「書く」って、どんなこと? 高橋源一郎
《人というものが「書く」ということをするとき、「そこ」では、ほんとうはなにが起こっているのかを。
「そこ」で起こっている、目もくらむほど素晴らしいことを。
それを知ったとき、「書く」ことは、みなさんにとって,それまでとはちがうなにかになるはずです。》
以上、P9から引用。
この前振りがあって,ワクワクしながら読み進めました。
途中色々と迂回していくような、でも実は全部繋がっている文章構成の仕方は,高橋源一郎さんの得意技だ。
自民党の総裁選に立候補している石破さんの周りくどい語りは「話、長げえんだよ、要点だけ言えよ!」とテレビ画面にツッコミを入れている私でも、高橋源一郎さんなら許せてしまう。その回りくどさにの中にある、やさしさとおもいやり、プラス絶妙なリズム感が心地よく、1センテンスを読み終わるごとに、「うんうん,なるほどなるほど」と頷いてしまいます。
この本は、書くことで一体何が起きているかを、緻密な文体でとても丁寧にわかりやすく書かれた、書くことの奇跡?書くことの効能?書くことの真実?書くことの真髄?などに迫るとても貴重な「書く論」です。
今こうして、この本を読み終わってこれを書いていますが、読む前と書くことに対する意識が激変しているように感じます。
もともと書くことは好きな私でしたが,これでますますのめり込みそうです。
おそらく一生書き続けていくことでしょう。(ネット上にアップするかどうかは微妙ですが)
つい先日、『日日是好日』からも、とても新鮮な刺激をもらったばかりでした。この本を読んだだけでも、充分日常が愉しくなりそうでした。加えてこの「書く」本を読んでしまった。書くことの秘密を知ってしまった。
『日日是好日』の感性で、毎日を過ごし、そこから得たものを、この「書く」本のような姿勢で書いていく。これはもうハイスペックな受信機と発信機を手に入れたようなものです。(ちょっと言い過ぎか)(笑)
これで、たとえ平凡な毎日を過ごすことになろうとも、死ぬまで退屈することなく生きていける確信が持ててきました。
やっぱり一つのことに拘り続けた人はすごいところに到達するんですね。
「書くこと」に拘り続けた小説家が切り開いた世界を覗けた幸運に歓喜しています。
書くことに、ご興味がある方もない方も、一読の価値はあると思います。
きっと、人生を充実させる一助となることでしょう。