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球団を”創る”ということ ③

昨年まで国内の独立リーグ3球団で3年間プレーさせていただき、
引退後は創設間もない福井ワイルドラプターズというチームで球団広報を担当している三木田と申します。

今日は表題について、
自分が「選手」から「職員」という立場に変化したことで気づくことができたたくさんの視点について少しばかり皆様と共有できたらと思います。

この文章が、現在独立リーグという世界に身を置いている選手や、将来スポーツ業界に飛び込みたいと考えている人の参考になれば幸いでございます。

①なぜ球団が存在できるのか
②球団関係者がキャストとして来場者にgiveできること
③明日から選手ができる行動

という3部構成で書いてみます。
本日は③です。

前回の①・②はこちら

"球団を創る"ということ ①|三木田龍元 @RyugenMIKITA #note https://note.com/ewhexa/n/n30e76b5d0221
球団を"創る"ということ ②|三木田龍元 @RyugenMIKITA #note https://note.com/ewhexa/n/n51a3926812b7

②は、私が尊敬してる最所あさみさん(@qzqrnl)が拡散してくれるというサプライズにより過去屈指の反響をいただきました…。

本日で3部構成の最終章ということで、いつも以上に気持ちを込めて書いていきます。

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前々回のnoteでは、球団が利益を生み出すための仕組み、そしてその中で球団に関わる選手やスタッフがどんな意識を持つべきか

前回のnoteでは、球団に関わる者は「自分がキャストである」というある種のプライドを持つことでファン・サポーターである「来場者」にいかに楽しんでもらうかを考え抜こう といった内容を書かせていただきました。

そして本日は、より具体的に「選手一人一人ができるアクションプランについて」といったものを書こう!

と思っていました。私自身が選手だったころ、そして今も大切にしているSNS発信について書く予定でした。

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しかしながらその前に…
この数日の中で訪れた変化によって書きたいことができたので、今の私の想いを先に書かせていただきます。

この記事を書いている2020年4月4日。
福井では桜が咲き、素晴らしい春の陽気ですが、世の中は残念ながらどんどん暗くなっています。

福井県からの外出自粛要請もあり、選手は練習試合はおろか全体での練習やジムへ行くことも数日間は自粛いただくことを決定しました。

そしてシーズン開幕も2度の再延期がリーグから発表され、開幕は4月11日→4月18日以降→5月中旬以降とずれ込んでいます。
正直、5月中旬の開幕もかなり厳しい状況と言わざるを得ません。

前回の記事で述べた、”来場者”となるはずであったファンの皆様とは球場で会えない日々が続くこととなります。

ファンの皆様にとって非常に辛い・歯がゆい日々であるでしょうし、選手も不安の中、今できる調整を各自で全力で取り組んでいます。

そして我々球団スタッフも同様に、「今この状況で何ができるか」について全力で頭を使う日々です。
他球団のスタッフさんとも積極的に電話などで意見交換をしています。

先が見えない中で、リーグや球団の存続危機を乗り切るために何ができるか、、、
と考えれば考えるほど、リーグおよび各球団に所属するごく少数のスタッフだけでこの局面を乗り切ることは難しいと感じます。

しかしながら、選手やファンの皆様の力を結集することで、まだまだできることは見つかると信じています。

こういったときに、”どこの球団のファン”といった垣根を超え、全力で協力し合えることがこのリーグの素晴らしいところであり、大好きな部分です。

ここに加えて、所属する選手の一人一人が一つの理念のもとに立ち上がることで、むしろこのピンチをチャンスに変えられるのではないでしょうか。

ルートインBCリーグに所属する選手が持つ共通の理念は何かと考えた時に真っ先に頭に浮かんだのがBCリーグ憲章でした。

4か条のこの憲章において、現地でプレーをお見せできない今の状況でも達成できるもの。
それが4つ目の文言でした。

BCリーグは、
野球場の内外を問わず、地域と、地域の子供たちの規範となる。

球場外でできること。
それは「地域と、地域の子供たちの規範となる」行動・発信・振る舞いです。

大変な情勢だからこそ、選手たちは今一度この憲章に自分の姿を映してみてほしいと思います。
これは球団に関わるスタッフである私ももちろん強く意識していきます。

ファン・球団スタッフ・リーグスタッフ、そして各球団の選手が団結することで、今まで以上に強固かつ柔軟なリーグ・球団となることに期待を込め、本日は筆を取っています。

ここからの文章はぜひ選手の皆さんにも届いてくれればと思います。本題へ移ります。

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やはり今の時期、大きな鍵となるのは”発信力”ではないかと思っています。

SNS発信に関連して、今日から選手が実行できる3つのアクションプランを述べてみます。

1、自分の考えや知識・経験を言語化してみよう
2、他球団・他スポーツ団体の選手たち、ファンとコミュニケーションを取ってみよう
3、ハッシュタグや球団・リーグ公式に乗っかってみよう

順に書いていきます。

1、自分の考えや知識・経験を言語化してみよう

全体練習やジム利用ができない中で、選手が「野球の技術を磨く」ためにできることは一見少ないと感じてしまうと思います。

しかし今までより自由に使える時間も増えるはずです。
その中で、「これまでの課題や今後の目標を一度きれいに整理し、言語化すること」を提案します。

自分のメモ帳に書き留めるのはもちろんですが、それを自分の言葉で外部に発信することは財産として蓄積されます。
選手の皆さんがこれまで築き上げてきた知見・技術は非常に価値のあるものです。

我が福井球団の高橋康二投手(@nias8_3vy)が昨夜バズっていました。
彼は発信を積極的に行ってくれている選手の一人です。

( https://twitter.com/nias8_3vy/status/1245974323354939394?s=19 )

トレーニングの様子やピッチング・バッティングの動画は、少年野球の指導者さんや現役の高校生・大学生の助けになるはずです。

また独立リーガーは、いわゆる”訳アリ”な選手もいるかと思います。怪我など大きな挫折経験から這い上がって、今プレーしている選手もいるでしょう。
そのプロセスも必ず価値になります。

将来、指導者になることを頭の片隅に考えている選手もいるはずです。
技術やこれまでの経験を”感覚”ではなく”理論”で指導できるようになるためにも発信は一つの勉強となると思います。

けど自分には何もスキルも知識も経験もない…という選手は、ぜひこの期間を使って勉強してみましょう。

野球関連の本なら手に取りやすいと思いますし、いわゆる”ビジネス書”も読みやすいものはたくさんあります。外国人選手と会話がしたいといったモチベーションで英語も勉強してみても面白いかも知れません。
今ならYouTubeでも学びとなるコンテンツは溢れています。

その勉強の成果を発信すると、選手の意外な一面を覗けて、ファンの方は喜んでくれるかも…

もし自宅で渾身の料理をしたら、フォロワーさんはたくさんアドバイスをくれるはずです!(経験談として笑)

2、他球団・他スポーツ団体の選手たち、ファンとコミュニケーションを取ってみよう

SNSの魅力の一つは、言うまでもないですが世界中の人たちと繋がれることです。

ぜひ、他球団の選手と意見交換をしてみてはいかがでしょうか。新たな野球観の引き出しを増やせるかもしれません。

また、サッカーやバスケといった他競技の選手たちの発信力は本当に尊敬する部分がたくさんあります。

彼ら・彼女らは自分たちの与えられる影響力を信じており、積極的に自分たちの言葉を発信しています。

バスケ Bリーグの京都ハンナリーズに所属する岡田優介選手(@ysk_okada)のこの投稿が非常に印象的でした。

( https://twitter.com/ysk_okada/status/1243876177816588288?s=19 )

球団の方から選手に対して、「給料を払ってるんだから発信してくれ!」とは言えません。
ですが、こうした考え方を選手側が抱いてくれると球団側は涙が出るほど嬉しいですし、球団としても選手の発信を全力でサポートさせていただこうと思っております。

そして世界中の誰とでも繋がれるとは書きましたが、
やはりせっかくなら同じ地域で活躍する他団体の選手たちとは、ともに盛り上げていきたいと思います。

女子フットサルの福井丸岡RUCKさんは、選手全員が高いプロ意識を持ち、発信をしている印象です。ぜひ彼女たちの企画に追随し、「チームふくい」として盛り上げていきたいです。

また、ファンの方々の応援をダイレクトに受け取れることもSNSの大きな魅力です。
球場で野球ができない中、選手もモチベーションの維持は非常に難しいと思います。これまでおこなわれた無観客試合も見ていて苦しい思いでした。やはり応援の力は偉大です。

こんな状況だからこそ積極的にファンの皆様とコミュニケーションを取り、応援する人・される人の双方が笑顔になれればと思います。

3、ハッシュタグや球団・リーグ公式に乗っかってみよう

これが最も強調したい部分なので最後に書かせていただきました。

スポーツとりわけBCリーグのTwitter界隈ではしばしば自然発生的にハッシュタグが発生します。ファン主導のものが多く、ユニークなものばかりなので自分も現役選手だったころは楽しく参加させてもらっていました。

リーグ公式(@bcl_staff)が舵を取って、ハッシュタグをつけた投稿の募集をすることもしばしば…

(この日は、”#BCリーグはいいぞ”、”#野球の日” の2つのハッシュタグを付けた上で、ファンの皆様がBCリーグの魅力や小ネタをツイートしていた。)

こういったハッシュタグにたくさんのファンの方がいつも反応してくれており、本当に素敵な方々だな~と常々感動しています。

しかしながら、こういった流れにリアクションする現役選手が非常に少ないのが実態です…

現役の選手たちが乗っかることでもっともっと面白くなりそうなのにな~、と思える企画はたくさんあります。

また、トレンドのハッシュタグは検索されやすいため、他球団のファンの目にも止まりやすいといった特徴もあります。

今は、”#また笑顔で球場で会おう”といったタグが生まれており、ありがたいことに福井球団の選手が積極的に参加してくれています。

ぜひこの輪が広がっていき、ファンの皆様とのコミュニケーションが生まれていけば嬉しい限りです。

また個人的にはですが、球団公式間のやり取りがもっと生まれると面白いのではと日々感じています。

Bリーグの各クラブは、いわゆる”中の人”が非常にユニークで、攻めた企画も巻き起こっています。
千葉ジェッツふなばし さん、滋賀レイクスターズ さんのこのやり取りはほっこりしました(笑)。
そしてファンの方もとても喜ぶ内容…。さすがといった企画でした。

( https://twitter.com/shigalakestars/status/1243529033775632384?s=19 )

現在、福井ワイルドラプターズの”中の人”を担当させてもらっている以上は、待つのではなく自発的に攻めていこうと思っています。

”中の人”は、無機質で必要な情報だけを発信するべきという意見もありますが、そうなってしまうと代替可能な広報です。誰にでもできる仕事に価値は生まれづらいです。

裏方が前に出過ぎることは確かに良くないのかもしれませんし、必要な情報やオフィシャルなリリースを厳格に行うことも当然必須の業務ではあります。

しかし、よりフレンドリーなSNS運用をおこなうことができれば、ファンの皆様とのコミュニケーションも図りやすくなると思っています。

今後はリーグやファン主導に頼らず、球団としても積極的なSNSの企画を生み出していく方針です。

そうした企画に選手たちや、他球団公式のアカウントが乗っかってくれることで、見ている人たちはより楽しんでもらえるのではないでしょうか。

ぜひ選手たちは、球団公式にも積極的に絡んできてもらえればと思います。ガンガンRTさせていただきます。

―――

最後に

「野球選手は野球だけやっておけ」といった声は少なからずあります。自分も誹謗中傷に苦しめられた時期もありました。
ですが、その風潮も最近は変化してきていると感じています。

そして批判的な言葉は、どうしても目に入りやすいです。
応援してくれている人はわざわざそれを言葉にしないからです。悪い言葉の方が目立つだけです。
ですが、絶対に応援してくれる人・支えてくれる人のほうが多いです。この時代にSNSをやらない理由は正直ありません。

現役時代に獲得したフォロワーさん、発信力・影響力は、その後の自分をとてつもなく助けてくれます。

ぜひ今日の記事が、現役選手の助けになれば幸いです。

そして、こんなに長い記事を最後まで読んで頂きありがとうございました。

大変な状況ではありますが、
「ここを乗り越えて迎える開幕は一体どれだけ素敵なものになるか」といった楽しみもあります。

逆風のほうが空に浮かぶための揚力は大きくなります。今まで見れなかった景色を見るために、この風は必要なものかもしれません。
そう思える日を待ち、「今できること」に全力を尽くしてまいります。

選手・スタッフは、感染拡大防止策を徹底してまいります。
皆様もどうか体調にはお気をつけくださいませ。

「”#また笑顔で球場で会おう”!!!」

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