったまんまを届けてしまいがちですが、推敲するための時間もぜひつくってみてください。
それぞれの企画への寄り添い方
最後にファシリテーターとして企画に伴走する際に気をつけていることについて。
寄与したいのは、メンバーのやりたいことの最大化。あくまで主体者はそれぞれのメンバーなのでクオリティコントロールをしすぎないように要注意。
ただクオリティについて、掛けたコスト(時間、労力、お金 etc.)と体験の豊かさ(面白さ、おいしさ、心地よさ etc.)の関係は、正比例ではなく以下のような曲線を描くと感じています。
概ね2割のコストで80点の体験まではいきますが、その先の20点を上げるのに残り8割のコストを要するイメージ。
なので、クオリティコントロールを試みるとしても、最初の2割のコストをちゃんと掛けられるようにサポートする程度。むしろ80点より先については当事者の「好き」をもってでないと上げていくのは難しいです。
それと「やりたいこと」なんて、そうそうはないと思います。
ゆえに、やりたいことや担いたいことを問うことって、けっこうな"圧"です。
、、なのだけど、それを認識した上で、クリエイティビティはあらゆる人が持っている!と信じて問い続けたいと思っています。
どんな些細なアイデアでもいいし、考えたけどまだ出なかったーでも大歓迎。それぞれの創造性に、こちらで蓋はしたくないなって。
シブヤ大学時代の「授業コーディネーター」と「授業運営スタッフ」と分けてしまっていたことで、授業づくりを試みようとするメンバーをあまり増やせなかった反省も込めて。
呼び名や役割って人の可能性に線を引きかねないので、あらゆる人にチャラっと真摯に「やってみたいこと」を問い続けていきたい。
さて、今回のお話はここまで。
次回は、メンバーが担ってみたいことからつくる「プロジェクト設計」についてまとめてみます。
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