話題作続出!本の力で人の心をまっすぐに照らしてくれるライツ社の編集長大塚さんにインタビュー!


私がこのような活動を始めたいと思ったきっかけの本「ずっと読みたい0才から100才の広告コピー」の出版社の編集長にインタビューさせて頂きました!編集者だからわかる本にしかない可能性、大学時代の大きな挑戦、自分を見つける方法、そして編集者としての夢など、大塚さんが人の心を照らす本を生み出せる理由が分かる内容となっています! 

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大塚啓志郎さん。(株)ライツ社代表取締役・編集長。兵庫県明石市出身。大学を卒業後、京都の出版社にて編集長を務めた。2016年、30歳で独立。地元明石市に出版社ライツ社を立ち上げる。

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「本」は、真実を語れるパッケージだと思う。

ーインターネットが当たり前となった現代ですが、「本」はどういう存在だと思いますか? また、どのような力を持っていると思いますか?

今になって思う本の価値ってけっこうあるんですよね。大きく3つあるかなと思います。

1つ目は、「広告」がないということ。本は、最も自由で誰にも拘束されないメディアなんですよね。テレビ、新聞、インターネットなどの他のメディアは、スポンサーが広告費というお金を出さないと活動できない。資金が回っていかない。実はとても制約されていて、「本当」が伝えにくいメディア。
でも、本には広告という枠がない。つまり、スポンサーがいない。だから、「本当」を語れるメディアなんです。

ーなるほど。情報が溢れて何を信じたらいいかわからない時代だからこそ、自由に真実を語ることができる「本」に価値があるんですね。

そうなんです。で、2つ目が集めて残すことができるということ。例えば、ガイドブックの旅の写真や情報ってウェブに載ってることと一緒なんですよ。でも、その情報を束ねて1つのものにすることにすごく価値があって、お金になる。情報が多すぎるネットの海で、それを集めて残すことは出来ない。だから代わりに「本」という一つのアイテムにすることに価値がある。

3つ目は、家具に本棚があるということ。新聞棚ってないじゃないですか。本用の家具があるということが、どれだけ人々の生活に馴染んでいるものなのかを示してますよね。本はただの印刷媒体ではなく、アイテムとして古くから愛されている。だから残り続けるんだと思います。

ーその本の価値にはいつ気付かれたのですか?

それは出版社に勤めてから気づきましたね。この仕事を始めて10年経つけど、毎日のように本の感想が書かれたアンケートハガキが届くんですよ。ハガキってよっぽど心動かされた人しか書かないと思うんですよね。そういう人って本当にいろいろな背景 (病院で入院しています、刑務所にいます、いじめられていますなど) を持ってて、すごい逆境の中で自分たちが作った本を選んでくれたんだと思うんです。

たぶん、本屋さんでパーっと光ってるんでしょうね。で、手に取って読んでみると救われた、光を照らされたからこそ感想を書いて送ってくれる。そんなハガキが毎日届くことで、本ってこんなに人の人生を変えるのかと積み重ねで実感しましたね。

「本」は、個人に対する手紙のようなもの

ーなぜ、本は人の人生を変えられると思いますか?

本ってめっちゃ選ぶじゃないですか。何万、何十万冊ある中から自分で選ぶ。本当に良い本に出会った時は、自分のために書かれた本なんじゃないかとさえ思ってしまう。それは音楽も一緒なんですよね。
もう個人に対する「手紙」のようなものなんです。めっちゃニッチな本とかもあるじゃないですか。どんなタイトルを調べてもその本がある。それだけ個人的なものなんですよね。なので、個人に当てられたもの=人生を変えるということに繋がってくるんだと思います。

ー大塚さん自身は、本にどういった想いを込めていらっしゃいますか?

さっきも言ったように、本っていちばん自由なメディアなんですよね。どんな本も存在するし、だからこそ、人を暗い気持ちにさせる本もたくさんある。でも、僕はそんな本は作りたくなくて、本で人の心を照らしたい。そんな想いで立ち上げた出版社がライツ社なんです。社名には”write, right, light”という3つのライト、「書く力で、まっすぐ、照らす」という意味が込められています。

ーそうなんですね。人の心を照らす本を作りたいと思うようになったきっかけはなんですか?

『1歳から100歳の夢』という本を読んだのがきっかけでした。就活の時にこの本を読んですごい衝撃を受けたんですよね。何が衝撃って、この本10万部売れたんですけど、有名人が一人も出てこないんですよ。普通の人の普通の言葉と笑顔の写真だけでつくられた本なんです。それだけでこんなにも自分を感動させて、その他10万人にも感動を与えて、人生前向きに生きたいと思わせてくれた。すごいと思った。あー、僕が作りたいのはこういう本だなって思ったのが原体験でありますね。
なんでもない人の言葉で人を輝かすことができるのであれば、そういう本を作りたいと思って今も思っています。


世界中で起こっている悪いことや違いを無くしたい

ー人生を変えるきっかけを与えたい、人の心を照らしたいという想いはずっと持っていましたか?

んー、そうですね、ちょっと重たい話になりますけど、高校生の時に付き合っていた同級生の彼女が家族ごと、ある宗教に入ってたんですよ。彼女のことが好きだったので、僕は宗教もまるごと理解しようといろいろ努力したんです。でも結局その壁が大きくてズレを埋めることができず別れてしまった過去があって。
その時すごい落ち込んだんですよね。同じ日本人、同じ地元で育ってきたのにもかかわらず、こんな隔たりがあるのかって。だけどそんな違いを受け止めることができなかった自分の小ささに気づいて、こんなに近くにいる人間でも隔たりがあるならもっと違いを知らないといけないと思って、旅に出ることにしたんです。

ーそうだったんですね。海外ではどのような世界が待っていましたか?

初めての海外がかなり衝撃的で。ジャーナリストの取材に同行できるという大学のスタディーツアーに申し込んでベトナムに行ったんです。取材のためにベトナム戦争の枯葉剤被害者の家に行ってみると、手が変な形になっていたり、顔がつぶれていたりする姿を目の当たりにして。
その帰り、ジャーナリストに「銃を撃てるところがあるから行っておいでよ」と言われて、友達と楽しんでたんですよ。すると、「この裏にはこれで撃たれた家族が残っているんだけどね」って言われて。引っ掛けやったんですよね。その銃声は、実際に戦争で撃たれた人達にも聞こえていることを知らされた。「これが世界だよ」って言われてすごいショックやった。うわー何を楽しんでたんやろって。

それが初めての海外だったから本当に衝撃を受けて、もっといろんな世界を見ないといけないと思って、一人でそれからも世界を回ったんですよね。それからこのような悪いことが起きていたり、違いがこんなに生まれたりするのなら、それを少しでもいい方向にしたいと思うようになりましたね。

ー働き方に関する本も何冊か出版されていますよね。 A. 日本人の働き方についてどう思われますか? B. 日本人の働き方を変えたいという想いがあるのですか?

僕自身出版社で働いていて、出版社ってブラックのイメージが強いと思うんですけど、実際、本当にブラックなんですよ。好きでやっている部分もあるけど、夜中の2時に帰る日々が結構続いていて。だけど結婚して、子どもができた時にこの生活のままだとダメやと思って、独立決めたんですよね。それが独立した理由の一つでもあって、働き方を変えないと一番大事なものさえ守れないと思った。

ー独立したら、働き方変わりましたか?

変わりましたね〜。独立してからも最初の方は21、22時まで働くことはあったんですけど、どんどん労働時間を短くしていって、そしたら集中力も上がって、売上げも上がった。その時に、あ、短い時間でもできるんだって実感したんですね。
人がいちばん幸せを感じる時って自分で自分の決断に納得して、自分の時間をコントロールできている時だと思うんです。逆に、嫌に感じる時って上司や先輩の誘いに断れなかったり、自分の好きなことが何もできなかったり、自分ではどうにもならない状態だらけのとき。もうそういう状態をすべて省きたかったんですね。それで、今に至ってます。本を作って売る、定時で帰る、家族と過ごす。ノーストレスな生活を送るようになった時に人生が楽しくなった。

そんなときに、「佰食屋」や「サイボウズ」さんみたいな、もっと働き方に対する考え方を忠実に形にしている方々がいたので、それ広めたら、日本人はもっといろんな選択肢を持って働けるんじゃないかなと思って、本にしました。

ー日本の社会の中で、自分がしたいことをして幸せになれると思いますか?

んー、そうですね。自分を見つける方法って失敗することだと思うんです。よくあるのが、大学に入って、就活頑張って、企業に勤めて1〜2年目に挫折を味わう。それが人生初めての挫折っていう人がめっちゃ多いんですよね。そこで初めて、自分には合っていなかった、自分はこういう生き方がしたかった、こういう働き方をしたかったんだってことに気づくんだと思います。

でも、それが初めての失敗だと、そもそも失敗の体験が少なすぎる。それが自分を見つけられない要因だと思います。その背景には、失敗を肯定しない日本の文化があるんですよね。でも徐々に日本は失敗を肯定する文化になってきてるし、大学の間にもっとチャレンジして、自分の向き・不向きがわかるようになっていくんだと思います。

ー大塚さんは学生時代に失敗の経験とかありましたか?

ありましたね。学生の時にいろんなところ旅に出てから、3〜4回写真展を開いたんですよ。大学の近くで1週間ぐらいの期間やって、1日に数百人くらい足を運んでくれて。そしたら賛否両論あったんですよね。「こんなの写真じゃねーよ」って言われたり、旅好きな人からは「すごく良いね」って褒めてもらえたり。そのチャレンジが自分の自信にも失敗にもなったし、それが「表現する」という今の仕事にも繋がってるので、そういう経験、自分のキャパを超えたことを1個でもすることで、自分をより知ることができるんだと思います。

ーなんで写真展を開こうと思ったのですか?

当時、旅に出てる人は他にもいたんですけど、旅に出ること自体がすごいんじゃなくて、そこで見たものとか経験を伝えることに意味があると思ってたんです。自分で満足するだけじゃなくて、伝えてこそ価値があると。だから写真展という形で、みんなに世界をもっと知ってもらいたかった。

著者たちに世界を変えてほしい

ー最後に、大塚さんの人生のゴールをお聞きしたいです。

難しいですね〜。僕自身、すごくしたいことがあるわけじゃないんですよね。本を書くのではなくて、編集する側になった。空っぽで真っ白なところに何を入れるかを考えるのが編集者の仕事で、そこに入れるものは著者の考え方、やりたいこと、思想とかなんですよね。そこと僕の興味が一致したら本になる。あくまで著者、作家がメインなんです。

なので、人生のゴールは、自分が今まで作ってきた本たち、その本の中身となってくれた著者たちが世界をより良い方向に変えてくれること。世界を変えるために実際に何かをしている人って言葉に圧倒的な力を持ってるんですよね。その人達は得てして、言葉足らずだったり、表現するのが苦手だったり、単純に忙しくて手が回らなかったりする。だけど、僕がそこにいることで価値があるのならそこにいたい。そしてその著者たちに世界を変えてほしい。その時に「大塚さんと作った本がきっかけだった」って思ってくれたら嬉しいなと思いますね。

ーそう思うようになったきっかけはありましたか?

学生の時に開いた写真展を毎回5人くらいのメンバーでやっていたんですけど、そのうちの1回を一緒にやった女の子に「大塚くんって面白いよね」って言われたんですよね。「どこが?」って聞いたら、「大塚くん自体は面白くない。でも周りの人を面白くするよね。トーストのバターみたいなものだよ。バターってすごく美味しいけど、バター単体では食べないでしょ?だけど、トーストに塗ることで、トーストをすごく美味しくしてくれるじゃない?大塚くんはバターなんだよ」って言われたんですよね。それが今でもすごい心に残っていて。それってまさに編集者の役割だなって思うんです。どれだけ本質持っている人を引き立たせるか。

ーすごい素敵な話ですね。今日は本当にたくさん貴重なお話をありがとうございました。

※2019年11月7日のインタビューを記事にしています。

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気付きもしなかった『本』にしかない価値、失敗体験が自分を知る一番の方法だということ、そして何よりも印象に残ったのは、最後のエピソード。誰かのちょっとした発言が、自分の本質に気付く鍵となる。みなさんにもそんな経験が埋もれているかもしれません。
一冊一冊の本に著者と共に想いを込めて、読者の心を照らしてくれる出版社を立ち上げた大塚さん。私はそんな読者のうちの1人で、本に心動かされ、光の射す方へと歩き出しました。そんな光を当ててくれた方に直接お話聞くことができ、本当に光栄でした。そしてこの記事を読んで、さらに誰かの心が照らされていたらこの上なく幸せです。

最後に、私が心動かされた本を紹介します。







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