社交不安障害と私
社交不安障害とは?
精神疾患を専門とする世界最大の研究機関であるNIMH(National Institute of Mental Health)は、
“社交不安障害とは、見知らぬ人と関わったり他の人から精査され得る状況において持続的な恐怖を感じる病気のことで、その時に出る何かしらの身体症状が自身が恥ずかしい思いをすることに繋がると恐れている状態”
と定義しています。
一生のうちのどこかの時点で社交不安障害になる人は一般人口の13%に及ぶ病気で(水島P27)、決して珍しいものではないことがわかります。
30歳目前にしてはじめて「社交不安障害」と診断を受けた
2021年の夏、体が悲鳴をあげて心療内科へ行った日に、「社交不安障害」と診断をされました。その時に発症をしていて体に異変を及ぼしていた病気は適応障害だったので、「社交不安障害」は小学校高学年あたりから発症していたように思います。今まで自分が周りと違うと感じてはいたけれど、それをしっかりと病気であると認識したことはなかったのですが、診断を受けてちょっとホッとした自分もいました。
私の症状
場面:人前(5〜10名以上の前)で話しをする時
症状:声が震える、手足が震える、血の気がひく、頭が真っ白になる、心拍数が速くなりすぎて気持ちが悪い感じ
発症のきっかけ
特段これといったものは思い当たらないので、徐々に症状が現れていった感じです。ただ、小学校の高学年の時の授業参観の際にクラスの前に立って自分のことを5分程度話す機会があったのですが、その時に、声が震えて大変で、クラスメイトも参観者の親たちも「この子どうしたの?」と思っている感じがしてしまって、その場にいることも辛くて、早くどうにかこの場から立ち去りたいと思ったことがあります。自分でもびっくりして、かつ、衝撃的だったので今でも覚えているのだと思っています。
一般的には10代半ばで発症する人が多いようですね。
20歳の時に駆け込んだ心療内科
実は20歳の時に一度心療内科へ行ったことがあるのです。当時の私は大学生。大学の研究発表を30分ほどする必要があるとなった時、「30分も大勢の前で立っていられない。しかもプレゼンをするなんて100%無理!絶対に倒れる!」と思い、色々とネットで調べた結果、心療内科に相談へ行ったのです。
当時の私は「心療内科=やばい人たちが集まる場所」となんと偏見まみれな考えを持っていたので、自分で電話をして予約をして診察に行くこと自体とっても勇気のいることだったのです。
その心療内科の先生は女性だったのですが、極端なゆっくりした話し方と目をがっつりと見開いて私の話しを引き出そうとするのが若干怖くて、あとは待合室に待っていた患者さんが貧乏ゆすりが激しすぎたり、「わー、あー」と叫んでいたり、それが当時の私には「やはり、やばい場所に来てしまった」と不安で、それでもすがる思いで先生に薬を出してもらいました。
そこから大きな発表がある前は薬の服用をしていたのですが、なんとびっくり、身体症状が全く出なくて、プレゼンテーションも無事に終えることができたということがありました。
その時に社交不安障害だとは診断はされず、でも絶対何かしらの病気なんだろうな、と思ってはいたのですが、治療という治療はせず、ここまで生活をしてきました。
私のように、発表する時の不安感が強すぎたり、身体症状が出ることに辛さを覚えている方がいたら、頓服にはなりますが薬を服用することも一つ提案としてあります。薬が合えばですが、びっくりするほど身体症状が出なくなります。
「全般性」社交不安障害と「限局性」社交不安障害
社交不安障害は、「全般性」社交不安障害と、「限局性」社交不安障害があり、前者は人と関わる時のほとんどの状況において恐怖する状況であり、後者は、たとえば、人前で話すなどの限定的な特定の場面においてのみ恐怖を抱きます(水島P26)
私は、後者の限局性社交不安障害といえます。大人数の前で話しをする時(プレゼンテーション等)においてのみ、強い不安を感じ、身体症状も強く出ます。
社交不安障害に苦しむあなたへ
私は「限局性」の社交不安障害のため、日々の人間関係全般において苦しんでいる「全般性」の方とはまた違った苦しみだと思っています。それでも、自分の「人と関わることに嫌悪感を抱くこと」や「人前で発表をする時に不安感でいっぱいになること」は病気であって、自分自身の性格ではないことを認識してほしいです。
みんなが同じことをしないといけない教育に物申したい
先述の通りですが、私は昔から発表することが極端に嫌でした。身体症状が出てしまうからで、そのことが自分のパフォーマンスを発揮できないもどかしさでいっぱいになるのと、症状が極端に出た時の周りからの目が怖いと思っていたのです。でも、クラス内で自分だけ発表を避けると先生から注意を受けます。受け入れられず、発表をする日に仮病を使ったものなら、問題児扱いをされてしまうこともありますし、仮病を使って嫌なことから逃げたという罪悪感を小さい頃から抱いてしまうこともあります。
今は若干変化しているかもしれませんが、周りと同じようにしないといけないというのがベースにある教育方針が基本だからですよね。
今振り返ると、周りと同じ出なくてもいいのにな、とどうしても思ってしまいます。逃げてもいいのに、避けてもいいのに、それを許されない教育って社会って当人には辛いよなーと。
なかなか周囲に理解してもらえない
周囲に相談をしても、「私だって緊張するよー、みんなそうだと思うよ!」と励まされ、その度に「私は気が小さいのかな」と周囲との激しすぎるギャップを自分の気質のせいだと思い込んでしまっていました。
「場数を踏めば緊張しなくなるよ」と言われすぎるゆえ、その言葉を自分にも言い聞かせて、「いつか緊張しなくなる」と思うようにしていたのですよね。でも、結局全然治らなかったです。
社交不安障害だったから職業もそこを基準に精査していた私
就職活動をしていた大学生の頃、私はある企業の企画職に強い興味を抱きました。説明会に行き、実際その会社でその仕事をしていた先輩に話しを聞きに行ったところ、かなりの頻度で企画のプレゼンを社内でしているとのことを聞きました。
もちろん、その話しを聞いた瞬間「無理だ」と思ってしまった私。そこから、人前でプレゼンがないような職種に絞って就職活動を始めることとなりました。(社会人でポジションが変わるにつれて結局は人前で話す機会が多くなり、それがかなりのストレスになっていたのですが、入口としては人前で話すことがないようにと自分でコントロールをしていました)
最後に
自分が悪いのではなく、それは病気であって、治療をしないと治らないものだと自分で認めて治療方法を考えていく必要があると考えています。そういった状況を避けて生活できてその生活が心地よいのであれば、避けること自体に罪悪感を抱かなくとも良いと思います。
兎にも角にも、自分の状態は自分ではなく病気のせいだとしっかりと受け止めてあげてください。そして、生活する上で違和感を覚えている方がいらしたら、ぜひ怖がらずに専門医のもとに相談をしてほしいと思っています。
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参考文献:
・社交不安障害 自分の中の「社会恐怖」とどう向き合うか
・National Institute of Mental Health
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