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阿鼻叫喚

心が荒んだら、実家に帰るようにしている。     

酒を飲んだり、メシを食いまくったりする人がいるけど自分は「実家に帰る」

久しぶりに自分の部屋の扉を開ける。       

 冷たい鉄の塊のようなものを踏んだ。恐る恐る見た。
腹筋ワンダーコアが鎮座していた。
こちらを訝しげに見上げる腹筋ワンダーコアが段々と愛おしく思えてきた。
クソ健気だ。コイツは僕の帰りをずーーーっとこうして待っていたのだろう。
その間、オカンやオトンが可愛がってくれていたのだろう。
「ガシャッガシャ!」その度にこうして健気に鳴いていたのだろうと思うとキュウ〜と胸が痛くなった。

僕はワンダーコア、もとい。ワンコに跨った。
「ごめんね」月並みな言葉だけど、そうワンコに呟き、ゆっくりと手を添えながらそっと重心を後ろに倒した。「左手は添えるだけ」スラダンの花道もそう言っていたし。
今度は思い切って、グググっと倒れてみた。倒れない。ワンコはカチカチになったまま動かなくなっていた。もう遅かったのだ。

「まだ起きてるのね。お惣菜とご飯あるからあっためて食べてもいいよ」オカンがそう言った。

「いや、今日はいらないや。今夜はワンコとの再会で胸がいっぱいなんだ」と僕が返す。

「あぁパパがハードワークで壊したよ」とオカン

はぁ、これだから僕はオカン派なんだ。       

そんな訳で久しぶりに自分の部屋に入ったら、ぶっ壊れた腹筋ワンダーコアがぶち込まれてた。なんだか、こういうの寂しくなるよね。家出たんだなぁって。


あと、僕が実家に帰った時にやる事がある。
僕の最寄り駅は階段を下って、左折すると僕の地元。右折すると隣町である。 
僕の地元は僕を含めて、とりわけパッとしない人ばっかりである。      
可愛い子は大体足早に右折して消えていく。     
僕は毎回この人は、右に曲がるか左に曲がるかを予想しながら階段を下っている。24歳位?マスク美人 スラっとして看護師っぽい顔。

完全に右である。                 

僕の地元はスラッというオノマトペと無縁である。  

案の定、彼女は右に曲がっていった。        

男子高校生 坊主 野球部っぽい。

確実に左。野球馬鹿!みたいなTシャツ着るような無垢な高校生は圧倒的に左。 多分彼は、3番センターとかだな。
なんと、彼は右に曲がった。

外した。
右ってことは、多分1番セカンドだったかぁ

束の間の帰省、ばあちゃんに貰った1万握りしめて東京に向かう電車に乗ってるよ。


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