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Be Place 歳時記があるじゃないか

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ、らしい

●居場所探しの路頭に迷ったときは
 定年退職もしくはリタイアしたシニアの日常生活では個人の差はあっても、有り余る時間や思いのほか手持無沙汰で身の置き所に困ってしまうということが往々にしてあります。多少なりとも趣味があるとかアルバイトやボランティアのようにどこかへ行く用件があっても、ましてやひとまずゆっくりしよう、それからいろいろ考えようなんて悠長に構えていたひとなどは思いのほか早く「さて、どうしたものか」と不安な気持ちが頭をよぎりはじめたりします。
 「居場所探し」における場所というのはあきらかに具体的なスペースであったり、または何らかの役割を担ったりすることで社会の一端とつながりが持てる気持ちの置き所のことだったりしますが、どちらにしても探そうと思った瞬間にそれが意外にも手強いテーマでありそれこそ雲を掴むようなもののように感じたりしますね。
 そのようなとき、すでにそのようなプロセスを体験している諸先輩たちのアドバイスなりノウハウを参考にするのも良いのですが、自分自身のこれからのシニア人生を少なからず余裕をもって考えようとするタイプのひとはどこか天邪鬼なところがあるので、人の意見はなかなか素直に受け入れられず自分都合でやや曲解しがちなことも多く、しかも百歩譲って物は試しでチャレンジしてみてもそうそう事は簡単に運びませんから、やっぱりねと見切りをつけてしまいます。とはいえ問題は解決しないままなので何も変わらず日常はやってくる。さて、どうしたものか。
 
●今更ですが、せっかくなので
 否応なく日々はやってくる、何もない日常、考えようによっては本来こんな幸せなこともないはずです。ところがいままでとは違ったゆるやかな日常リズムと時間の経過そのものは、テーマを見失ったシニアにとっては逆に空虚な気持ちに追い打ちをかけるようにそれはそれで重たく感じたりします。
 今更何かに挑戦をするとか試してみるのは面倒だし、人のものまねも癪に障る、ましてや努力している雰囲気などみせたくない。まあ、いずれはヒントぐらいつかめるだろうと思って暮らしてもよいのですが、せっかくなら物は試しで風流に「歳時記」に沿って日々を過ごすというのはどうでしょうか。
 「歳時記」の多くは知恵の集積みたいなものなので、ひとまねを好まなくてもこればっかりは歴史の積み重ねですから先人の文化に敬意をもって倣ってみてもそれはそれで自然なことですね。逆にシニアだからこそ妙に馴染むことも多くてまわりからは好感を持たれることはあっても揶揄されることはまずありません。どうせ時間はあるのですから季節ごと、時節ごとに楽しむことができれば最低でも一年は過ごせるライフスタイルになります。
 
●歳時記で過ごしてみませんか
 「歳時記」は季節や日々の事象などを積み重ねてきたものですが、見方を変えてこれらをお手本にしてそこから今の生活を組み立てていくという楽しみ方です。端午の節句やお盆など誰もが知っているであろう一般的な風習や食に関する季節感、また、日にちごとに定められている時々の記念日など、なかには企業が販売促進ではじめたものが世の中に定着した「バレンタインデー」といった類もありますが、それらをふくめて日々流れていく日常をあらためて実感しながらその時々を過ごす羅針盤にしてみます。たとえば、

●過ごし方のヒントにする歳時記の一例
 【春】
 ・春分の日 → 散歩する 
 ・お彼岸 → ぼた餅、おはぎを食べる
 ・エイプリルフール → 罪のない嘘?を考える
 ・桜 → 花見をどうする?
 ・八十八夜 → たまには日本茶を
 ・端午の節句 → しょうぶ湯、柏餅、ちまきを楽しむ
 ・梅雨 → つつじ、アジサイをどこで見る?
 【秋】
 ・神無月(10月) → 留守番神(恵比寿様) → 七福神巡りに挑戦
 ・紅葉 → 紅葉狩りはどこがいい?
 ・新嘗祭(11/23) → 新米を楽しむ炊き方に取り組む
 ・収穫祭 → 週末レンタル農園リサーチする
 
 四季の春秋における一例だけでもヒントはたくさんあります。神話に由来するもの、花鳥風月、食べ物、季節感、地域の歴史、などなど。ひとつのキーワードから連想形式で想像していけば森羅万象さまざまなアイテムにたどり着く可能性があります。これらをどうするか、そこからは個人の自由ですがその日の過ごし方を決めるきっかけみたいなものとして活用しましょう。
 さて「歳時記」を知るにはどうするか。参考になるものはたくさんあると思いますが一年を通してまとめた本が一冊手元にあると便利です。あまり一生懸命にならず適当にめくるぐらいで暮らしてゆくだけでも、いままで気づかなかった世の中の歴史や先人の知恵に膝を打つこともしばしばです。それこそ季節の楽しさが味わえます、それも一年を通して。
 現実的な個人の「居場所探し」に悪戦苦闘して悩むより「歳時記」という教科書に身を委ね、たまたま自分が大きな歴史と自然環境という「場所」に居合わせているといった思いに浸るのも悪くないと思います。腰が重くチャレンジに億劫なシニアの居場所探し、ここはひとまず歴史に学びましょうか。地球規模での気候変動も心配されていますので、今のうちに。


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