おばあちゃんとボジョレーヌーヴォー
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おばあちゃんとボジョレーヌーヴォー

Etoile

「明日、30分だけでも顔を見にいくね。」
私はおばあちゃんに電話をした。

最近は水がお腹に4リットルも溜まってしまっていたよう。
体もすっかり細くなってしまったとのこと。
大好きだったご飯を食べることもままならないよう。

もしかしたら本当に本当にもう長くはないのかもしれない。
そう思った私は、おばあちゃんに会いに行くことにした。

電話を掛けた瞬間、「おばあちゃん、元気?」と尋ねてしまった私は、
はっと後悔をした。元気なわけはない、ごめんねおばあちゃん。

電話口のおばあちゃんは私が期待するほど、
私が会いに行くことに喜んではなかった。
「忙しいでしょ?東京から来るの時間もかかるし気を遣わんで。」と。

そんなおばあちゃんに、私は、「大丈夫!忙しくは全然ないよ!」と返したけれど、やっぱりおばあちゃんは電話を切る最後の最後まで元気がなかった。

そして、その後私の両親に、
「今は会えない。」とのこと連絡がいっていた。

おばあちゃんの今の気持ちを考えると心が痛む。
癌になって死が近づいている。

自分の人生振り返るととても十分なものだった、悔いはないとのこと。
でも、それでも死は怖いし、死へと近づいていくコントロールのできない自分に気持ちがついていかないことがあるはず。

体は動かないけれど、脳はしっかりとしているから、ヘルパーの方にお風呂に入れてもらうのもトイレを手伝ってもらうのも嫌なのだそう。
おばあちゃんはとてもおしゃれで凛としていて来客があると身支度をかんぺきにする人だ。家族でも嫌だけれど、他人にお風呂やトイレを手伝ってもらうことなんて心地悪いに決まっていると思う。

病気で弱っていっている姿を本来であれば孫に見せたくない。
もちろん会うことができるのであれば、それはもう嬉しいけれど、
今の状態では会いたくはないという気持ちの方が強い。
せっかく東京から来てくれるのに、ろくにおもてなしもできないし、
ちゃんと座って出迎えることすらできないかもしれない。
頑張ればワンピースを着てメイクをして座って出迎えられるかもしれないけれど、頑張れる自信がない、というか当日のその瞬間にならないと体調なんて分からない。

おばあちゃんの気持ちを考えて考えて、
でもおばあちゃんが感じていることのすべてを私が感じることは絶対にできなくて、おばあちゃんの辛さや苦しみを分かち合うこともできない。

おばあちゃんは私の幸せを、私が想像するよりも何倍も願っていてくれている。今のうちに恩返しがしたいけれど、何をしてあげられるだろうか。

ひとまずおばあちゃんに会いに行かないことにした。
無理をしない方がいい、会いたいなって思ってくれた時に会うことが絶対にいいのだから。

***

先日、おばあちゃんから1万円が送られてきた。
「これで、ボジョレーヌーヴォーを旦那さんと飲んでね」と。
おばあちゃんはワインはあまり好まないけれど、毎年仲の良い友人とボジョレーヌーヴォー解禁パーティーをしていて、その時間が楽しくて愛おしくて、私にも同じような経験をしてほしいなと思って送ってくれたらしい。

実は私も夫もお酒が苦手、かなり弱い。
私なんて1口2口でもう全身まっかっか。
でも、ボジョレーヌーヴォーパーティー夫とするね。
ノンアルコールを探して、もしかしたらボジョレーヌーヴォーでなくなってヌーヴォーにしてしまうかもしれないけれど、パーティーは絶対にするね。
その写真をおばあちゃんに送ろうかな。そしたらほっこりしてくれるかな。

今日はとっても良い天気で、家の窓から日の光がサンサンと照っていて、
部屋にいると心地が良い。すがすがしい日だなと私は思えるけれど、
おばあちゃんはきっとそんなふうに思えないのだと思う。

私が今おばあちゃんのためにできることは、少しでも私が元気でいること。家族を大切にすること。今ある幸せに感謝すること。ボジョレーヌーヴォーパーティーを夫と計画をして、あとはおじいちゃんの写真に、おばあちゃんのこと見ていてねって伝えること。

それくらいだけど、
そうやって思っているよ、おばあちゃん。


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Etoile

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Etoile
29歳 | 都内で夫と二人暮らし | 元外資系企業勤務 | 適応障害療養中 | 社会不安障害 | HSP | 人生一旦立ち止まり期