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うつ治療記(1):うつに効く音楽について

「うつの第3波」がくるのを押さえつけるために、毎日、日記のように文章を書いていくことにする。読者は想定していないが、いつかどこかでだれかが少し気が楽になればいいなと思う。目標は2000-3000字。内省的な日記自体は高校時代の現代文の先生に薦められて、それから今でも書いているが、最近は「週記」、もはや「月記」と化している。noteというプラットフォームの良いところはパブリックの目線があるので、それが継続的に書くことのプレッシャーとなることだ。私の記事を閲覧している/読んでいるほとんどの方は私のことをよく知らないだろう。しかし、その人たちの助けによって、この note が続けられていることは念頭に置いていてほしい。

個人的音楽史
今日のトピックは音楽。音楽にはほんとうに助けられている。小学生高学年の頃は友達に薦められて嵐の曲にハマり、毎晩布団の中で買ってもらった青いウォークマンでそれを聴いていた。いまでも嵐の曲がテレビから流れれば、多くの曲の歌詞を口ずさめるほど頻繁に聴いた。
中学1年からサカナクションにハマり出し、自分の人生にもっとも影響を与えたミュージシャンと言っても過言ではない。サカナクション から派生して、邦楽を多く聴くようになったのは、高校生の頃だった。挙げるときりがないが、くるり、フジファブリック、bonobos はよく聴いたし、いまでも聴く。そして、サカナクションのすごいところは、世代前の邦楽との媒介となってくれるところである。ナンバーガールやYMO、ゆら帝、はっぴいえんど、フィッシュマンズ、電気グルーヴ界隈の音楽はサカナクションによって聴くようになった面が非常に大きい。
いま、大学生として聴いている音楽は上に挙げたミュージシャン、邦インディーロック(ミツメ、スカート、トリプルファイヤー)、その他邦楽(オウガ、コーネリアス、toe、group_inouなど)。洋楽も聴くようになった。トーキングヘッズやXTC、現代音楽だとライヒやエイフェックス・ツインなど。時間を経て、音楽の興味はどんどん移り変わるものだが、ロックやエレクトロニカといったサカナクション的音楽の傾向は受け継がれたままだ。
しかし、この音楽史で何を言いたいかというと、私がどれだけ音楽とともに生活し、どれだけ音楽に頼ってきたかということだ。ここに書いてあるミュージシャンやその付近にある音楽について詳密に綴っていたら、1万字はゆうに越えてしまう。そのくらい、音楽は身近な存在なのだ。私自身、他人になにかを頼みたくない性格なので、うつのときは他の人にではなく音楽に頼りっぱなしだった。

「うつの第1波」で聴いた音楽:ショパンのノクターン
「うつの第1波」によく聴いたのはショパンのノクターンだった。このときは違う演奏者による同じ曲をずっと聴いていたような気がする。ダン・タイ・ソン (Chopin: Nokturny, 2019) の ノクターンNo.20 C# minor (Nocturne in C-sharp Minor, Lento con gran expressione) は普通のときに聴くと、一音一音が鮮明で、これもまた絶品なのだが、うつのときに聴くと、少し明るい、強い印象がある。この地上の明るさや刺激はうつのときの暗闇にはあまり必要なかった。
マリア・ジョアン・ピリスのNo.20 C# minor もダン・タイ・ソンと似ていて、結構明るい感じがするのだが、ダン・タイ・ソンと特に違うのが、入りがものすごくトロいが、曲の終わりにかけて速いフレーズがどんどん出てくるところ。これはうつを増幅させているということで却下された。
反対に、優しすぎるということで却下されたのが、ダニエル・バレンボイムのノクターン。音が優しすぎると、どうしても細かいところが気になってしまい、全体としての曲を感じることができない。はっきり言って、うつのときにピアノのテクニックなどどうでもいい、までは行かないが、あまり気にすることができない。
結局、一周まわった感があるが、落ち着いた先は辻井伸行 (Chopin Piano Concerto No.2, 2018)。彼のノクターンNo.20 C# minor はうつのときに聴くと、より心の奥底に沈んでいく感じだ。良い意味で、だ。間の取り方、感情表現は曲の様々な場面で対比がきいていて、ダイナミックである、などということはうつの状態の時は一切考えていないが、そういったところが評価の高さにつながったのだろう。そんなこんなで、辻井伸行のノクターンを聴いていた。

それだけではもちろんなく、マーラーの交響曲第5番(ここではバーンスタイン指揮のニューヨーク交響楽団、1997年のものが採用された)やシューベルトの弦楽五重奏曲(エマーソン弦楽四重奏団とデイヴィッド・フィンケル、2018年、[https://www.youtube.com/watch?v=T0GOv95iDf0]、もしくはクリーブランドカルテットとヨーヨー・マ、1984年、[https://www.youtube.com/watch?v=cEL5pCQjPpI])は良い感じだった。いつもは好きなシェーンベルクの浄夜(カラヤン指揮、ベルリンフィル、1974年)は残念ながら採用には至らなかった。それにしても、うつのときはクラシック音楽への教養が少しは増えるものだ。

「「うつの第2波」で聴いた音楽:蓮沼執太(フィル)」編は明日に譲ろう。


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