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「クラブフィロソフィー」はなぜ必要か

うちの社長が栃木SCのクラブフィロソフィーについて、かなり深く突っ込んだnoteを書いていた。栃木SCに関わる方々にはぜひ読んでいただきたい。

クラブフィロソフィーというのは、クラブを貫く信念であり、最も重要な価値観である。栃木SCは「KEEP MOVING FORWARD(常に前に進み続ける)」というクラブフィロソフィーを掲げ、クラブ運営を行っている。

実を言うと私自身、このクラブの面接を受けて入社するときに、決め手になったのはこの「クラブフィロソフィー」の存在だった。もともとJリーグクラブのサポーターで、長らくクラブを経営の観点からウォッチしてきた立場から気になっていたのは、多くのJクラブが数年で経営者を交代してしまうことだった。その理由は親会社の方針だったり、成績不振の責任だったりいろいろだけれども、これがスポーツクラブの企業としての成長を阻害しているのではないか?とずっと考えていた。

社長が変わってしまうのはいろいろな事情で仕方がない場合もあるのだと思うし、実際にサッカークラブ経営に関わってみると、あまりにも社長の精神的肉体的負荷が大きいことがわかったので、長くやればいいというものでもないのだなというのはわかったのだが、それならばせめて一般企業でいうところの「ビジョン・ミッション・バリュー」みたいなものがしっかりと定まっている必要があるのではないかと思った。

最初の面接で、そんな話もしたと思う。応募前に栃木SCについていろいろ調べていて、自分が最も良いなと思ったのは、クラブのフィロソフィーがしっかり掲げられていたことだった。

実務の上でもフィロソフィーの意義は大きい

クラブのフィロソフィーが浸透していることは、実務の上でも大きなメリットがある。一番大きいのは、立場が上の人にも物申せることだ。

社長のnoteにもこんな一節があった。

以前、スタッフに「こうしようと思うんだけど、どう思う?」と尋ねた案件があるんですが、そのスタッフは反対だったんですよね。その時に言われたのが「それってクラブとして前に進んでます?」と。その視点で考えたら前進というより後退の話しを僕がしていたことに気づかされました。
クラブとしてそういう軸を持って仕事ができていることがすごく嬉しかったですね。

これがもし、フィロソフィーが理由ではなく「いや、社長の考えは間違ってますよ!」と言ったらどうなっていただろうか。もしかしたら社長は「自分の考えを否定された」と気分を害したかもしれない。

これは、社長とスタッフのやりとりに限らず、スタッフ同士のやりとりにも当てはまると思うのだが、意見が対立したときに、個人の「人格」と「意見」がごちゃごちゃになることがよくある。ここが切り分けられないと、お互いがお互いに対し悪感情を持ってしまったりする。

また、どれだけ上の人間がフラットに接していたとしても、上下関係というのはある。下から上に物申すのは、どんなポジションであっても躊躇されるものだ。

そんな「組織あるある」の問題をクリアにするのが、フィロソフィーなのだと思う。「フィロソフィーに合致しているかどうか」という明確な判断基準があれば、誰のどんな意見もフラットに受け入れられる。これは、社員が働く上での「心理的安全」を確保することにもつながると考えている。

フィロソフィーへの共感がより多くの支援を集める

ところで、先日とあるITスタートアップ企業とスポンサー契約を締結したのだが、そのときもこのクラブフィロソフィーが役に立った。

ありがたいことに栃木SCに興味を持ってくれて、一緒に何かやろうと声をかけていただく機会も増えているのだが、いつも言われるのが「なぜ栃木に(お金を出すの)?という説明がしづらい」というものだった。

栃木県内の企業や、社長が栃木県出身というのであれば「地域貢献」ということで説明がつくのだが、そうでない企業、たとえば社長がまったく栃木県に縁もゆかりもない東京のIT企業なんかだと、社長自身が乗り気でも他のメンバーに反対されたり、株主から反対されたりすることが結構あるのだ。

そんなときに私は、クラブフィロソフィーを持ち出して、こんな話をする。

「栃木SCは、いまはまだ二部リーグに所属する小さなクラブですが、KEEP MOVING FORWARDというクラブフィロソフィーを掲げ、少しずつですが前に進み続けています。これから大きく、強くなっていくクラブとともに、一緒に成長していきましょう!」と。

もちろんそれを口で言うだけでは説得力がないので、私たちはクラブ運営においても「従来のJクラブがあまりやらないようなことにいち早く取り組む」という”革新性”を意識している。

たとえば、ITベンチャーをサプライヤーに迎えて積極的に業務のDX(デジタルシフト)に取り組んだり、選手を巻き込んだSNSマーケティングを行ったり、「居酒屋栃木SC(クラブ主宰Zoom飲み会)」や「選手によるオンライングッズ販売(Zoom接客)」を実施したりといったことは、その施策そのものの集客効果よりも「栃木SC=革新的な取り組みにチャレンジするクラブ」というイメージ作りへの貢献が大きい。

もちろん、現実にはリソースの問題でやれることには限りはあるが、一応そんな意識はしている。それもこれも「KEEP MOVING FORWARD」というクラブフィロソフィーが存在するからこそできることである。

栃木SCに関わる全ての人にフィロソフィーが浸透したら

サッカーは勝ち負けのあるスポーツであり、それを商売のネタにしている以上「勝ち負け」「強い弱い」で批判されることは止むを得ないことだと思っている。

しかし、それだけが判断基準になると、本質的に大事なもの、長期的に強くなるために必要なものを見誤ってしまうのではないかとも思う。

願わくば、私はファン・サポーターを含むクラブに関わるすべての人にこのクラブフィロソフィーが浸透し、選手もスタッフもフロントもサポーターも、すべての人がこのフィロソフィーを体現しているかどうかで判断されるようになったら良いなと思っている。

「今日の試合は負けてしまったけど、前に進んでいたね」
「前節から改善点が見えたね」
「同じことばかり繰り返してまったく改善点が見えないね」

サッカーは非常に変数の多い不安定なスポーツだし、それに紐づくサッカービジネスも、異業種から来た私に言わせれば「不安定の極み」みたいな商売だ。予想とまったく違った結果になることはザラだし、うまくいかないことのほうが圧倒的に多い。

でも、KEEP MOVING FORWARDの精神でどんなときも前を向き、進み続けたら、1年後は確実に今日より良くなっている。5年後10年後には、考えられなかったような偉業を達成している。

そう信じて私たちは今日も業務に取り組んでいる。

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