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逆噴射小説大賞ピックアップ・セカンダリ(20210121)

怒涛の秋が終わり、怒涛の冬がきました。年も明けました。逆噴射小説大賞2020も優勝者が出たことで完結し、拙作が最終選考に残ったのは嬉しい限りです(コメントを頂けたので鋭意続きを書きますし、別なこともしたい)。

秋→冬ということで、なんか逆噴射の季節が秋っぽいので逆噴射2021も考える必要があるな……と思いましたが、ピックアップします。ちなみに皆さん小説大賞の続きは書いていますか? 私は壁にぶつかってエウレカが来ないので、努力一筋で「オラー!」しながらキーボードを叩いています。それではピックアップしましょう。

《動画と暴力の親和性》

サガタアマネ 【ミシンとハッチ】フルボッコ中継するよ!【初!生配信】

 今回の大賞ではチューバー系の作品がチラホラ観測されましたが、この作品も動画配信者をメインに据えた小説です。主人公はコンビを組んでいるミシンとハッチ(もしかしてみつばちハッチのオマージュ?)は式神の能力を片手に、暴徒をボコボコにしていきます。暴徒が現代科学なので、魔術は秘められた力であり秘密裏なものかもしれない……あるいは軍隊だと普通にやっているのかもしれない……その辺りは未知数です。設定がどう形になっているのか気になるところですが、暴力を娯楽番組として堂々と出していくスタイルが面白かったです。


《とにかく続きを書いてくれ》

丘機関銃 カッパのハロウィン

 カッパがハロウィンに行くお話です。一読した時は「まあこんなものかな……」と思っていたのですが、時間を置くとまた読みたくなるから不思議です。登場人物はカッパ、コガモ、狐、お母さん、人間の子供で、絵本のような親しみやすい絵柄で動きます。しかし続きがどうなるのかまるで予測がつきません。

ハロウィンの夜には何かが起きるのか? それとも起きないでカッパはハロウィンを楽しむのか? 人間とカッパが出会うと何が起きるのか? それとも第三者とか第三勢力が来てすごいことになるのか? 読まないうちから読者にあれこれ好奇心を持たせる作品はそう多くなく、この作品は少ないうちのひとつだと思いました。続き! 続き書いてください!


《役割分担》

ゴドー ロールandロール

 デスゲーム参加者による熾烈な頭脳戦です。デスゲームだと偶発的に主人公が放り込まれるケースが多いですが、見た所このゲームには望んで参加したようです。生き残れば巨額のマネーがもらえます。主人公からはゲームを突破して金持ちになってやるというパワーを感じるところが良かったです。

 役柄の設定も面白く、役割と実際の姿が異なる『ボイン』はこれからどう振る舞っていくのかが期待されます。ラストの転調はグッとオチをつけるので読者を引き寄せるつくりになっていますが、むしろオチがつきすぎていて今回の大賞では不利に働いたのかもしれません。というか役割交代の仕方、雑じゃないか……!?


《文字錬金》

ポテトマト 世界➡一凵乚口十介

アクションと設定づくりがとにかく強い。よくここまで分解して書けたな……と思いました。設定が緻密すぎて長さに関わらずこれを完結させるのは大変難しいように思えますが、逆に完結させられたとしたら、作者の実力は相当なものであるということが逆説的に証明されます。

『』という人物や「」という本が登場するなど、かなりアナーキーな作品です。設定としてはどうやら漢字圏を舞台にしていますが、アルファベット、ハングルなどの別言語が入ってきた場合、ルールとしてどう対応していくのか気になります。導入における世界観突破ができていると思うので、作品の展開に合わせて徐々に明らかにしていってほしいです。


《現代に出現したイデア》

里場 レデカトロモーフ神話構築考

 現代のインタビューから古代、ファンタジーのキャラクターに入っていく構造がスムーズで良いと思いました。インタビューの後にキャラが出揃うのでここからどう発展させるかが腕の見せ所だと思います。

 そもそもこのレデカトロモーフ、話に出てくるだけで、人間タイプか概念タイプかの生物であることも提示されていないので、作り込む自由度はかなり高いと思います。主人公って吸血鬼なのかしら?


《ストーリームーバー》

グエン さそりの星火は燎原の炎となりて

「心配ないわ。東京なんて、どの世界にもあるのよ」のセリフが名台詞だと思います。読み返してみると一人の作家の宇宙が表現されているのですが、その宇宙から独立している女性(たぶん主人公)をどう掘り下げるかが気になりました。物語に沿わない形で人物を作るのはかなり新しい試みであり、成功すればかなり新機軸だと思います。また宇宙に沿って作られたキャラクターは、その宇宙を出た場合どうやって存在していくのかも気になります。

 首都は確かにどこにでもあるものであり、それならばアメリカ、フランス、中国のような物語大国でも、これは当てはまる……としみじみ思いました。


《スペースレガシー》

魚田かろうじて 浜野谷権十郎の遺産

 舞台は遺産相続……と単純に思っていたら、父が宇宙とつながっていたので、必然的に宇宙を股にかけて戦うことになる主人公の話。どちらかというと、息子よりも父親のキャラ性が前面に押し出されているため、「父親はどういう奴なんだ?」「どうやってこんなにつながったんだ?」「彼の死因は?」と好奇心が呼び起こされます。

また、これからの登場人物には異母兄弟……宇宙人の兄貴とか妹とか、あるいは宇宙人母も登場すると思われますし、そことの絡み具合がどうなるかも気になります。しかしこれだけ父親の存在感が強いと、回想でもバンバン出てきそうです……


番外編:いま読んでいる本

最近は不意に「紙媒体で売ってる漫画雑誌コンプリートするか」と考え始めて、コミック百合姫、ヤングマガジンサード、楽園、ちゃお……そういった雑誌をコツコツ買っています。浅学だったので、漫画雑誌にも季刊誌があるのか! と感心してしまいました。私は漫画だとよく付箋を貼るので、基本的に物理書籍で購入しています(ラックが限界になったら電子に切り替えます)。

あと雑誌の良い点としては、映画館の如き誌面のデカさ、そして雑誌収録の別な作品も読める(というより金を出して買った分元を取りたいので読む)ことにも気づきました。実際にいままでノーマークだった新しい作品にも出会っています。最近では『ふたりエスケープ』や『spotted flower』に作品に出会えました。「ストーリーを知らないといきなり最新号だけ読んでも不便では?」と思ったこともありますが、真に面白い漫画は筋がわからなくてもとにかく面白い。伏線とか単語が理解できなくても惹きつける魅力があるので、心配は杞憂でした。

創作関係だと中島梓『小説道場』を読んでいます。もともとDHTLSラジオで紹介されていたので購入したところ、投稿者にガッと感情移入ができたので面白く読んでいます。いまは二巻まで読みましたが、四巻完結なので半分ほど読みました。全巻購入したので、終わりのほうをチラッと見て、「どんな連載もいずれ終わるのだな……」とも感じました。全巻読み終えたら積んである『無数の銃弾』とか『氷と炎の歌』とか読みたいと思います。『あなたのための物語』も読まないとな……。

《終わり》


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