不定期連載小説『YOU&I』60話
「それじゃ、カンパーイ!」
大久保の陽気な掛け声で食事会が始まった。飲み会に慣れているようで、大久保は一人ビールを喉へと流し込んでいく。
「なんかごめんね、俺だけお酒飲んで。みんなはまだ未成年なんだもんね」
大久保はジョッキを机に置いてそう話した。
「いえ、全然大丈夫です! でもお酒飲めるの羨ましいなーって思います」
神田がそう答えると、
「来年はみんなで本当の飲み会したいよな」
と市ヶ谷も続いた。
「そうだね、20歳超えたらみんな飲み会たくさんやるようになるよ。あ、しれっと始まっちゃったけど、今日は突然参加させてもらってありがとね。立夏とバイト先が同じで、大久保って言います。俺一人だけ年上だけど、気を使わず気軽に話してね」
大久保は明るく笑顔で自己紹介をした。大久保の雰囲気に、初めて会う神田らも安心した様子。
「最初立夏ちゃんから話しを聞いたとき、先輩だから怖い人だったらどうしようって思ってましたけど、本当に優しそうで安心しました! こちらこそ年下ばかりで話しにくいかもですが、気にせず話してくださいね!」
神田も笑顔でそう答えた。それからも良い雰囲気で食事会は進んでいく。ただ一人國立を除いて。國立は、中野が近くにいることがどうしても気になってしまう。そこに大久保までいるのだから、楽しめるはずもない。ただただ周りの話しに作り笑いで合わせることしか出来なかった。
しばらくして、
「そういえば、さっそくなんだけど、みんなは旅行に行こうって話しをしてるんだよね? もし良かったら車出すよ。大きいから全員乗れると思うし」
と、大久保が思い出したかのように旅行についてを話した。
「本当ですか。私たちとしては本当にありがたいんですが、先輩は迷惑じゃないですか?」
神田がそう問いかけると、
「さすがに北海道まで車出してって言われたら断るけど、そんな遠くに行くわけじゃないよね?」
大久保は冗談混じりにそう答える。
「もちろん。みんなで行くのは初めてなんで、そんな遠くにじゃなくて気軽に遊べるようなところがいいなって思ってます」
続いて市ヶ谷がそう話すと、
「そっか。だったら、河口湖ら辺はどうだろ? 観光も出来るし、近くに遊園地もあるし。車でもそんなに遠くはないから割とオススメかな」
と、大久保が答えた。すると、
「河口湖行ってみたいです!」
と突然中野が元気な声で話した。さすがの大久保も少し驚いた様子で、
「そ、そう。河口湖そんなに行きたいの?」
と中野に問いかける。
「はい! 実は小さい頃に家族と行ったことあって、本当に楽しかった思い出があるんです。もう一回行きたいなって思ってたので、行ってみたいです!」
中野はニコニコと無邪気にそう答えた。
「へー! そうなんだ。ならみんなが問題なければ河口湖行ってみる?」
大久保がそう聞くと、みんなも納得した様子で賛同した。
國立も周りの空気に合わせて賛同したが、内心はモヤモヤしていた。それは、大久保が中心となって話しが進んでいることに対するモヤモヤだった。
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