見出し画像

Be Place 神社仏閣馴染んでシニア

知新なくとも温故で過ごす


●違和感のない聖地へ
「温故知新」とは故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知るという意味ですが、まあ、今更そんなに気負って孔子の教えに学ばなくても、シニアにとってはいままで見過ごしてきたものや場所などに触れて「ほほう、そういうことでしたか」と納得するだけで充分です。できれば、そこで知り得た由来や知識をこれ見よがしに頼まれもしないのに吹き散らしたりしなければ、とても穏やかで目指すべきナイスシニアとして好感が持たれますし、世の中にとっても世代の在り方としては無難な趣味の領域だと評価されて、たぶん向かうところ敵なしではないでしょうか。

●今更というなかれ
 たとえば神社仏閣です。老若男女、若い世代にもかなりの人気で神社仏閣巡りはブームとまで言われています。これまでも世代を問わずマニアの人たちは少なからず存在していたはずですが、昨今はSNSを中心としたネット情報によってひろく知られるようになり、ありがたいことにガイドブックやマナーの手ほどきなども充実しています。
 ひとそれぞれですが、実はこれらの場所がもっとも自然に違和感なく馴染むのはシニア世代ということに間違いはないでしょう。特別な目的や用件があって訪れるのでなく、それこそマニアックなブームや流行りの聖地巡礼でもなく、「おや、こんなところに」と、ちょっと寄ってみましたくらいのシニアのほうが不審者にもならずそれこそ風景に溶け込むはずです。

●散歩の途中は歴史のタイムトンネル
 最初から大上段に振り構えて有名なところを訪れたり計画を練ったりしないで近所を散策するくらいの方が面白いかもしれません。地域にもよりますが神社仏閣の規模さえ問わなければ必ず徒歩圏内にあるはずです。逆にそんなところこそ足を止めて、もしそこに由来などが記された案内などがあれば身近であればあるほどその発見を充分に楽しめます。またそれら建造物は間違いなくある程度の年月を経てきているので何も情報がなくとも存在理由を想像するだけでも「へえ、こんなところに」と思えます。まあ、逆にそれこそが実は昔からあったものなので自分たちのほうが新参者として周辺の景色を変えてきたのですけどね。

●点在する土地の記憶
 場所にもよりますが神社仏閣の空間そのものをシニアの居場所として日常的な指定席とするにはなかなか決めづらいこともあります。空間利用として散歩の途中のルーティーンのひとつにしたほうが現実的で、あえて居場所として考えるなら折々の「心の居場所」としてラインナップに加えるイメージでしょうか。もし、そのように位置づけることができるなら周辺には神社仏閣だけでなく「温故」を感じられるものがもっとあります。
 たとえば「お地蔵さん」、「道祖神」などちょっとした場所にさりげなくおかれた碑などは過去からの忘れられない記憶をとどめる痕跡ですね。住んでいる自治体によってはそれらの情報が詳しく記された案内マップもあったりするのでそれを活用して探索を始めるのもありです。
 
●心構え
 神社は神、仏閣は仏、それぞれに関わる場所ですからあまりいいかげんな気持ちでアプローチすべきではないと思いますが、逆に堅苦しく考えすぎるのもどうでしょうか。散見されるマナーや心構えはもっともなことも多く示唆してくれますが、シニアにとってはこれまでの社会経験で身に付いた常識の範囲内でしょうし、神には多くを望まず、仏には感謝し、日々のなかのひとときの休息の場所として寄らせてもらって良いような気がします。

●個人的な若き日の時効ネタ
 今から三十年ほど前、エンタテインメント関係の仕事ならではですが、あるテレビ局でお世話になった早朝生放送の番組が終了することになりその打ち上げパーティに参加した時のこと。宴会が最終の生放送後だったのでスタートが朝の八時。せっかくなので多少ビールなど飲みながら談笑して一時間ほどで自分の会社に出社しますと席を立ったもののまさに平日出勤ラッシュアワーの時間帯。アルコールの臭いが気になるのでタクシーで会社に向かった車中でどうも酔いが物足りないと気持ちに火がついてしまいました。しかし、今でこそ街によっては昼から呑める店も珍しくないのですが当時の東京青山辺りで朝の十時から酒が飲める店などあるはずもなく。
 会社がある神宮前の通りに近づいたときふとひらめいたのが「明治神宮」。仕事始めの初詣ぐらいしか境内に入ったことが無かったのですが、たしか参拝客のお神酒ということで社務所の近くの売店にビールや日本酒が置いてあるはずだと気が付いて。そのままタクシーで明治神宮の境内へ入り、目論見通り缶ビールを片手にベンチでまったり。平日の朝、広い境内の森に囲まれて小鳥の声を聞きながら酒を飲む、このアイデアはしばらく自画自賛ものでしたがよくよく考えるとあまり褒められたものではないでしょうね。まずは目的が参拝ありきでそのあとであればと・・・とはいえ、それでもほどほどに。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?