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岡潔「文章を書くことなしには、思索を進めることはできません」

文章を書くことなしには、思索を進めることはできません。書くから自分にもわかる。(中略)言葉で言いあらわすことなしには、人は長く思索できないのではないかと思います。

岡潔、小林秀雄『人間の建設』新潮社

『人間の建設』に記されている岡潔の言葉。よく言われることだが、考えることと書くことは一体。少しのことは書かなくても考えられるが、深く考える、思索を発展させようと思ったら書くことなしにはむずかしい。あの岡潔だってそうなのだ。

たとえば、数学の問題(簡単な計算問題でなく、いくつかのステップを踏んで解を導く問題)を解くのに、書かずに解くのはむずかしい。ある課題の解決法を考えるときも、何が原因になっているかをデータをさまざまな角度から見たり、加工したりして、その要因を探る。けっして問題を見ただけで、パッと答えが見えてくるものではない。

これは当たり前のことではあるのだけど、ついつい書くことをサボって考えようとしてしまう人もいるのではないか(私がそう)。思いつきの思考も大切ではあるが、そればかりでは思考は深まらない。岡潔の言葉でとくに大切なのは「人は長く思索できない」の「長く」の部分であると思う。

何事も書いた事柄をベースにして、次の思考のステップに移ることができる。梅棹忠夫の『知的生産の技術』で記されている「カードのつかいかた」もこの原理に基づいているのではないか。

カードの操作のなかで、いちばん重要なことは、くみかえ操作である。知識と知識とを、いろいろにくみかえてみる。あるいはならびかえてみる。そうするとしばしば、一見なんの関係もないようにみえるカードとカードのあいだに、おもいもかけぬ関連が存在することに気づくのである。

梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波新書)

書き出したものが目の前にあると、そこからさらに考えを発展させられる。悩んだときにとにかく書き出したほうがいいという理由のひとつもそれだろう。

だから考えるためには「どう書くか」というのも大事になる。この辺りは多くの優れた著述家がやり方を書いているのでそれらも参考にして考えていきたい。

私自身、原稿編集でどこか違和感あるけれど、それをうまく言葉にできないときは、とにかく思ったことを書き出すようにしている。構成の流れはどうなっているか? これによって読者はどういう体験を得られるのか? 焦点がぼやけていないか? そういった問いを立てつつ、現状を分析していく。

これを頭の中だけで考えようとすると、なかなか思考が進まず何時間も延々と悩むことになってしまうのだ。だからとにかく強引にでも書き出していったほうが思考が進むのではないかと思う。

このnoteは、考えるために書くのを実践する場としたい。テーマとしては、「自然と人」「社会」「生き方」などを考えているが、その時々に応じて若干変化するかもしれない。

▼今回はこちらの本を引用させていただきました。おもしろく学びがあり、新たな思考へと誘ってくれます。気になった方はぜひ手に取ってみてください。

Photo by Aaron Burden on Unsplash

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