広辞苑と「ま〇こ」の謎
広辞苑には男性性器を表す「ちんぽ」という語は載っているが、女性器を表す「まんこ」という語は掲載されていなかった。
オレの手元にある広辞苑第四版はこのようになっている。
「まんげん」の次が「まんご」になっていて、間に入るべき「まんこ」という語は掲載されていないのである。
オレはこのことを長いことネタにしていた。
広辞苑は「ちんぽ」は載せてるのに「まんこ」を載せていないのは女性差別じゃないのか。真の男女同権というのは「ちんぽ」「まんこ」を同等に扱うことである。
しかし、オレは何気なく手元にある「広辞苑第七版」を開いて見たときに、意外なものを発見したのである。
なんと、広辞苑第七版には「まんこ」が掲載されているのだ。
ついに広辞苑はジェンダー平等を成し遂げたのである。これはなかなかの快挙である。オレは広辞苑の編集者のこの英断に拍手を贈りたい。
辞書や百科事典で性に関する単語を調べてみたり、ネットで性に関する画像を検索してみたりするのはエロい男子高校生にとって自然な行為である。もちろんオレも高校生の時はそういう一人だったわけで、辞書でたとえば「性器」と調べてみたりする。すると「生殖器のこと」と書いてある。それで今度は「生殖器」という語を調べると「性器のこと」と書いてあったりする。そういう堂々巡りのごまかしに失望しつつ、辞書とはどこまで性の領域に踏み込んでもよいのかという大きな疑問を感じていた。
さて、今回こうして天下の広辞苑が「まんこ」掲載という英断を成し遂げたわけだが、女性差別は意外なところに残っていた。それは古語辞典である。
古語辞典には、女性の局部、つまり「まんこ」の意味である「ほと」という単語を掲載したものとそうでないものがある。
掲載している出版社:ベネッセ、三省堂
掲載していない出版社:旺文社、小学館、学研
「古事記」にもたびたび出てくるこの重要古語である「ほと」をどうして旺文社、学研、小学館の古語辞典が掲載していないのか。オレは本当に不思議に思っている。
倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)は箸で「ほと」を突いてしまったことが死因であると古事記には記載されている。彼女が葬られた古墳は「箸墓」と呼ばれている。
また、天岩戸の前で本邦最初のストリップショーを演じた天宇受売命(あめのうずめのみこと)は、「胸乳を掛き出で裳の緖をほとに於いて忍し垂れぬ也」とある。つまりオッパイや陰部を丸出しにして踊ったということである。
「古事記」を読むためにはこの「ほと」という語はとても重要なのである。
辞書を編集する際に、世の中にちゃんと存在することばを編集者の勝手な判断で不掲載にするということは、その辞書が社会的な役割をきちんと果たしていないのと同じだとオレは思っている。
「広辞苑」はすばらしい辞書である。ちゃんと「まんこ」掲載に踏み切ったという点でオレはその英断を高く評価したい。そして、長いこと不掲載だったことに関して、日頃「ジェンダー平等」を叫ぶ女性たちが何の声も上げてこなかったことをオレは残念に思うのである。
男女同権を語る女性たちにこそ「まんこを載せろ」と書かれたプラカードを掲げて出版社の前で抗議活動をしてもらいたかったのである。
もうその必要はなくなったのである。