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不定期連載小説『YOU&I』25話

友人に抱いてしまった嫉妬心。

一般的にはそんなに珍しいことではないが、國立からすると、許されることではなかった。

市ヶ谷と中野がゲームを楽しむ姿を見て、表では笑顔を作っていたが、内心は大きく揺れている。必死に嫉妬心を抑えようとする自分と、それを情けなく感じる自分。そして、それでも中野のことが気になってしょうがない自分。

それからの時間は、とにかく自分との闘いであった。

市ヶ谷らと色々なゲームをやるも、笑顔を作るので精一杯。楽しむ余裕なんてなかった。

「あ、そろそろ飲み会の集合時間近づいてきたよ。そろそろ準備しよっか」

神田は時計を見て、そう呼びかけた。

「えー、もうそんな時間かー。もっとゲームやりたかったな」

中野は残念そうな顔でそうつぶやいた。

「何言ってんの。今日は亜希のための飲み会でみんな集まってくれるんだからね」

神田は少し呆れ気味に中野に話す。

「そっかそっか、そうだよね。よし! なら準備するぞ!」

中野はすぐに切り替えて元気になる。

「まあゲームならいつでも出来るからさ、またやろうぜ」

市ヶ谷がそうつぶやくと、

「うん! またみんなでやろう! うちならいつ来てもらっても大丈夫だよ」

と中野は無邪気な笑顔を見せ答えた。

國立は、その笑顔に惹かれるも複雑な心境だった。

(もう俺は参加したくないな)

心の中でそうつぶやいた。確かに中野のことは好きかもしれない。しかし、市ヶ谷にまでも嫉妬心を抱くような卑屈な自分になるなら、もう距離を置いたほうが良い。

そんなことを考えていた。

「なら私と亜希は着替えてから向かうから、あんたたちは先に行ってて」

神田がそう言うと、

「なんで? そのままでいいじゃん」

と市ヶ谷が茶化す。

「あんたね。部屋着のすっぴんで私達に参加しろって言うの?」

「ジョークだよジョーク。なら俺と春樹は先に行ってるからな」

市ヶ谷は笑顔で逃げるように立ち上がり玄関へと向かう。

「お、お邪魔しました」

國立も市ヶ谷に続き、一礼してから部屋を後にした。

市ヶ谷と中野の部屋を後にし、集合場所である駅前のコンビニへと向かう。中野の家を出たことで少しほっとしていたが、嫉妬心を抱いてしまった市ヶ谷に対して、少し申し訳ない気持ちが國立にはあった。

そんなことを知らない市ヶ谷はいつもと変わらず優しく接してくれて、やはり市ヶ谷のことは”裏切れない”と勝手に感じていた。

「ちょっと俺、ATMで金おろしてくるから、ちょっと待ってて」

コンビニに到着すると、市ヶ谷はそう言って中へと入っていった。何だか情けない気持ちで一人立っている國立。自分も財布にいくら入っているか確認しようと、リュックを開けると、そこには手土産として買ったお菓子が残っていた。結局中野の家で出すことが出来ず、そのまま持って帰ってきてしまったのだ。

「……はぁ。何やってんだろうな俺は……」

今朝からの自分の挙動に、國立は思わずため息をついた。

▶To be continued

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