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地球のどこかで想う事-短編集Ⅰ-バリ島のマッサージセラピスト-ラマダンに祈りを
インドネシア バリ島
デンパサール空港から15分程度のクタビーチ
ショッピングモールやビーチ
お土産屋やタトゥースタジオ ピンキリの宿とナイトクラブ レストランが立ち並ぶ
the 東南アジアの繁華街だ。
そんな雰囲気にあまり刺激を感じなくなっていた頃"僕"は初めてバリ島に降り立った。
1人安宿を転々としながら、特に予定も決めずに街をふらつく。
数日間 朝昼夜 街を徘徊してももうこれ以上"何か"が得られる場所はなさそうだ。
クタビーチのエリアに飽き飽きしながらも、次の目的地決めも移動にも腰が重い。
そんなある日、通りで少し早い夕立ちに見舞われた。
近くの売店で雨宿りしていても一向に止む気配はない。
(うーん。まだお腹すいてないんだよなぁ。
食べたいモノもないし行きたいレストランもない。)
※調べれば多分たくさん魅力的なレストランはあるのだろうけど、調べることさえ面倒だ。
怠惰渦巻く雨の中、ぼんやりしていると売店のオジサンが土産物を勧めてくる。
既に雨宿りの際にココナッツジュースを申し訳程度に頼んでいた為、もうこれ以上お財布を開くつもりはなかった。
(さあ、配車アプリでタクシーを呼ぶかどこかお店に入るか、、)
と思った矢先、傘を持った何かのキャッチの青年が声をかけてくる。
『タクシー?
ガール?
ガンジャ?
アシッド?
ホテル?』
いわば何でも屋だ。
数日クタの通りを徘徊していてこの手のキャッチの粗悪さはわかっていたのと、いまはそれを面白がる気分でもない。
関わりたくなかった。
それにその時は特にどれも欲していなかった。
適当にあしらうが、雨だから足止め出来ると踏んだのか普段よりしつこい。
気怠い気分の中、降り注ぐ雨。
キャッチの安っぽい女物の香水が鼻に残る。
キャッチの青年と相合傘をさしながら、雨の中を歩く。
彼は変わらず"何か"を売ろうと必死だ。
(めんどくさいなあ。
次客引きしてきた店にもう入ろう)
と思った時、向かいのマッサージ屋さんから
『マッサージ!マッサージ!』
と大きな声が
(マッサージか。
時間もそれなりにかけれるし、食べたくもないモノ頼む必要もない。
それにどんよりした気分が雨と共に晴れ渡るのではないか?)
と思い大きな声にも負けないぐらい図体のでかいオバサンの店に入る事に。
中に入りメニューと値段を確認する。
しつこいキャッチはしばらく外に居た様だが、諦めた様子。
何もいらなかったしチップも払うつもりはなかった。
あのまま一緒にいたら、お互い気分が悪くなるだけだ。
店内を見るとロシア系のお姉さん2人がフットマッサージを受けていた。
それを見て、ピンク系のマッサージではない事に少し安心した。
ピンク系はマッサージのクォリティ低いし、今はそういう気分でもない。
店内は白人系ばかりだ。
(みんな雨宿りがてらリラックスしにきたのか。)
とのんびり考えながら椅子に座っていると、小柄な若い女性が担当する事に。
スマホ触りながら受けられる事に魅力を感じ、フットマッサージをしてもらう事に。
(あれ?あのデカいオバサンはやってくれないのか。
ゴリゴリ力強そうだから期待してたのにな。)
と思ったが、小柄な彼女も結構上手い。
綺麗に爪も切ってもらいフットマッサージは45分で終了。
代金は1200円ぐらいだった気がする。
しかし問題は雨だ。
マッサージを終えた後、なんだったら本降りになっている。
先程の図体デカいオバサンに
『ボディマッサージも受けろよ!半分の時間で半額でいいぞ!』
とゴリゴリ交渉してくる。
配車アプリでタクシーを呼ぶも、土砂降りの雨の為、なかなか捕まない。
ちょうど奥のボディマッサージルームから出て来た白人男性が、満面の笑みでおれにグッドサインを送ってくる。
(タクシーも捕まないし今日はのんびりするか。)
久々の1人旅で自由気ままな反面、メリハリがない時間を過ごしていたのかもしれない。
オバサンの提案を受け入れる。
あとでぬるぬるするからオイルマッサージはあんまり好きではないんだけど、値段も変わらないし勧められるがままオイルマッサージ45分のコース延長。
確かこれも1500円ぐらいだった。
ボディマッサージ用の奥の個室に入る。
先程と同じセラピストが担当する様だ。
しかし、開始10分ほどで違和感を感じる。
なんとなく背中を撫でられてるだけなのだ。笑
フットマッサージのクォリティからは考えられないぐらい施錠に集中していないのがわかる。
目を開けて彼女を見上げると
マッサージ中に放心して上を見上げているではないか。笑
どうしたのか聞くと、『今はラマダン-断食の時期だから夕方にはへとへとだよ。』
と。
何となく話を聞くと朝から夕方までが断食の時間で
その子は今日の朝起きられず、食べずに断食タイムに入ってしまったのだとか。
(なんか不憫だな、、)
とも思いつつ、僕はとある疑問が浮かんだ。
『ズルしてつまみ食いしてるヤツとかいないのか?』
そこで彼女に聞いてみる事に。
『いま個室の空間で他の人は居ない。しかもおれはムスリムではないから我関せず。
そして君はお腹が空いている。
もし食べ物がここにあったらつまみ食いとかしないの?』
と。
すると彼女は
『"人"ではなく"神"との約束だから
誰がみてるとかではなく私の心が神様と通じてるのよ。だから私の不正は私も神も許さないわ。』
と
それはおれには"深い信仰心"というよりは彼女の心の強さの様なモノを感じた。
他人の目ではなく、自分との約束。
果たしておれは自分との約束を忠実に守り、見返りを求めず犠牲を払い"約束"を遂行しているだろうか。
そんな事を考えさせられる彼女の言葉に尊敬の気持ちが浮かぶのと同時に、宗教 信仰心というモノの偏った情報ばかりが日本には溢れているなと感じた。
馴染みのないモノに対しての拒否反応は何処から来ているのだろうか。
そんな事を考えていると図体のデカいオバサンが部屋に突入して来た。
『ヘイ!ジャパニーズ
スペシャルマッサージはどうだ?
可愛い子居るよ!!』と。
(コイツはどこまでも営業してくるな、、笑)
と思いつつもそれこそが、一瞬一瞬を全力で生きている証拠。
このデンパサール クタのストリートで生き残る術なのかもしれない。
マッサージを終えると雨は上がっていた。
そしてラマダン開けの時間になりみんなが一斉に食事を始めている。
そろそろ、ここを立つ時なのかもしれない。
雨上がりのストリートはまたいつもの顔を覗かせている。
店を出たその足で、ウブド行きのバスチケットを取りに向かった。
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