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〜ドハティー、ドハティー、ドハティー〜 21/12/28 《プレミアリーグ21-22 第20節》 サウサンプトン vs トッテナム レビュー

こんにちは。えつしです。


今回は、プレミアリーグ21-22第20節、サウサンプトントッテナムの試合をレビュー。
前節ウェストハムを破ったセインツを相手にスパーズはどのような戦いを見せたのか!?


1. スタメン

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・セインツ
フォースター
ヴァレリ-ベドナレ-クサリス
ウォーカー=ピータース-ディアロ-ウォード=プラウズ-ペロー
スチュアート・アームストロング(以下S・アームストロング)-アダム・アームストロング(以下A・アームストロング)
ロング

71’ ロング⇄ブロヤ
83’ A・アームストロング⇄レドモンド

セインツは、直近のウェストハム戦からリヴラメントロメウレドモンドエルユヌシウォルコットブロヤに代えてヴァレリディアロペローS・アームストロングA・アームストロングロングを起用した〔3-4-2-1〕


・スパーズ
ロリス
サンチェス-ダイアー-デイビス
エメルソン-デレ・アリ-ウィンクス-ホイビュア-レギロン
ケイン-ソン

46’ レギロン⇄ドハティー
62’ デレ・アリ⇄モウラ
77’ エメルソン⇄ヒル

スパーズは、直近のクリスタルパレス戦からタンガンガスキップモウラに代えてサンチェスウィンクスデレ・アリを起用した〔3-5-2〕

長期離脱中のロメロに加えてセセニョンベルフワインロ・チェルソが怪我の影響で欠場となりました。


2. 1st half

スパーズは、守備時はコンテが試合後の記者会見で言っていたようにデレ・アリ右IHに置いた〔5-3-2〕で、デレ・アリが中盤の位置からセインツ左CBのサリスに出ていくミドルプレスや、時にはソンも中盤ラインに加わって〔5-4-1〕でリトリートしていましたが、ボールを保持してビルドアップするときにはデレ・アリが少し高い位置を取って 〔3-4-2-1〕風の形に。


それに対してセインツは、普段リーグ戦で3バックにすることはほとんどない中、この試合ではスパーズのシステムに噛み合う形の〔3-4-2-1〕でプレッシング。
ミラーゲームのようになることを活かして、3CBには3トップホイビュアとウィンクスには2ボランチWBにはWBが縦スラで出ていき、高めの位置を取ってシャドーのようになるデレ・アリを含めたスパーズの前線3人には3CBがついていって潰しにいく形でハイプレスを仕掛けていきます。
各々が明確にマークする相手を定め、ボールを受けに降りていくスパーズの選手にも後ろから激しく当たりにいく強度の高いプレスセインツは試合の主導権を握っていきます。

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守備でのシステムの噛み合わせだけでなく、攻撃の部分でもセインツスパーズの痛いところをついてきました。
ゴールキック時やGKのフォースターへのバックパスがあった際は、シンプルに前線へロングボールを送るのですが、1トップのロングが少しサイドに流れて空中戦に強くないデイビスと競らせてきます。
これによってセインツはセカンドボールの回収率も高くなります。


このようにセインツは守備から試合の主導権を握り、デレ・アリが後ろ向きで受けたところをサリスが潰して奪ったところからスパーズ陣内の深い位置でスローインを得ます。そしてサリスのロングスローからニアでデレ・アリに当たったボールがPA内の空いたスペースに転がり、そこに入ってきたウォード=プラウズのアウトにかけたスーパーボレーで24分36秒に先制。


スパーズ側からすると、この場面はデレ・アリサリスに潰される前の段階でエメルソンからのパスを受けたダイアースペースのある左サイドではなく、エメルソンがパスを出した側でスペースが狭い右サイドを選択してしまったことと、FKで前に蹴り込むのではなく繋いでいくことを選んだのにデレ・アリエメルソンが素早くサンチェスからのパスコースを作ってあげられなかったことが問題であったと思います。


スパーズ対策として普段とは違うシステムで挑み、その準備が実を結ぶ形となって先制したセインツ


しかしこのインテンシティがどこまで持つのかと思っていたところ、試合は動きます。


自陣でレギロンのスローインを受けたケインがもらったFKからホイビュア→降りてきたデレ・アリの落とし→ウィンクスと繋ぎ、ウィンクスが左にトラップしてからウォード=プラウズのプレスが来ている方向とその矢印を確認して右に方向転換。これでウォード=プラウズを剥がし、降りたデレ・アリに食いついたサリスの裏を狙うソンにスルーパス。PA内でサリスソンを倒し、39分に2枚目イエローカードで退場。ここで得たPKをケインがしっかりと決め切り、40分28秒にスパーズが同点に追いつきました。


3. 2nd half

ハーフタイム、スパーズレギロンドハティーを交代。左WBドハティーを置きます。


〔4-4-1〕でリトリートして数的不利の状況をなんとか耐え凌ごうとするセインツに対し、スパーズは前節のクリスタルパレス戦同様、〔4-4-1〕ワントップ1人では守りきれない相手の4-4ブロックの前のフロントスペースウィンクスホイビュアが使い、シャドーの2人がセインツのSH-ボランチ、SB-CBの四角形の間に位置してライン間を使う形に。

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空いてくる2ボランチを使いながら右へ左へとサイドチェンジを繰り返し、ゴールを目指すスパーズでしたが、なかなか決定機を作ることができません。


52分8秒には先述した通りウィンクスがフロントスペースでフリーでボールを受けたところから、ヴァレリウォーカー=ピータースの間から斜めに抜け出したケインへのボールを出し、ケインのアウトサイドでのすばらしいトラップからのニアへのスムーズなシュートでゴール。と思いきやかなり際どいオフサイドで取り消しに。


66分8秒ウィンクスのクロスをフォースターがこぼし、オウンゴールしたシーンもドハティーのファールとなり認められませんでしたが、個人的にはこちらのゴールはドハティーフォースターのいる方向に向かってジャンプしているわけではなく、あくまでもボールに頭を当てようと上向きのベクトル強めのジャンプだったと思うので認められても良かったのではないかと考えています。


そういった不運もありましたが、数的有利の状況でスパーズセインツのゴールをこじ開けることができなかった理由は、CBの運びWBのポジショニングボールを繋いでゴールを目指す上で必要なトラップに問題がありました。


まずCBの運び。相手は10人の状態でスパーズのCBはどフリーでボールを受けることになるので、もっと運んでセインツSHハーフスペースのシャドーを切るか張ったWBを切るかの二択を迫ることをするべきであったと思います。マンチェスター・シティのルベン・ディアスなんかはあえて相手のSHに向かって運んで、食いついたところでサイドに張った選手にパスすることで相手のSBが出てこざるを得ない状況を作ったりするのが非常にうまいです。


今回で言うと、特にサンチェスが運べる場面で運ばないことによってセインツのSHを十分に引きつけることができず、エメルソンに出た際にすぐにSHがカバーにいくことができSBのペローを釣り出してシャドーがチャンネルランでその裏を狙うような攻撃がうまくできていませんでした。
そしてさらにそれの原因として挙げられるのがWBのポジショニングです。CBが運べていないことによってパスコースを作るために低い位置を取っているのもありますが、ライン間のデレ・アリを経由してエメルソンにボールが出るような場面でも少しポジショニングが低くA・アームストロングのプレスバックが間に合っていました。


WBのトラップについては左WBで起用されたドハティーにかなり問題がありました。
試合を見返してみて、ドハティーはトラップの際ほとんど右足で内向きにトラップしており、左サイドに置かれた弊害が見事に表れていました。
58分10秒のシーンもウォーカー=ピータースに正対するのを怖がって内側にトラップするからオーバーラップしてきたデイビスを使えませんし、64分9秒ソンがチャンネルランでウォーカー=ピータースの裏を狙ったシーンも外から流し込むボールを入れることができず、ホイビュアにボールをリターンした後のインナーラップもウォーカー=ピータース視野内からのランニングになるので対応は難しくありません。
ソンヴァレリと正対し、カットインすると見せかけて半身で対応していたヴァレリの身体の向きを真っ直ぐにしておいてスルーパスを出した69分1秒の決定機もドハティーの左足でのトラップが流れてアウトサイドでの苦し紛れのシュートに。
75分27秒には右足のトラップでさえボールが浮いてしまい、チャンネルランしたモウラに外からボールを流し込めないですし、内側にトラップしているにも関わらずモウラS・アームストロングを引きつけたことによってできたケインへのパスコースも見えていません。その直後の持ち味であるゴール前への斜めの走り込みからのシュートシーンも左足が使えないことによって無理な体勢での右足のシュートになりホームラン。


このように、ドハティーが左WB起用されることによってトラップの向きがどうしても内向きになり、ライン間でのプレーが得意ではないソンがチャンネルランで外に流れるのを全くと言っていい程活かせていませんでしたし、トラップの時点で自陣方向に向いてしまっているので、カットインから何かを生み出そうということではなく、単純に迫ってきているウォーカー=ピータースに正対する形でトラップするのが怖いことからバックパスを選択することが多くなってしまっているのだと思いました。


正対するどころか左足でオープンな形でトラップすることすらできていなかったドハティー左WBで起用した意図が個人的にはよくわかりませんでした。
セセニョンが怪我をしているのでそうせざるを得なかったのなら、せめて77分エメルソンに代えてヒルを投入した際にドハティー右WBにするべきだったのではないでしょうか。


後半もセインツは徹底してスパーズの左サイドにロングボールを送り、後半アディショナルタイムには、71分ロングに代わってトップに入ったブロヤデイビスと競り合い、かろうじてデイビスが触ったもののうまくクリアできず後ろに流れてダイアーがクリアしようとしたボールを掻っ攫ってサンチェスのブロックがなければ枠にいっていたであろうシュートも打たれました。


しかし、最後までスコアは動かず。1-1、前半に10人となったセインツが勝ち点をもぎ取る形となりました。


4. 総括、感想

まさにスパーズとしては勝ち点2を失った試合。前半の段階で数的有利の状況だったことを考えると、CL圏内に入るために勝ち点3が欲しかったところ。


初めはマンマーク気味に勇気を持ってハイプレスで仕掛け、10人になってからは〔4-4-1〕でリトリートし、SHも懸命にスパーズのWBに対応しに戻って守り切るという両極端の仕事をやってのけたセインツがすばらしかったのは間違いないです。
しかし、ただでさえ引いた相手を崩すために一つ一つのトラップやパス、細かいポジショニングがとても重要な中で、右足のトラップでさえ浮いてしまうドハティーを左サイドで使い、攻撃が停滞してしまっていたのはスパーズ側、コンテのミスと言ってもいいのではないかと思いました。


今後も相手がハイプレスに打って出てきたとき、逆に自陣に引いてブロックを作られてしまったときの対応が迫られる試合はありそうです。


5. おわりに

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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