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■第1章 Rで始まるレイヴパーティー②

-3人の関係性-


上質なテクノが流れているフロア。

キャンピングチェアの前あたり、ヒロと2人で少し踊ってまた草を回して──
大自然の中、心と身体がほぐれていくのを感じる。

深呼吸とともにストレッチをする。

帰ってきた──
初めて訪れる場所なのに、そう感じた。

そして、そう思えるロケーションであればたいてい、
自分にとってグッドパーティーで終われることも知っている。

「湖ってどこなんだろね?」
「セカンドフロアの方にあるっぽいけど、あとで行ってみようぜー」
「そうすんべー」

だけど、この日僕らが湖を見ることはできなかった。
音が良すぎて、フロアに釘付けとなったから。


「シンちゃん! シンちゃん!」
特攻隊長ことパウが戻ってきた。

早くも汗だくで破顔している。

「友だちいっぱいできたからさ! 一緒に来てよ!」
「いや、まだいいよ。とりあえず一服どうぞ」
「あ、ありがとー!」

僕の渡したパイプで草を吸うパウ。

「ふふふ。楽しいね」
「ねー。山はサイコーだなぁ」
「ヒロくんもめっちゃいい人ですごい馴染んじゃったよ」
「アンタ、誰彼問わず仲良くなれるじゃん」
「それでも、特に」
「うん。なら良かった。そうなるってわかってた」


僕とヒロは15年以上の付き合いで、ずっとこういう遊びをしている。
そういう仲間が10人くらいいるんだけど、3年前のゴタゴタで遊びのペースが落ちた。

――仲間のうち、2人がパクられたんだ。

大麻取締法違反
麻薬及び向精神薬取締法違反
……これに売買が付いた。

そう、彼らはプッシャーをしていた。
さらにいうなら栽培も。

初犯だったけど執行猶予もつかず、3年ちょっと入ることとなった。


本当に近い距離にいたから、全員身の回りを整理した。
僕は、引越しをし、でも住所変更はしないという正解かどうかわからない行動を取る。


しばらくしてまたクラブへ行くようになったけど、前のようにみんなが集まらない。
完全に連絡を取らなくなったやつも1人いる。

そんな中、女友だち経由で紹介されたのがパウだった。
初めて会ったときからやけに調子が合い、クラブを出てからさらに遊んだ。
ららぽーとへ一緒に行き、写真で見せられたパウの息子へTシャツを買ってあげた。


それから、パウとその友だち2人と良くクラブへ行くようになった。
軽い旅行みたいなこともし、僕らの中に“なにもしていなくても気分がいい”状態が生まれた。


だから、誘ってみたんだ。
このレイブに。

(続く)


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