個人のやりたいことの集合体がビジョンの実現に繋がるように。READYFOR 執行役員 VPoE 伊藤 博志 氏がつくりたい世界
「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」をビジョンに、「想いの乗ったお金の流れを増やす」をミッションに掲げ、クラウドファンディングサービス等を運営するREADYFOR株式会社(以下、 READYFOR)。同社の執行役員VP of Engineering(以下、VPoE)として活躍する伊藤 博志 (Hiroshi Ito)氏のキャリア形成の軸に迫ります。
・・・
“ニューエリートをスタートアップへ誘うメディア” EVANGEをご覧の皆さん、こんにちは。フォースタートアップスのEVANGE編集チームです。
私たちが所属するfor Startups, Inc.では累計650名以上のCXOを含むハイレイヤーや経営幹部クラスのご支援を始めとして、多種多様なエリートをスタートアップへご支援した実績がございます。
EVANGEは、私たちがご支援させていただき、スタートアップで大活躍されている方に取材し、仕事の根源(軸と呼びます)をインタビューによって明らかにしていくメディアです
『誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる』READYFORの事業とは
-- まずは、READYFORの事業と伊藤さんの役割について教えていただけますか?
READYFORは、ビジョンである「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」を目指し、そのためのミッションとして「想いの乗ったお金の流れを増やす」を掲げています。
その中で私は、VPoEとしてエンジニアリングを軸にミッションにコミットし、メンバーがパフォーマンスを発揮するための開発体制づくりといった上流面から、現場の開発プロジェクトやエンジニアリング方針の意思決定といった実務面まで、エンジニアリングに付随することに幅広く携わっています。
-- エンジニア組織を率いていくリーダーとしてはCTOの町野さんがおられますが、お二人の役割はどのように棲み分けているのでしょうか?
主に開発における時間軸ですね。CTOの町野が数年後や10年後のREADYFORをどうしていくのかを考える役割とするならば、私はそれを実現するために、目の前でなすべきことを進めていくことが役割です。
サークル運営を通じて学んだ方向性を示すことの重要性
-- ここからキャリアを遡ってお伺いできればと思います。学生時代はどのように過ごされていたのでしょうか?
当時はサークル活動に没頭していました。自分たちで立ち上げたバンドサークルとバスケサークルを掛け持ちし、どちらも運営に入り込んでいましたが、振り返ると組織運営の基礎を学んだ時間だったなと思います。
新規で立ち上げたバンドサークルでは、運営側として、このサークルは本気で音楽をやるのか、仲良くすることが目的なのかといった方向性を示すことができず、様々な思いを持った人たちが集まる中で、場が混乱してしまう場面がありました。
一方でバスケサークルは、皆にとって居心地の良い場づくりができていました。バンドサークル同様に、バスケを本気でやりたい人もいれば、ただ飲みたい人など多様なメンバーがいたのですが、バスケサークルを立ち上げた先輩が、スタンスの違う人が集まる居場所を作るための方向性をうまく示していたことが大きかったです。
悩むこともありましたが、組織を運営する上で「この組織はこういうスタンスでやっていく」という方向性を示しながら取り組むことが重要なんだという学びを得ることができました。両サークルの運営を通じて学んだことは、いまの組織運営にも生きているかもしれません。
自分で開発したプロダクトのフィードバックが受けられる環境を求めてゴールドマン・サックスへ
-- 新卒でエンジニアをキャリアとして選ばれていますが、どういう背景でしたか?
大学では電気電子工学科にいたこともあり、元々プロダクトづくりがしたく、エンジニアの道を選びたいと考えていました。エンジニアの中でもハードウェアかソフトウェアかは少し迷ったのですが、研究でプログラミングをする機会が多かったこともあり、ソフトウェアの道を志すことにしました。
-- エンジニアになると決めた上で、ゴールドマン・サックスを選ばれた理由を教えてください。
就職活動では、自分が作ったプロダクトが使われることを目の当たりにでき、フィードバックを受けて作り直せる職場という軸で探していました。
私が就職活動をしていた当時、ソフトウェアエンジニアはSIerに入社する方が多かったのですが、SIerの特性上、システムをつくって納品したら終わりという形になりやすいこともあり、自分がやりたいことではありませんでした。かといって、私がイメージしていた動きができるGoogleやYahoo!といったweb系のエンジニア職は、当時はその道のプロレベルの人しか入ることは難しいと感じていました。
そんな中、たまたまゴールドマン・サックスが社内システムを全部自社で開発していることを耳にし、それまで社内システムは発想になかったのですが、作ったプロダクトをユーザーである社内の人に使ってもらってフィードバックを得ることができる。また、得意だった英語を活かして、いつか国際的なところで働いてみたい、という自分自身が抱いていたもう1つの希望とも合致することから、ゴールドマン・サックスを選びました。
エンジニアとビジネスサイドが一体となって動くゴールドマン・サックス
-- ゴールドマン・サックスではどのようなシステムを開発されていたのでしょうか?
金融商品をトレーディングした際の損益データを分析する”コントローラー”と呼ばれる人たちが使う会計アプリケーションを開発していました。東京には40人ほどのコントローラーがいて、複数の計算式を組み合わせる必要があり、とても複雑なシステムでした。
-- ファーストキャリアで非常に複雑なシステムに携わるというのは、いろんな苦労があったのではないでしょうか?
入社した直後は、そもそもユーザーとなるコントローラーの方々がどのような業務をしているかがわかりませんでした。そこで、システム開発の業務に着任してからすぐにコントローラーのマネージャーに直談判し、コントローラーの隣で1日業務体験をさせていただきました。
実際に業務している様子をみて「これはいま何をしているんですか?」と、使っている人たちの意図を聞くことによって、格段にシステムや機能の理解を深めることができたというのが、最初の数週間の記憶です。
-- 着任してすぐに、現場に足を運ぶアクションをされていたのはすごいですね。開発チーム自体はどのような体制だったのでしょうか?
エンジニアとビジネスサイドが、一緒になってシステムをつくっていく体制でした。普通はエンジニアとビジネスサイドは完全に分かれていることが多いですが、ゴールドマン・サックスでは、テクノロジー部として部門こそ分かれているものの、例えば経理部やコンプライアンス部に対応するエンジニアチームがいるようなイメージで、使う人と一緒にアプリケーションをつくる体制でした。
-- なかなかそのような体制をとっているチームは多くはないと思います。
そうですね。プロダクトづくりは、使う人と一緒につくっていくべきということが当たり前の文化をファーストキャリアで経験できたことは、今振り返ってとても良かったと思います。
日本のエンジニアは優秀なのにもったいないという想いからスタートアップへ
-- ゴールドマン・サックスで、エンジニアとして充実した時間を過ごされていたと思うのですが、そこからなぜスタートアップでのキャリアを志すようになったのでしょうか?
いくつかあるのですが、大きくは2つで、1つはゴールドマン・サックスで後輩だった川崎 禎紀さんがスタートアップであるウォンテッドリー株式会社に飛び込んだことです(現在は同社取締役CTO)。
彼はパイオニアというか、ゴールドマン・サックスのテクノロジー部門からスタートアップに飛び込んだ第一人者でした。それまで自分自身、スタートアップという選択肢自体が発想としてなかったのですが「そういう道もあるんだ」と気づくきっかけになりました。
-- もう1つはなんでしょう?
日本のエンジニアに、楽しく開発できる環境があることをもっと知ってもらいたいという想いです。
ゴールドマン・サックスでの活動の一環で、外部のエンジニアと技術交流をする機会があったのですが、日本企業で働くエンジニアと話してみると、みんなすごく優秀なのに、なんだか働く上では楽しくなさそうに見えました。
私はゴールドマン・サックスで、使う人と一緒にプロダクトづくりをする環境で開発することができていましたが、よくよく考えると、それはゴールドマン・サックスの先人たちが積み上げてきた文化を享受しているだけだったんです。それに気づいた時、自分がそのような楽しく開発できる、エンジニアが活躍できる環境をつくっていきたいと考えるようになり、スタートアップの世界に飛び込むことを決意しました。
READYFORを選んだ決め手は、ビジョン・ミッションへの共感と組織のやわらかさ
-- ゴールドマン・サックスのあとスタートアップ2社を挟み、READYFORに参画しています。当時どのような軸で次のチームを探されたのでしょうか?
「日本のエンジニアが活躍できる場をつくりたい」という想いが根底にあった上で、2つの軸がありました。1つがビジョン・ミッションに共感できるか。もう1つが開発組織のやわらかさです。
フォースタートアップスには次のチームを探すタイミングでコンタクトさせていただきましたが、ヒューマンキャピタリストの宮本 健太さん(現在はフォースタートアップスのアクセラレーション本部にてオープンイノベーション事業に従事)にREADYFORをご紹介いただいた時、READYFORのビジョン・ミッションにとても共感しました。
-- もう1つの組織の柔らかさという点について、もう少し詳しく教えていただけますか?
ビジョン・ミッションに共感した上で私が実現したかったことは「日本のエンジニアが活躍できるような場をつくりたい」ということ。それを実現していくためには、開発組織のやわらかさが必須だと考えていました。
開発組織のやわらかさという意味でいくと、経営陣の考え方はもちろん大事ですが、既存組織全体の雰囲気も重要です。いくら私が「組織をこういう形にしたい」と考えても、既存組織の雰囲気次第ではそれが難しいケースがあります。面接では、CEOの米良、CTOの町野、COOの樋浦と話したあとに、当時所属していたエンジニア全員と話をしました。
その結果、このチームなら日本のエンジニアを成長させる場づくりができそうだと感じたことが、入社の決め手になりました。
『乳化』はまさに目指す姿を表した言葉
-- READYFORに入社されたあとの取り組みについて教えていただけますでしょうか?
READYFOR入社後に非常に印象的だったのが『乳化』という言葉との出会いです。入社して2,3週間後の開発ミーティングで、CTOの町野が「エンジニアとビジネスサイドで相乗効果を発揮していくような形を目指したい」という意味合いで『乳化』という言葉を発しました。その言葉を聞いた瞬間「自分が目指したい姿はこれだ」と直感しました。
-- どういうことでしょうか?
ゴールドマン・サックスの経験から、エンジニアとビジネスサイドは、本来一緒になって事業成長のために動いていくべきだと考えていました。しかし、エンジニアとビジネスサイドはお互いの性質上、水と油と同じように放っておくと分離してしまうことが多い。これをなんとかできないかと昔から考えていました。
『乳化』というのは、本来混ざることがない水と油が混ざることで、分離状態では起こらなかった別の効果を発揮する様子を表しています。この言葉は、エンジニアとビジネスサイドが混ざることで新しい効果を発揮していくための共通認識として使えるのではないかと感じました。
その後の全社ミーティングで、READYFORの組織としてエンジニアとビジネスサイドが一緒になって動いていく『乳化』という状態を目指したい、と訴えたところ、「いいね!」という賛同が得られ、社内でも次第に『乳化』という言葉が浸透していきました。
-- 『乳化』がエンジニアとビジネスサイドの共通認識として浸透したことによる効果について教えてください。
これは1つの事例なのですが、READYFORではビジネスサイドのメンバーが、エンジニアが開発時に使う仕様書の役割を果たすワークフローモデリングツールを使うことができ、開発要望についてエンジニアと共通言語で会話することができます。
プロダクトの改善点を一番知っているのは現場のメンバーですが、こういうプロダクトをつくってほしいという要望をエンジニアに伝える際、共通言語がある方が断然会話がしやすい。そこで、ビジネスサイドのメンバーに便利なツールがあると私が書いて見せたところ、思った以上にそれが浸透しました。今ではカスタマーサクセス、キュレーター、経理、法務、事業企画など、エンジニア以外のほとんどの人たちがワークフローモデリングツールを使いこなせるようになりました。
エンジニア以外の人たちがツールを使いこなす状況を実現できたのも、日頃から「もっと乳化していくためにはどうあるべきか」という考えが浸透しているからだと思います。
『誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる』 ビジョンの実現に向けて
-- そんな乳化した組織であるREADYFORで、今後どのようなことを実現していきたいか教えてください。
1番はREADYFORに入社した理由であり、ビジョンでもある『誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる』を実現することです。
そのためのステップとしてREADYFORでは、そのエンジニアのやりたいことが開発ニーズに結びつくように、組織全体を設計することを心がけています。
人はやりたいことに取り組んでいる時が、最もパフォーマンスを発揮できると信じていますが、やりたいことは人それぞれで違います。その人がやれることを組織に合わせてもらう考え方もありますが、そうではなく、READYFORで働く各エンジニアがやりたいことの集合体が、READYFORのビジョンの実現に繋がったら最高ですね。
-- たしかに誰もがやりたいことをやった結果とビジョンがリンクするのが理想だと思います。最後に、ビジョンの実現に向けて、どんな方と一緒に働きたいかを教えてください。
READYFORのミッションビジョンに共感したうえで、自分のやりたいことが明確にある方と一緒に働きたいですね。
人それぞれ興味があるところは違うので、私はそれが「プロダクトの機能開発がしたい」ということでも「機能開発は興味ないが基盤を作りたい」でもいいと思うんです。やりたいことが明確であれば、READYFORで責任持ってその方がハマる場所を作れる体制がいまでは出来つつあるので、ぜひ「自分はこれがやりたいんだ」という意思を持った方に入ってきてもらいたいですね。
Twitter / Facebook
Produced by for Startups, Inc.