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離し

3番線、快速電車の扉が閉まる。ホームドアが後を追ってまたきっちりと閉まった。
閉まったら、おしまい。さようならの合図だ。

もし、手を繋ぐことが出来ていたら
もし、優しく抱きしめられていたら
もし、未来に繋がる言葉があったのなら

この扉が閉まっても寂しくなんて無かったのに

「ばいばい」
小さく呟いて手を振った。

閉ざされたら終わりだと思っていた。1度閉ざされた心は簡単には開かず、空いた距離を埋める事は難しい。そう思ってる。と言うか、そう。

でも、貴方は私に何度もおしまいをしては、手を差し伸べた。

何故?

無駄に期待している自分の気持ちは宙に浮いては地に沈む。

唐突に発された君の言葉。
「あのさ、美味しいものって食べたら無くなっちゃうでしょ?例えばカレー。凄く美味しいじゃん。でも食べなかったらずっとそこにあるんだよね。アイスもハンバーグも食べたいじゃん。だからカレーは食べずに取っておくの。大切だからね。」

そう言ってジョッキに入ったお酒を1口飲んではふざけて笑う、君の顔を、君の言葉を思い出す。

私は取っておかれていたのかもしれない。
だったら食べられた方が幸せなのに。

扉が閉まる前に
手を繋いで、抱きしめられて、"またね"

これだけが欲しかった。
好きと言ったら終わってしまう
手を繋いで抱きしめたら、貴方はまた心を閉ざしてしまうに違いない。

暗闇から動き出す電車の灯りの影ははっきりとせず、ぬらぬらと動いては大きな物音を立てて消えていった。

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