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絵とワードの物語 『彩りを添えて』 


 よいしょ、と言いながら草取りから立ち上がったのは、もう何十年と連れ添った相手と同時だった。土を弄っていた軍手や作業着はすっかり茶色へと変色していた。それがすっかり似合うほどには、彼も彼女もしわくちゃになってしまったが、二人ともそれを嘆いたりはしない。
「顔に泥、ついてますよ」
 彼女がそう言って頬を指さすが、彼はそれには構う風もなく、腰に手を当てて背をぐうと伸ばした。
 目の前にぶら下がった紫色の実はつやつやと煌めいている。毎日手塩にかけて育てたそれらが夏を叫ぶこの時期が、彼は嫌いではなかった。
「今日はお茄子にしましょうねえ」
 呟いた彼女がひとつ、ふたつ、その実を収穫していく。畑の片隅に誂えられた水道に運んでいく少し腰の曲がった後ろ姿を追いかけてから、彼はしずかに草取りを再開する。
 夕飯にその少しくすんだ紫が、彼の大好きな味付けで並ぶものを想像しながら。


絵 はしもとあやね @enayacomic
文 ねきの@nekino_e



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