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血も凍る

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怪談ツイキャス「禍話(まがばなし)」で放送された怖いお話を、色々な方が文章に“リライト”しています。それを独自の基準により勝手にまとめたものです。
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2021年3月の記事一覧

禍話リライト:もやがでる家

A君は大学で、資格取得を目指す真面目なサークルに入っていて、活動内容も資格の勉強を中心に行なっていた。 ある日サークル仲間のB君が浮かない顔をしていたので「どうしたの?」とたずねた。B君いわく、隣の家のおじさんが50歳ぐらいで亡くなったとのこと。気さくな人でB君にも話しかけてくれるような人だったらしく、それで落ち込んでいるのか…と思いきや、B君はこう続けた。 「半年くらい前から、おじさんが自分の家の玄関が写った写真を見せてくるようになったんだ」 その写真は夕方おじさんの

禍話リライト「かわわら」(怪談手帳より)

形五六歳の小児のごとく、遍身に毛ありて猿に似て眼するどし。常に浜辺へ出て相撲を取也。人を恐るゝことなし。され共間ちかくよれば水中に飛入也。時としては人にとりつきて、水中へ引き入レて其人を殺すことあり。河太郎と相撲を取たる人は、たとへ勝ても正気を失ひ大病をうくると云。(略)河太郎、豊後国に多し。其外九州の中所々に有。関東に多し。関東にては河童(かはわらは)と云也。 『日本山海名物図絵 三』より「豊後河太郎」 小学生の頃の、とある夏休みの話だ。 おばけ好きのAくんは、その夏、

禍話リライト『引っ越しの家』

仲間の皆で廃墟……っていうより古民家ぐらいのところだったらしいんですけど、行ったんですって。ただそこがね、不動産屋の『管理しています』って看板は出てるんだけど、連絡先とかは書いてなくて放置してある。その時点で気持ち悪いな、よくそんなとこ行ったな、って話なんですけど。 外見は普通の2階建ての民家にしか見えなくて、「なんか普通じゃんね?」とか言いながら中に入ったら、どうも奥の方に仏壇がまだ残ってるなっていうのがちらっと見えたと。 「仏壇残すって怖いぞ?」と。普通に考えたら他は残っ

禍話リライト「予告の家」

 妻子ある男性が不倫相手とともに姿を消した、ということがあった。残された家族は捜索願を出して行方を探したが、ひと月経っても居所がわからない。レンタカーを乗り捨てたようだという情報が入った程度だ。クレジットカードは止めている。現金もいずれ尽きるだろう。どっかで死んでるかもしれないわーなんて妻が笑い飛ばした、その翌日。男性と不倫相手は、男性宅の庭の木で首を吊った。  遺族はすぐに引っ越したそうだ。葬式は出さなかったそうだ。妻と子を捨て不倫相手と心中した男性は、無縁仏として葬られた

【怖い話】 ヨーヨーの家 【「禍話」リライト 51】

 最初から最後まで、よくわからない話。  小学生の頃、友達の家に泊まったという。  お金持ちの友達だった。豪邸、というほどではないのだが、結構な広さの家だったらしい。  お父さん、お母さん、妹さんと友達の4人家族と晩ごはんを食べる。おかずももちろん、お米もなんだか、自分の家で食べているものよりいい味がする。  ちょっと見たことのないお菓子をいただいたりする。これも上品な味わいで、実に美味しい。  いやぁ、お金持ちの家って……お金持ちだなぁ。いいなぁ。   子供ながらにそう思