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中小病院で伸び悩む心不全治療薬の処方率 原因は情報提供不足か

株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。

全3回シリーズでお届けする順天堂大学 末永先生のご講演内容の第3回です。

前回は、「適切に薬剤を投与すれば患者さんの予後が良くなる」ことが明らかであるにも関わらず、臨床の現場では必要な薬剤が十分に投与されていないという課題をお話しいただきました。

Part2の記事はこちら↓↓↓

今回のお話では、心不全患者の多くが中小病院で診療を受けていること、また、その中小病院において特に心不全治療薬の処方率が低いことが裏付けのデータとともに示されます。
そして、そのような状況の原因は、中小病院の医師への情報提供不足にあるのではないかと考察されています。

以下、末永先生を主語とした、話し言葉に近い形で記載しております。


①心不全患者の多くは中小病院を受診している

私がこれまで以下のようなさまざまな研究発表を行ってきた中で、国内・海外問わず、しばしば質問されることがあります。

それは、「これはどのような病院が参加してできたデータなのですか?」というものです。

基本的に、こういったアカデミックな調査に協力してくれるのは、大学病院や大規模な病院に限られます
なぜなら、調査予算がなくともマンパワーでそれに係るリソースをカバーできるのは、大病院しかないからです。

しかし、実際に心不全の患者さんが発生して移動して医療機関を受診するパターンを考えてみると、大学病院に飛び込みで来る割合は非常に少なく、全体の患者数のおよそ2割程度と思われます。

大学病院に勤める私のような医師にとって多いのは、開業医の先生から精査・治療の依頼が来るパターンです。

国は病診連携を推奨しているので、大学病院としても、治療した後に患者さんを開業医の先生へ返すという動きをしています。

大学病院と診療所というように、医療の役割が全く違うと、互いに紹介し合うという動きになりやすいのです。

ただ、実際その間にはもう一つ、中小病院と呼ばれる病院が多く存在しています。

中小病院の定義はだいたい200床以下と言われており、以下の統計によれば、中小病院は日本全体の病院数の7割を占めています。

逆に言うと、大病院や大学病院は全体のわずか3割しか占めていないということです。

講演の冒頭でお伝えしたように、心不全の患者さんは全国どこにでも本当にたくさんいます。そのため、仮に全ての患者さんが大病院に来てしまったら、どの病院も対応し切れなくなってしまいます。
ただ、実際にはそのようにはなっていません。

心不全は循環器疾患の中でもカテーテルなどと違い、手術を出来る人がいる必要はありません。薬物治療である程度症状を良くすることができます。そのため、多くの患者さんが中小病院にいると考えています。

②中小病院での心不全治療薬の処方率は非常に低い

そこで、ユカリアさんの中小病院に特化した電子カルテデータベースで、実際どんな風に処方がされているのかを調べていただきました。

こちらは、中小病院の4,000人程度の心不全患者さんのデータです。
心不全の病名はやや雑多に付く傾向があるので、心不全の診断が付いていて、且つループ利尿薬が処方されていることを条件に加えることで、心不全の確率が高い患者に絞っています。

β遮断薬は約50%に処方され、MRAは20%から30%弱くらいに処方されていることが分かります。

続いて、SGLT2阻害薬、ARNIの処方を見てみましょう。

赤線で表現されているように、SGLT2阻害薬では2020年の11月くらいにフォシーガが適応追加を取り、その後2021年11月くらいにはジャディアンスが適応追加を取っています。
2度の適応追加に合わせ、じわじわと処方の比率が上がってきてはいます。

しかし、SGLT2阻害薬は今やHFpEFを含む全ての心不全患者に投与可能になっています。それにも関わらず、僅か10%にしか投与されていないのです。

ARNIについては、2020年9月の発売開始直後はほとんど処方されず、2021年9月以降の長期処方解禁後になって急に増えていることが分かります。

ただそれでも実際には僅か10%程度です。

おそらく、中小病院では一応薬剤自体の認知はされているものの、それほど心不全に対して処方する薬という認識が十分にされていないのではないかと思います。

例えば、私の勤める順天堂大学の心不全外来では、既にSGLT2阻害薬は6割を超えるくらいの患者さんに処方されています。

同様に、ARNIはHFrEFの患者さんに限れば6~7割くらいの患者さんに入っています
こうして大学病院と比較すると、中小病院での処方率は明らかに低いことが分かります。

③総括

今回の講演では、心不全の薬物治療についてお話してきました。

薬自体は確実に進歩しています。色々な薬が出てきていて、10年前と比べると薬物治療の内容は変わり、患者さんの予後を改善しています。

今の課題は、その予後を良くする薬を、どうやって患者さんに届けていくのかということです。

おそらく、製薬企業の方は大病院・大学病院をターゲットにしていて、開業医の先生たちにもアプローチすることは多いと思います。

しかし、その間にある中小病院で主に心不全患者を診ているような一般内科の先生方には、あまり接点を持っていないのではないでしょうか。
そのために、中小病院へはアカデミアや製薬企業からの情報提供が届きづらくなっている可能性があると考えています。

ご清聴ありがとうございました。

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