見出し画像

心不全の国内患者数規模の推移、疾患の特徴、治療・処方の発展

こんにちは。株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。

5月30日に開催した弊社イベント、シンポジウム「心不全治療実態把握の最新アプローチ」の中で順天堂大学 医学部 循環器内科学講座 准教授の末永先生にご講演いただいた貴重なお話を、動画とともにお送りします。


講演の概要

本noteでは、先生のお話を以下の全3回に分けてお送りします。

  • Part1 日本における心不全患者の概況と治療方法の発展

  • Part2 心不全治療の臨床現場における処方の実態~理想と現実のギャップ~

  • Part3 中小病院で伸び悩む心不全治療薬の処方率 原因は情報提供不足か

今回の記事はPart1の内容となります。先生に弊社主催イベントでご講演いただいた内容を、なるべく先生の話し言葉に近い形で記載します。

①心不全に関するこれまでの臨床研究実績

順天堂大学の末永です。私はこれまで、数多くの多施設臨床研究を行ってきました。

中心としているテーマは心不全で、最初は2009年に単施設から始まりましたが、以降、前向き且つ多施設での研究を行うようになり、参加施設もどんどん増えてきているという状況です。

②心不全は非常に患者数の多い疾患

心不全は、患者数の多い疾患です。
都市部か郊外かといった「地域」や、大学病院か中小病院かといった「医療機関の施設規模」に関係なく、日本全国に多くの患者さんがいます。

こちらの棒グラフを見るとわかるように、患者さんの絶対数は、1950年ごろから継続的に増え続けており、今後も2040年くらいまで増えると言われています。

2020年以降、カーブが緩やかになっているように見えるのは、日本の総人口自体の伸びが鈍化しているためで、人口に対する心不全患者の割合は、高齢化を背景として増え続けています

こちらの表は、日本循環器学会の循環器疾患診療実態調査(JROAD)によるDPCデータを基にした調査結果です。
急性心筋梗塞の患者数は2012年から2016年にかけて21万人から26万人へ増加していることが分かります。
そして、心不全の患者は急性心筋梗塞の患者に比べておよそ3倍の数です。

なお、これらの数字は2017年以降も増え続けていることが、私が関わった別の調査で明らかになっています。

患者さんの年代について見てみましょう。こちらは、前向きの3つのレジストリ―データを統合し、約9,000人に関して解析したものです。
赤の折れ線グラフが、各年に心不全で入院した患者さんの平均年齢を表しており、継続的に高齢化が進んでいることがわかります。

③心不全の死亡率、再入院率は高い

同じような手法で行った調査によると、心不全で各年に入院した患者さんが1年以内に亡くなってしまう確率は、およそ20%となっています。

また、一旦回復しても、その後増悪して再入院してしまう確率が25%くらいあるのです。つまり、

  • 心不全で入院した患者さんの5人に一人は1年以内に亡くなってしまう

  • 4人に一人は良くなって退院してもまた悪化して病院に舞い戻ってしまう

ということです。
これは、他の疾患と比較すると、がんのステージ4に相当するような水準なのです。

一般的に、患者さんは「がん」と告知されると非常にショックを受けられる一方、「心不全」と言われてもそれほど重大に受け止めない傾向があります。それは、このようなデータがまだあまり認識されていないからだと思われます。

④処方薬の進化

ひと昔前まで、心不全は、赤色の枠で示されているように、β遮断薬とACE阻害薬もしくはARBで治療されていました。

しかし、直近では紺色の枠で示されているように、β遮断薬、ARNI、MRA、SGLT2阻害薬の4剤による治療が、明確に生命予後を改善すると言われています。

特にSGLT2阻害薬は、もともと2型糖尿病の治療薬として投与されていたものでしたが、それが心不全の発症を強く抑える効果があることが、ある時発見されました。

その後、DAPA-HF試験では、2型糖尿病ではない心不全患者に対しても、SGLT2阻害薬により約26%の相対リスク低下効果があることが示されたのです。

更に、EMPEROR-Reduced試験では、もう一種類のSGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンについても全く同じような効果が得られたとの結果が発表されました。

その結果、2021年改訂の心不全治療ガイドラインでは、SGLT2とARNIをしっかり使うようにと記載されるに至ったわけです。

こちらのスライドでも分かりますが、新しい2剤を含む4剤の治療は、明確に「死亡リスクを低下させる」ことが多くのデータで示されています

そのため、アカデミアからは、死亡リスクを低下させるこれらの薬をしっかり入れていく必要があるというメッセージを、臨床研究のエビデンスとともに強く打ち出しているのです。

ところが今、その治療方法が実際の現場では患者さんに十分に届いていないということが、大きな問題となっているのです。

これは、どういうことなのでしょうか・・・。

次回 Part2 臨床現場における処方の実態 ~理想と現実のギャップ~ へ続く


ユカリアでは、
独自の電子カルテデータベースと専門家(医療従事者・アカデミア)ネットワークを強みとした、製薬企業様のマーケティング・営業活動をご支援する調査・コンサルティングを行っています。
詳細や事例にご関心のある方は、以下までお気軽にお問合せください。

株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部
お問合せ窓口:pharma.biz@eucalia.jp


【製薬企業の方へお知らせ】

■ 無料の分析情報提供サービス Patient Visualizer(ペイシェントビジュアライザー)

薬剤のポジショニング・市場規模・患者像・競合品とのスイッチ状況 の把握に役立つ分析データやレポートなどの情報をご覧いただける情報提供サービスです。よろしければ、情報収集のため会員登録のうえご利用ください。

■製薬企業向け 営業活動支援サービス

弊社のご提供しているコンサルティングサービスの概要をまとめております。独自のアセットを活用し、製薬企業さまの営業活動のPDCAをトータルでサポートいたします。