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セキュリティトークン:待望のVC市場の進化、あるいはさらに別の流行語?

近年、初期段階の企業に投資する意思のあるVCの数の大幅な減少が見られます。複数のスタートアップが資金を調達し、世界に大影響を与える可能性が極めて低いままになっています。ベンチャーキャピタルがイノベーションを推進するという当初の目的を達成できなくなったのはなぜでしょうか。トークン化は本当に変化を起こすことができますか、それともセキュリティトークンは単なる流行語であり、ICOからの残り物ですか?

初期段階のスタートアップに資金を投入するVCが少なくなってきた

KPMGのVenture Pulseという調査によると、国際的なVC領域では過去数年間で初期段階の取引の数は急激に減少しています。

ベンチャーキャピタル会社が「大規模なユニコーン型ラウンドを促進する新しい後期段階のグロースエクイティというハイブリッドモデル」に注力して、より慎重に行動し、プライベート・エクイティに固執するのは目撃されています。2018年の取引件数の全般的な減少は、そのパターンを明らかに反映しています。

その傾向に加えて、ベンチャー企業の投資回収件数は2014年以来減少している一方です。Pitchbookによると、ベンチャー資金を受け取った新興企業が合併または買収されたり、IPOを行ったりする可能性は、年々微妙になっています。そもそも決して短くなかった (平均9年間) 投資回収期間のさらなる延長は、VCに安全を期すことを余儀なくさせ、業界に代替手段を求めさせます。

ベンチャーキャピタルの最大の悩みは流動性で、現代世界の時間的プレッシャーはそれを確保するのをますます困難にしています。デジタルパラダイムへの参入しつつある世界の中で、60年前のVCシステムは初期段階の企業を後押しするという本来の役割を果たすのに苦労しているようです。

手助けするブロックチェーン

ブロックチェーンは新たな資金調達の見通しをもたらしました。ICOヒステリーという(たぶん)間違った最初の一歩を踏み出したにもかかわらず、ブロックチェーン領域はその過程で成熟し、そして今新しいアイデアを思いつきました:「現実世界の資産をトークン化しよう」。

これが理にかなっている理由、そしてブロックチェーンが実際にVCに手を貸す理由は以下の通りです。

トークン化とは、本質的に、特定の資産(株式、債権、不動産、貴金属など)を表すスマート契約によって管理され、証券法に完全に準拠した「セキュリティ」トークンを発行することを意味します。これらは同じ証券だと主張できるかもしれませんが、ほんとうにそうですか?

トークン化は、直接費の削減、24時間365日のグローバル市場へのアクセス、自動化されたコンプライアンス手順、即時決済、部分的所有権、そして(じゃーん!)流動性の向上など、さまざまな機会を提供します。

投資家は、ICOがほとんど瞬時に収益を得る可能性をもたらしたから、ICOのトークンの概念が非常に気に入っていました。従来の投資にかけては、投資家が、資金を調達した企業が買収されるかIPOを通じて公開されるまで、さらに資金を配分することができません。投資回収は何年もかかるかもしれません。

もちろん、セキュリティトークンを発行しても、魔法のように流動性が得られるわけではありません。新しいタイプのトークン・オファリングに興奮している、多くの元ICOの信奉者はその事実を無視する傾向があります。しかし、革新的な(そして持続可能な)ビジネスアイデアを持つスタートアップにとって、STOはより多くの選択肢、そして追加柔軟性を与えます。

「綺麗で持続可能な未来を生きたいのであれば、才能のあるテクノロジー型プロジェクトのために、資金調達の民主化を進めて障壁を一掃する必要があります。ブロックチェーンインフラストラクチャは、伝統的なVC市場を新しいカテゴリーの新興企業や投資家にとってよりアクセスしやすく透明にし、必要な革新を後押しする潜在的な可能性を秘めています」とEvercityの取締役兼共同創業者であるAlexey Shadrinが言いました。

投資家と起業家のためのリスクの多様化

株主資本をトークン化することで、ベンチャーキャピタルだけに頼るのを避け、新興企業や中小企業が投資家層を拡大することができます。

伝統的に、初期段階のハイテクスタートアップへの個人投資家からの投資は、2万ドル以上となります。セキュリティトークンがすでにそれを変えていることが見られます。およそ数千ドル、数百ドルさえの投資が表れてきました。当然ながら、最低投資額は依然として規制当局に大きく依存しています。たとえば、昨年12月のNeufundは、土壇場での監査の結果で、「そのETO(エクイティトークンオファリング)の最低投資額を500ユーロから10万ユーロに引き上げることを余儀なくされました。しかし、将来的にはそのようなことが起きることは少なくなるでしょう。

より多くの人が投資ラウンドに参加できるようにすることで、多様化と価格発見が容易になり、技術革新が大幅に促進されます。実際には、これにより、真のインパクトを与える高品質な技術革新が可能になります。ICOのような急な爆上げや下落がなくて、仮想通貨取引所で即時のリターンを得る見込みがないので、非専門家の投資家でさえも十分な注意を払い、プロのディューデリジェンスを行って本当に価値のあるものに投資しなければないでしょう。

Vertaloの取締役であるDave Hendricksが述べたように、VCの支援を得て後、IPOのために十分に成長していないという「煉獄」で立ち往生している中小規模企業にとっては、株式のトークン化は不利な自社の買収を回避するのに役立ちます。また、初期段階の投資家は、回収して、さらなる投資のために資産を解放することができます。それに加えて、セキュリティトークンは業界からの迅速なフィードバックを得るための方法であり、VCにとって有用な手段となる可能性があります。

トークン化によってもたらされる追加の流動性は、リスクを軽減し、スタートアップをより魅力的な投資機会にします。一方、それはより多くの起業家に革新を創造し彼らの夢を達成する力を与えます。

したがって、トークン化は、従来のVCの投資ともクラウドセールともつかないものに進化している新しい資金調達方法を紹介しています。

「ブロックチェーン自体は流動性の問題を解決しません。 暗号資産への投資を好む投資家はそうします。彼らは投資ポートフォリオの中でより低い参入障壁と迅速で安全で透明な資産転換を選択するからです。市場参加者がコンセンサスを得るために同意するものを除き (例えば、共DAO機能の使用)、ブロックチェーンには制限や境界はありません」とロシア語のイーサリウム・コミュニティーの創業者、Parity TechnologiesのDevOpsであるDenis Soldatovがいいました。

トークン化された基金を生み出すことによって、トークン化はすでにベンチャーキャピタルシステムを変革する動きをしています。実は、それは投資家にとって望ましい流動性を与え、VCをよりリラックスさせ、初期段階のベンチャーへの投資を再び熱望させる可能性があります。

次の記事ではこの主題についてもう少し述べます。 乞うご期待!

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表紙画像出典:Deloitte.com



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