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The Mars Generations:宇宙開発の目的

二週間。あと二週間である。10年ぶりに、アメリカの土地からアメリカ出身の宇宙飛行士がアメリカ製のロケットに乗って打ちあがる。歴史的な瞬間だ。この打ち上げが成功すれば、アメリカは宇宙開発へのアイデンティティを取り戻すに違いない。

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ここ1ヶ月は、寝ても起きていても「宇宙」のことを考えている。今日も朝からNASAやJAXAのグッズを通販で購入した。その結果、zoomを使ったオンライン授業に遅れたのは、止まぬ「宇宙」への熱が原因である。大学生になったとはいうものの、家にいる時間が非常に長く、「宇宙」「宇宙」「宇宙」・・・・なのだ。ちなみに、サークルや団体活動も全て「宇宙」に関する活動という徹底ぶり。

そんな毎日であるが、Netflixを契約した。何も、海外ドラマや映画をみようという気は一切ない。そう「宇宙」に関連したドラマや映画、ドキュメンタリーを見るためなのだ。今日、みたのは「マーズ・ジェネレーション」というドキュメンタリーである。これまでの宇宙探査の歴史を振り返りながら、将来行われるべき火星へのミッション準備を描いたドキュメンタリーだ。

登場するのは、NASAが開催している「スペース・キャンプ」に参加している中高生たち。どの学生も『宇宙オタク』なのである。そして、驚いたのは、その意志の強さ。カメラを前にして、非常に力強いコメントができる中高生は日本にいるのだろうか?と不覚にも疑ってしまう。そして、なぜ宇宙に行くのか、火星に行く必要があるのか、はっきりと説明できている。もし、自分がインタビューされたら、力強いコメントを言えるだろうか。ある学生は「ホワイトハウスに行って、予算を有人火星探査に回す」といった。ある一種の狂気というか、そういうものを感じた。

そこで、私たちには宇宙開発に対してどんな認識が足りないのか一体何が重要で必要なのか?なぜ、人間は宇宙に行くのか?ということをドキュメンタリーを参考にして整理してみようと思う。

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① 宇宙開発に対してどんな認識が足りないのか。

なぜ、宇宙に行くために多額の資金を使うのか。そのお金で貧しい人や病気の人を救えるのではないか?そういった声は、いつの時代も聞こえてくる。私の考えは、「夢」と「リターン」である。実際、日本の宇宙開発にかける予算も社会保障費などの増大で圧迫。アメリカも同様である。アポロ計画が立ち上がった時代は国家予算の4%がNASAへ。しかし、今は10分の1、0.4%である。予算が減少せざるを得ないことは、国民の興味が宇宙から次第に遠ざけられていっていることと同義である。そう、まずは宇宙に行きたい!という国民の「夢」が必要なのだ。夢が事業を動かす。加えて、圧倒的に少なのは宇宙に対する国民の「支持」である。では、さらに疑問が出てくるのだが、その支持を得るにはどうしたらいいのか。もう、アポロ計画時のように野心的な目標を掲げれば良いわけではないことはお分かりの通りだろう。現代は資本主義社会で、どの国民も企業も「リターン」が欲しいと思っている。宇宙開発を推進することで私たちに「リターン」がくるのだ。リターンとは、技術革新のことだ。それは、今すぐにではない、少し先のことだが。もし、人間が火星にいくことを可能とするなら、技術革新が生まれるだろう。例えば携帯のカメラ、病院にあるMRIやCT、浄水器、フライパンの上についているテフロン、液晶パネル、そしてコンピューター。これらは全てアポロ計画時に開発された技術を応用した製品なのだ。今や、機械だけでなくサービスも宇宙を介する時代になった。通信衛星や気象衛星、GPS衛星が打ち上げられるごとに私たちの暮らしは便利になっていく。もう、道でも迷うことは滅多にないし、Googleアースがあれば世界中の名所を旅することもできる。何よりもその技術の素晴らしさを感じているのは、今の世界の状況だ。リアルな世界で合わなくても、会話ができ、仕事ができることがわかった。これら全て宇宙開発のおかげである。ドキュメンタリー中、科学者のミチオ・カクさんは、「もし宇宙開発をやめたら、1世紀前に戻るだろう」と述べている。まとめると、宇宙開発に対して欠けている認識とは、

1.夢 → 世間を揺るがす宇宙開発への熱狂。それが支持となり、資金になる
2.リターン → 宇宙開発をし、例えば火星へいくことで技術革新が起こり、生活がさらに便利になる。何年かかかるが。

ということがわかった。

②今後の宇宙開発で重要なこと、必要なものは?

1.移住

科学者は、皆口を揃えて、いつか地球に住めなくなる時がくると発言する。来るべき時に備えるために、人間は地球以外の別の惑星への移住が必要なのだ。地球に近く、人間でも住むことができるのではないかと予想されている火星への移住が(たとえ様々なリスクを比較したとしても)最適ではないかと考えられているのである。例えば、映画「オデッセイ」を知っている方も多くいらっしゃると思う。

原作の作者であるアンディー・ウィアーさんは少しどきりとするコメントをする。

人間は複数の星に住むべきだ。
          一つの星だけにいれば戦争や伝染病で全滅の可能性がある。

宇宙開発に関わる人は皆、「少し先」を見ているのだ。いま、それが起きていないからと言って、一生起きないとは限らない。「いつか」に備えて、研究開発をしていることを実感した。

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2.コスト削減

ミチオ・カク氏はロケット開発のコストについて「人間の体を金で作るくらい」コストがかさむと言っていた。そのため、宇宙開発をさらに活発にするためには「再利用ロケットの使用」しかないのだとか。これについては、SpaceXが業界の中では一番最初に達成した。何度も失敗を重ねながらも、達成した時の技術者の喜びを見るといつも胸が熱くなる。アメリカでは民間企業が開発した機械を買うのではなく、そのサービスを購入することで、企業間の競争が激しくなり、宇宙産業の活発化につながるという政策をとっている。これについては、僕自身もかなり効率の良い方法だと思っている。NASAなどの国家機関の難点は、予算が限られているため常に計画が保守的になりがちということだ。失敗できないのである。しかし、民間企業ではその不安はない。失敗を繰り返し、検証した先にある成功にたどり着くことができる。そして、それは技術革新・コスト削減につながるのだ。

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③ なぜ、人間は宇宙にいくのか?

登山家のジョージ・マロリーは、なぜ山に登るのかという質問に対し、「そこに山があるから」と答えた。宇宙を冒険しようとする気持ちは、私たちに組み込まれているに違いない。常に領土を広げ、子孫を残し、ハード面でもソフト面でも「自分」を冒険させようとする。同じように宇宙に行く、真の理由は「そこに宇宙があるから」だろう。ここまで宇宙について語ってきた僕も「なぜ宇宙が好きなのか」と聞かれると回答に迷う。わからないのだ。けれども、これまで人間は苦難を乗り越え、領土を広げていくと、自分たちの生活が豊かになることを実感してきた。だから、宇宙にいく目的は、生活が豊かになるようにするためと真に答える世代が出てくるかもしれない。


今後10年、おそらく宇宙開発は驚くほどの勢いで進歩する。月に行って、さらに火星に住めるようになるだろう。その時に、少しでも宇宙開発という分野に貢献できたら嬉しい。そして、次の「Mars Generations」に宇宙開発の目的を聞かれたら、熱狂的な気持ちでこう答えなければならない。

人間が幸せに生きるためだよ。

と。

(写真;NASA)

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