医師が検査値以外に見ているもの
株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。
前回に続き、MRと医師のコミュニケーションに課題意識を持たれている、医師のA先生にお話をしていただきます。
先生の略歴を含む、前回(第1話)はこちら。
医師の判断は、データ“だけ”に頼っているのではない(心不全患者の症例から)
医師のAです。引き続き、第2話を始めたいと思います。
さっそく具体的な症例情報を元に、医師のリアルを理解するためのポイントを解説していきます。
なお、使用する症例情報は、ユカリアさんの保有している電子カルテデータベースから引用しています。
今回は、90代女性の心不全患者を取り上げます。
概要は以下のとおりです。
胸痛を主訴として来院
心筋梗塞による心不全であるが、超高齢のため保存的にフォローされ、2週間程度で退院
しかし、数日後に心不全の増悪で再入院し、約3週間後に退院
次の心不全増悪はそれから3週間後、これも2週間後で退院
もう1回の入退院を経て、転院
患者さんのカルテ記載を見ると、数回あるどの退院においても症状の改善が見られ、レントゲンの所見が良くなっていることから退院させていることが分かります。
では、血液検査はどうでしょうか?
この患者さんのBNPの動きを検査値グラフでプロットしてみました。
これをカルテ記載と照合してみます。
すると、BNPは最初の入院時には高値でしたが、保存的な治療によって反応良く低下していることが分かりました。
また、退院するとすぐに上昇していることも分かりました。
MR研修では、BNPなどの数値に関してけっこう詳しく教えられると思います。
なので、MRの方はこういうデータを見て、
「もっとBNPが低下してから退院させた方がよかったのではないか?」
と思うかもしれませんね。
しかし、現場でリアルに患者に対応している医師は、患者の生の訴えや、症状、理学的所見を大事にして判断を行っています。
入退院の基準も、必ずしもデータに拘らない場合があります。
これは医師にとっては、患者とのコミュニケーションの観点から重要なポイントでもあります。
こういったことは、普通のMR研修ではなかなか伝えられない、伝わりにくいポイントです。
医師とMRのコミュニケーションにおいてギャップ、違和感がが生まれるポイントの背景には、例えばこういった「考え方のズレ」があるのです。
この症例は、医師とMRのギャップを理解するための良い材料であるばかりでなく、客観的な議論ができるよい教材だと思います。
カルテはMRにとって最高の教材
カルテは医師の考えと経過を知るための、最高の材料です。
MRには、リアルなカルテデータから患者さんの経過を数値で追ったり、医師の考えを理解する機会を、もっともっと持ってもらいたいです。
今は匿名加工したカルテデータを提供する会社も出てきていますよね。
ユカリアさんのデータではテキスト情報も豊富に含まれているので、医師の辿った考え方がわかりやすいと思います。
MRや製薬企業のメンバーの数値に拘る姿勢は、絶対的に悪いことではありませんが、時に医師に「このMRさん、分かってないな・・・」という違和感や不快感を与えてしまうこともあります。
カルテをもとに学んでいただいて、その辺りの適切な感覚を掴んでいただけると、医師との対話がより円滑になっていくのではないでしょうか。
第2話はここまでです。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
第3話はこちら
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