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【読書レビュー】小澤征爾×村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』

題名の通り、文庫本の約400ページにわたって小澤征爾と村上春樹の両氏が音楽についてひたすら語り合う本だ。小澤征爾と言えば、世界的な指揮者として知られる、あの「世界のオザワ」である。数年前に心臓の病気で活動休止を余儀なくされ、現在でもかつての精力的な活動を取り戻すには至っていないが、「サイトウキネン」を見てわかる通り、世界各地の名門オーケストラを指揮する中で多くの一流音楽家の信頼を集めてきた。日本人で最も世界で通用した音楽家と言ってよかろう。一方の村上春樹は無類のクラシック音楽愛好家として知られている。彼の数々の小説にもクラシック音楽が登場し、例えば『1Q84』ではスクリャービンのシンフォニエッタが用いられ、有名曲とは言えないこの曲のCDが、この小説の発表時に爆発的に売れたという。その一方で、『さよならバートランド』など海外の音楽に関わる本の翻訳にも力を注いでいる。

そんな二人の対談だが、結論から言うとハイレベルな内容となっている。私自身ずっと音楽(特にクラシック音楽)に関わってきており、拙作「指揮棒が耳に刺さった話」https://note.com/everywherefurai/n/nab18ecc868b1でも書いたように、アマチュアながら各所で指揮をする立場もいただいている。(自分で言うのはおこがましいのだが)総譜を常に携帯して暇さえあれば楽譜を読んでいる生活をしているので、人一倍クラシック音楽には精通している自身がある。そんな私でも一部ついていけない箇所があった。一般の読者を置いてけぼりにしないようなリズムで会話が展開されているので、読み易いことは確かなのだが、その内容は非常に濃い。

本のタイトルはあくまで『小澤征爾さんと、"音楽"の話をする』なので、対象はクラシック音楽に限定しておらず、ジャズについても非常に詳しく話をしている。この本を読むまで小澤征爾にジャズの嗜好があることを全く知らなかったので、彼のジャズへの言及は非常に興味深く読むことができた。

全ての音楽愛好家におすすめしたい一冊。でひ手に取って読んでもらいたい。

おわり

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