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読後感:神社に秘められた日本書紀の謎

 神社に秘められた日本書紀の謎(渋谷申博著 鎌田東二監修 宝島新書 2020年3月7日発行)を読んだ。

 のっけから驚いた。
「まずは東京大神宮へお参り」で始まる。
東京大神宮,まったく知らない名前だったからだ。
創建は明治13年とあるから,古代史の本には登場しないから知らなくても当たり前かもしれない。
 しかし,伊勢神宮の分社ともいえる存在で,アマテラス,トヨウケに,造化三神のアメノミナカヌシ,タカムスヒ,カムムスヒを合祀しているという。今度機会があれば行ってみねば。

 著者は日本宗教史研究家。監修者も宗教学者。タイトルの通り,「神社」から古代史を解き明かす形になっている。軸になるのは日本書紀と古事記である。この両方の記述を比べながら進めるのだが,日本書紀の「一書(あるふみ)に曰く」をきちんと拾い上げているのが面白い。

 日本書紀の「一書(あるふみ)に曰く」は,日本書紀の著者(集団)の意図を推し量るのに,日本書紀を取り上げた「謎本」でもよく引き合いに出される。

 進行は,神話から始まり,雄略朝くらいまで。関連する神社を紹介していく。私としてはだいたい知っている内容だが,「だいたい」であって,細かいところでは「へえ,そうなのか」というところが多かった。
 なかでも,黄泉の比良坂ではびっくり。島根県揖屋の黄泉の比良坂に行った話は note に書いたが,「ここから細いけもの道に入っていく」とある。知らなかった。「10分ほど歩いて目的の場所に着いた」と書いてある。もう一度行ってみなければ。

 その他,存在すら知らなかった神社や,存在は知っているがその重要度は知らなかった神社など,今まで読んだ古代史の本にはなかったような内容だ。
カラー写真入りで,説明文は読みやすい。難易度としては「入門書」としていいだろう。なにより,宗教史からの観点というのが私にとっては斬新だった。
古代史というだけでなく,神社巡りのガイドにもなる。

章立てを紹介しておこう。
第1章 高天原の謎
第2章 出雲神話と国譲り神話の謎
第3章 天孫降臨・日向三代の謎
第4章 神武東征・建国神話の謎
第5章 歴代天皇の謎


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