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世界のことわざを覗いてみると

この記事は5分で読めます(が、二時間ほどかけて一気呵成に書き上げました)

今日は、面白い辞典をご紹介したいと思います。

それは、

『世界ことわざ比較辞典』です。

みなさんは、ふと「このことわざって世界でも使われているのかな?」と思うことはないでしょうか。

辞典の前書きにはこうあります。

ところで、外国のことわざを知りたいと思った時、どうしますか?ネットで調べる。外国のことわざの本や辞典で調べる。普通はその2通りになるでしょう。ただ、実際にやってみると、そう簡単には問屋が卸してくれません。
ネットは検索対象を絞り込んで目的にたどり着くのがたやすくはないし、辞典は英語などメジャーな言語ならたくさんありますが、マイナーな言語となると、その言語について記述した文献を探すのさえ困難なこともあります。
本辞典が採った方法は、日本の常用ことわざ300から世界の同じ意味を持つことわざを探し出すというものです。さらに、それらを比較・吟味して考察しました。つまり、日本のことわざを「窓」として世界のことわざを覗き見ることにしたのです。

この辞典は、300の日本のことわざに対して世界25言語・地域から6500以上のことわざを集め、厳選されたことわざが掲載されています。

その言語とは

①古典ギリシア語 ②ラテン語 ③英語 ④ドイツ ⑤フランス ⑥イタリア ⑦オランダ ⑧スペイン ⑨ルーマニア ⑩ハンガリー ⑪ロシア ⑫グルジア ⑬スワヒリ語 ⑭チガ語(ウガンダ) ⑮メキシコ ⑯アラビア ⑰トルコ ⑱ネパール ⑲ヒンディー語 ⑳インドネシア ㉑チベット ㉒モンゴル ㉓台湾 ㉔中国 ㉕韓国

帯には「読んで広がることわざの世界辞典ー世界初の試み」とあります。

僕は以前の記事で、

はやりの翻訳機では、文化のニュアンスの違いまでは分からないのではないだろうか?と考察しました。

この辞典はまさにそんな僕の考えに応えてくれるような面白い辞典です。同じ意味でも考え方や表現に差があることが分かって単純に読み物としても楽しい本です。

ただ訳される言葉では、文化の違いまでは分かりません。自分が使った言葉の意味が伝わればいいという考え方で作られた翻訳機には、一義一訳で済ましてしまう怖さがあると思います。

「言葉は氷山の一角」であるとは、僕が大好きな本

で、鈴木孝夫先生がおっしゃった名言ですが、相手の文化や考え方の違いを理解することで、より人間らしい意思疎通ができるのではないでしょうか。

ところで、「水と油」という表現は英語では oil and water と語順が変わりますが意味は同じです。普遍の現象からできた言い回しなんでしょうね。

僕はこういう表現に出会うたびに、人間って国は違っても考えることは同じなんだな〜と、言葉の背景に人間の存在を感じ微笑ましくなります。

今回はこちらの辞典にどんなことわざが掲載されているのか、少しご紹介したいと思います。

まず始めに紹介するのは、同じような意味のことわざでも国によって表現がこんなに違うんだという例です。

後の祭り

英語:肉を食べた後にマスタードが出る

スペイン:死んだロバの尾に大麦(意味不)

フランス:籠よおさらば、葡萄の収穫は終わった

オランダ:食事のあとにマスタード

ドイツ:列車は出てしまった

トルコ:矢は弓から放たれた

ネパール:火事になってから池を掘る

ロシア:首をなくしてから髪を惜しむな

ハンガリー:雨の後での雨合羽

中国:雨が止んでから傘を届ける

韓国:婚姻の後で屏風を立てる

一石二鳥

イタリア:一粒の豆で二羽の鳩を捕らえる

ラテン語:一つの木立で猪を二頭捕らえる

ドイツ:一回のハエたたきで二匹のハエをうつ

フランス:一人娘で婿二人

チベット:一本の矢で九本の木を射抜く

ルーマニア:一弾で二羽の兎を撃つ

インドネシア:ひと漕ぎで島の二つ三つに到着する

台湾:アサリとりとズボン洗いを兼ねる

瓜二つ

ラテン語:卵同士でもこんなに似てない

スペイン・フランス・イタリア・オランダ・ルーマニア:二つの水滴のように似ている

メキシコ:同じはさみで切り取ったもの

ネパール:同じ鋳型の出

モンゴル:母馬がまだら模様なら仔馬もまだら模様

インドネシア:二つに割ったびんろうじ(ヤシの実の一種)

蛙の子は蛙

英語:この雄鶏にこの雛鶏

ドイツ・フランス・ハンガリー:リンゴは幹から遠くに落ちない

ロシア:リンゴはリンゴの木の近くに落ちる

古典ギリシア語・ラテン語:悪い鳥からは悪い卵

ネパール:貪欲な親の子は塩の塊を呑む(昔は塩が高価なものだった)

イタリア:鷹から鳩は生まれない

アラビア:アヒルの子は泳ぎが上手

インドネシア:馬の子は馬、ロバの子はロバ

スワヒリ語:ライオンの子どもはライオン

トルコ:母牛を見れば子牛が分かる

ルーマニア:木っ端は幹から遠くに飛ばぬ

モンゴル:象から象が生まれる、虎から虎が生まれる

二兎追う者は一兎をも得ず

ハンガリー:何でも屋は少ししかできない

スワヒリ語:二つの道はハイエナを困らせる

アラビア:二つの食卓で食べる者は窒息する(こわっ)

トルコ:二つのスイカは一つのわきの下に抱えられない

ネパール:二人の妻を持つ男は部屋の隅で泣く(行動のわりにゴールデンボンバーやな)

チベット:金の馬を持っているなら銀の羊は探さない

台湾:二艘の船にまたがって泡を食う

ねっ、面白いでしょ?

では、ここからはクイズ形式にします。何のことわざか考えながら読んでみてください。

まずは簡単なものから行きますね。

第一問

ネパール:兄弟仲が悪いと阿呆にとられる

スペイン・メキシコ:二人の間で訴訟があると、第三者が乗じる

英語:二匹の犬が一本の骨を獲り合う間に別の犬が持ち逃げする

イタリア:二人が争えば三人目が喜ぶ

これは分かりやすいですよね?

考えました?


答えはー



「漁夫の利」です。他人が争っているすきにつけこんで、第三者がおいしい思いをすることですね。

第二問

英語:自分がまいた種を自分が刈り取る

スペイン:寝心地が悪いベッドを作る者は自分がそこに寝る

ネパール:自分で腰布をはずし、自分が恥をかく

インドネシア:盆の水を叩けば、顔にしぶきがかかる

チベット:盗人が強盗に襲われる

中国:悪事を働けば悪い結果は自分に来る

これも分かりやすい。


答えはー



「自業自得」「因果応報」「身から出たサビ」などですね。

第三問

中国:孔子家の前で論語を売る

フランス・ロシア・イタリア:魚に泳ぎを教えるな

モンゴル:仏様にお経を教え金の仏に黄色を塗る

ルーマニア:野菜農家にキュウリを売る

インドネシア:老人にヨーグルトの食べ方を教える

トルコ:こしょう屋にこしょうは売れぬ

少し難しくなりました?

何だかよく分からないたとえもありましたね(笑)


答えはー



「釈迦に説法」です。

第四問

古典ギリシア語:バラに囲まれた豚

イタリア:大麦はロバにやるために作られたものではない

アラビア:ロバにバラをあげてみなさい。食べてしまうから。

あげてみなさいと言われてもねー(笑)

ルーマニア:ガチョウに大麦

ヒンディー語:猿の手にヤシの実

ネパール:ダイヤモンドの価値は虫には分からぬ

ちょっと分かりやすくなったかな?

えっ?分からない?


答えはー



「猫に小判」です!

イメージしにくかったよね(笑)

では、次が最後です。正解者はポイント2倍です。

知らんけど。

第五問

ロシア:真実は火には燃えず、水にも沈まず

モンゴル:契約書に押印があり、ラクダに烙印がある

スペイン:愛は行為であり、理屈ではない

インドネシア:降りたところに足跡あり、登ったところに足跡あり

台湾:白い紙に黒い字を書く

英語:プディングのできは食べてみて分かる

もう少し易しくしましょうか。

フランス:多すぎる証明は何も証明しない

中国:事実は雄弁に勝る

スペイン・メキシコ:事実は言葉より多くを語る


正解はー



「論より証拠」でした。

今は外出自粛で世界が一つになって、何とかこの状況を克服しようと頑張っていますが、終息すると忘れてしまうのが人間の常。

ことわざで言えば、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ですね。

韓国では「便所に行く時の気持ちと戻る時の気持ちは違う」と言うそうです。分かる(笑)

イタリア「天は明るい人を助ける」

トルコ「笑いはすべての病の薬」

アラビア「笑いなさい。されば世界はあなたに微笑もう」

この記事を読んで少しでも笑って頂けたなら、

スペイン:砂漠で説教する者は説教を無駄にする

ロシア:スプーンで海を汲み出すことはできぬ

グルジア:水をすりつぶし続けても水は元のまま

Look for a needle in a haystack.

干し草の山から一本の針を探す=骨折り損のくたびれもうけ

にならずに済みます(笑)


巻末を見ると、編纂には30人ほどの方々が携わっておられるようで、努力のあとが窺えます。

この辞典を端緒として、人間の手でしか作れない辞書が増えてくれることを期待します。「千里の道も一歩」からですね。

紙面には、なんとあちゃら語の原文も載っているので雰囲気を味わうこともできますよ!

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