見出し画像

できないことは他人に任せる

 函館に引っ越してきてから5日間、毎日雪が降っている。本来なら函館は割と北海道の中では雪が少ないはずなのだが、今年は例外的だ。今週末も冷え込むらしく、特に日本海側で大雪が予想されている。

 私の生活圏でも、道は所々凍っている上に雪が積もっていて歩きづらい。タクシーも混雑していて、町中にいるタクシーはだいたい予約車か迎車になっている。タクシー会社に電話しても出払っている場合がけっこう多い。仕方ないので全部徒歩で済ませているので、ここ一週間くらいでかなり足腰が鍛えられた。夜もぐっすり眠れる。

 これほど雪が降るといろいろ支障が出ている。昨日乗ったタクシーの運転手は、その前日の夜中に雪中でスタックしたらしい。別のタクシーでも同じような話を聞いた。
 町中の道路でも、マンホールがあるところは雪が解けているのに周辺は雪が残り、しかも凍結しているのでほとんどコンクリートの段差と変わらないようなトラップがけっこうある。スタックまでいかなくとも、こういう段差の上を走ると車体に負担がかかるし、シャーシやバンパーがダメージを受ける。融雪剤も車体を錆びさせる。

 以前は函館に引っ越したらさすがに自家用車を買おうと思っていた。「仕事も生活も極力固定費とリスクを減らすべき」教の信徒というか開祖である私は、18歳のときに運転免許を取得して以来一度も運転したことがなかったし、車が欲しいとも思わなかった。だが函館に住むようになったらさすがに車が必要だろうということで、ペーパードライバー講習に行ったり、中古車を探したりして準備は進めていた。
 しかし引っ越して早速例年にない豪雪に直面した。これはおそらく「車を買うな」という天啓だろうと思っている。

 「買うな」というのは、「収支が合わない」という経済合理性から見た判断だ。自家用車を持っていると、上記のような車の保守に関わる費用は全部自分持ちだ。凍結した路面での事故のリスクも引き受けさせられる。タクシーやバス、市電で移動するのは一回一回の支払や時間を考えると自家用車よりも不利かもしれないが、そういうコストやリスクを業者が持ってくれている。タクシー業者や市電は、規模の経済が働くので個人よりもそうしたリスクに対する耐性が高い。ジュースを1本だけ買うのではなく1,000本買ったほうが単価は安くなるのと同じ原理で、クルマも保有するなら1台保有するよりも100台保有するほうが良い。そして個人・小規模事業者ではクルマを100台も保有できないので、タクシー会社とかにやってもらえばいい。シンプルな理屈だ。規模の経済を活かすのは既にある事業者に任せて、自分は規模を追求しないというのがToo Small To Failな考え方だ。できないことは他人にやってもらえばいい。

 もちろん仕事や住んでいる場所の都合でどうしても必要だ(自分がタクシー会社だとか)とか、クルマが好きで好きで、運転しないと死んでしまうというのであれば買えばよい。それはそれで自分自身の状況に応じた判断だ。だが、以上のような議論を参考に自分の仕事や生活に本当に自家用車が必要かどうか検証することなしに、なんとなく「そういうものだから」ということで自家用車を買うのはやめるべきだろう。私の場合は自家用車を買う予定だったが、それでも極力自分で運転する必要がないように市電沿いの家にしたし、自分の理想とするスタイルに沿った物件や買い物の方法を選択していっている。これは個人でも法人でもまったく同じ原理が当てはまる。通念に沿って漠然とやるのではなく、自分自身の理想やビジョンに沿った判断かどうかということを常に考える必要がある。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?