不定期連載小説『YOU&I』56話
國立は何とも不思議な気持ちで車に乗っていた。そもそも初対面である大久保の車に乗っていること自体、よくわからない状況である。
そこに加えて、大久保までもが一緒に旅行へ行くと言い出した。もはや何が何だか頭が追いついていかなかった。
「なら今度集まりがあったら呼んでよ! 挨拶に行くからさ」
「はい! 亜希たちにも行っておきますね!」
大久保と小金井はとんとんと話しを進めていく。
「で、國立くんは旅行に行きたくないの?」
先ほどまで笑顔だった大久保は、少し真面目な顔になり國立へと質問をした。急に真面目なトーンで質問された國立は少し戸惑い、
「い、いえ……。行きたくないわけではないですが……」
と答えた。本当は行きたくないと言いたかったが、國立は大久保の先ほどの発言が気になっていた。
「中野さんに一目惚れしちゃったよ」
本心なのか冗談なのかはわからないが、どこか自分を挑発しているようなその言い方に、國立は心がモヤモヤとしていた。
そんな人が、もし中野たちと旅行に一緒に行って大丈夫なのか。そんな気持ちもあり、國立の口から「旅行には行かない」という言葉は出てこなかった。
「よし、ならみんなで旅行行こうよ! きっと楽しくなるよ」
大久保は先ほどまでの真面目なトーンから一転、再び陽気に戻ってそう言った。そして、それから少し車を走らせたところで、この奇妙なドライブは終わりを迎えた。
「今日はありがとうございました! ならまた集まる日がわかったら連絡しますね!」
小金井は笑顔で大久保に挨拶をした。
「こっちこそ楽しかったよ! なら國立くんもまたね」
「は、はぁ……。ありがとうございました」
大久保に手を振られ、國立は元気なさげに挨拶を返した。
「良かったね! 大久保先輩が車を出してくれるって!」
小金井は笑顔で國立へと話した。しかし、
「あのさ、急にこういうことするの今度からやめてよ」
と國立は不満そうな顔で答えた。
「え、ご、ごめん。……怒ってる?」
小金井は少しシュンとした。
「……別に怒ってないよ。ただ、今度からはちゃんと事前に言ってくれよ。それにさ、大久保さんも一緒に旅行に行くって勝手に決めていいのか?」
「わからないけど、亜希たちにも聞いてみるよ」
「そういうのはさ、先に聞いてから話すべきだよ。とにかく明日授業で一緒になるから、そこで話そう。断られてもしょうがないと思うけどね」
「う、うん……。ごめん」
國立は呆れ顔で話し、小金井はすこし落ち込んだ様子だった。
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