43mmという焦点距離。
ライカがQ3の派生モデルとしてQ3 43というものを出した。
43mmのアポズミクロンがついたカメラで、価格から、50mmのアポズミを基準にすれば、レンズにオマケでボディがついてきた、とか、ボディにただですごいレンズがついてきた、などと形容されている。28mmのQ2、Q3には広角を苦手とする僕としてはあまり関心が持てなかったが、43mmという焦点距離はスナップをするにあたってはかなりよさげで、ちょっと気になってしまっている。
とはいえ、おいそれと買えるものでもない。
さて、そんななか、いつもの散歩に出かけようとした、その朝のことだ。天気があまりよろしくない。ちょっとすれば雨が降ってきそうだ。防塵防滴のないライカM型を持ち出すのは少し怖い。こういうときは防滴機能のあるX-T5とタムロンレンズの出番となるのだが、この日はちょっと違った。X-Pro2とフォクトレンダー28mm f1.5の組み合わせを試そうと思ったのだった。
28mmをAPS-Cのカメラに装着すると、フジフィルムの場合、42.8mm
くらいになる。たぶん。1.5倍じゃなくて、どうも1.53倍くらいになるらしい。すると、pro2と28mmのレンズの組み合わせは、カメラのスタイリングも合わせてまるでQ3 43と同じじゃあないか。オートフォーカスができないとか、ファインダーが光学だとか、いやそもそもフルサイズじゃないとか、いろいろあるけれど、43mmがどんな感覚で世界を切り取ってくれるかは、これでも十分に分かる。そうして実際、43mmはとてもよかった。
昨今、やたらと40mm付近のレンズやレンズ搭載のカメラが人気で、それに続くかのように、ライカQの派生が出てきた。使ってみてちょっと思うが、35mmは50mmが基準になっている自分にとっては少し広いのだ(50mmばかり使っていて、たまに35mmに替えると、うわあ…となっていたが、28mmを使い始めて35mmにすると、これまたいい塩梅だったりするので、結局なんでもかんでも「いい」としか言っていないのだけれど)。そこに40mmを使ってみると、ああ、なるほど、ほんとうに「頃合い感」がある。その場に立って、ぼんやりカメラを構えてみたら、なんだかいい画角だった、という感覚が強い。フルサイズの対角線の長さとほぼ同じという43mmだが、しかし、それがどう撮りやすさに関係しているのかはよく分かっていない。(aps-cの対角線は28mmほど。つまりレンズの実焦点距離ともほぼ同じということに。あれ、これ数学できる人には当たり前な話なヤツか)でも、ああ、なんだろう、このしっくり感は。となってしまったのだった。
閑話休題。このライカQ43のレンズの焦点距離、うまいなあ、と思うのである。いや、ライカQの28mmというのもうまい。
М型のブライトフレームは、現行は基本28-90 35-135 50-75の六つの焦点距離が出て来るようになっている。しかし28mmのフレームは実際はとても見づらく、ファインダーを覗いて、目を周囲にぐるりとしなくてはならない。また43mmについては、そもそもフレームが用意されていないわけで、そうかライカQが35mmにしなかった理由はそういうことだったのかなあ、と思うのだった。
43mmは実にスナップしやすい。おまけにアポズミクロンという名前まで冠している。もしかしたらけっこうな売れ行きになるんじゃないかな、と思う。おいそれと買えない価格だけれど、でもすごく柔軟性のある画角なのだ。
とはいえ、僕はこれ以上買えるはずもなく。せいぜい28mmのレンズをAPS-Cにつけて遊ぶしかない。だが、このNOKTON28mmf1.5というレンズ、頗るいい写りをしてくれる。ライカにつけたときもそうだったが、はっとさせられる絵をときどき吐きだしてくれる。ボケ具合もフルサイズで言うところのF2.5くらいにおさまるし、近づけないレンズではあるが、50センチは寄ることもできる。アポクロマートではないが写りもかなりいい。そうか、僕にとってのライカQ3 43はX-Pro2と28mmなんだな。そう思うことにしておく。