見出し画像

私がシロみたいなんじゃなくて、シロが私みたいなのよ

「Etoileってシロみたい。」
最近夫が私に言った言葉だ。

シロは夫が実家で飼っている犬のこと。

白くてちっさくて目がまん丸で可愛いチワワ。
基本的には大人しくて、でもやんちゃで皆から愛されている。
彼がシロのもとに行くと、大抵シロは尻尾を振って目をキラキラさせて彼の手をペロペロと舐めてくる。

***

ことの発端は、夫が夫の妹のことを、「あいつは凄いな。」と呟いていたから。彼は彼の妹のことを非常に尊敬している。

たしかに、同性の私からしても、義理の妹は凄い。仕事もバリバリとやっていて、私より6つくらい年下だけど多分私以上に稼いでいて、話が上手で、知識が豊富で、愛嬌があって、佇まいも凛々しくて、物おじせずに発言ができて、若いけれどその辺の男の人を打ち負かすような強さがある。

私が私自身には無いと思っているもの、しかも欲しいと思う感性や知能や性格をいくつも持ち合わせていて、要するに、私は義理の妹を羨ましく思っているのだ。

彼が彼の妹を褒めた時、私は間違いなく彼女に嫉妬をしたのであろう。
そして、すかさず、私は夫に「私のことは凄いと思う?尊敬している?」と聞いた。

夫は、「うーん、尊敬か。一緒に住んでもう長いし、尊敬しているって感情とはちょっと違うのかもしれないな。妹も一緒に住んでいる時は尊敬するなんて感じなかったんだよね。Etoileはね、シロみたいだなって思うよ。」

「何それ、というか、シロは昨年あなたの家に来たばかりでしょ?
私がシロみたいなんじゃなくて、シロが私みたいってことね。私の方が先に生まれたわけだし。」

と、私はよく分からない返しをした。

この会話が何となく心に引っかかっていることに気付いた私は、
数日後に夫にプチ喧嘩をふっかけた。私はどっかが鈍くて、気に障ったことがいつもかなり時間差で来るタイプの人間なのでしょうがない。

「数日前、私をシロみたいって言ってたけどどういうことさ。私もあなたに尊敬されたいのに、あー悲しい。」と拗ねてみた。すると夫は、「Etoileも色々と頑張っている姿を見ていると、俺も頑張らないとって思うよ?仕事だってかなり頑張っていたじゃない。あと、シロみたいって言ったのは愛らしいってことね。癒されるし可愛いしみんなから好かれているし。」

「仕事を頑張ってたって言ったけど、今は働いていないし頑張ってもないし。」と執拗に拗ねてみる私に、夫は、「いや、その他のことだって色々頑張っているでしょ。」と言った。

いや、別にいいのだ。多分、バリバリと働く格好いい女性に憧れて、自分が思った以上に良くも悪くも仕事に没頭できていた私に、私は多少酔っていたし結構誇りに思っていた。両親や友人からも、「Etoileがそんなに仕事に打ち込むタイプだと思ってなかったよ。職場で良い人を早々に見つけて結婚をして家庭を支えますって感じだと思ってた。」と言われることがなんだか嬉しかった。

夫から見て私は可愛くて癒されて、そんな奥さん最高ではないかとも思える。でも、私は夫に尊敬して欲しいし凄いなって思ってほしいし褒めて欲しいし、切磋琢磨し合える夫婦でいたいのだ。

人に褒めて欲しいから、人に凄いと思ってほしいから何かを頑張るっていうのは世間では正解なことではないはずだ。でも、私は夫に凄いと思ってもらいたいし尊敬もして欲しい。そのために、早く元気になって、自分の好きなことに熱中して、仕事も自分が誇れるものを見つけて、頑張りたいなと思った。

夫に「Etoileはシロみたい。シロみたいだけど、とっても尊敬できて、凄いと思う。」と言わせたいと思ったりする。

あ、あと、もう一度訂正するけど、私がシロみたいなんじゃなくて、シロが私みたいってことね。

おわり


サポートいただきまことにありがとうございます。 読者の方の日常を少しでも彩ることができるよう、精進して参ります。 引き続き、よろしくお願いします🍀