大企業がソーシャルビジネスやNPOから学べること(2023年3月24日号)
こんにちは、番野です。
近年、大企業の社員向けに「ソーシャルビジネスやNPOに学ぶ」研修を依頼されることが多く、私自身もここ5年で数十回担当しています。
「このテーマで5月に2時間話してほしい」という依頼が先日社内からあったこともあり、この機会に一度言語化してみようと思います。
1)思いをもって仕事に向き合うやりがい・楽しさ
最初からベタで恐縮ですが、感想として最も多いのがこちら。「難しい課題にもイキイキと楽しそうに取り組んでいる」「何のために仕事をするのか、初心にかえることができた」といったコメントが寄せられます。特に大企業の100名規模のオンライン講演で顕著です。
単に客席から見て感動したというだけではなく、いまの仕事への向き合い方を見直したいと感じてくださっているようです。
この感想だけで参加者は満足という時もあります。しかし、私は全く満足していません。あと3つ挙げたいと思います。
2)とことん課題・ニーズを知り抜く
では、現場で働く皆さんの思いは何か。それは理想とする社会の実現です。そのため必要なことは、まずは課題とその構造を知り抜くこと。当事者が抱えるニーズや悩みといったミクロレベルの理解も、人口動態や社会の価値観の変化、他のプレイヤーや政策の動向などマクロレベルの理解も、適切な解決策の提案には不可欠です。
実は、新規事業の教科書の多くにも「課題の解像度が大切」と書いてあるのですが、それを一番体現しているのがソーシャルビジネスやNPOだったりします。
中でも優れたリーダーは、とにかく解像度が高い。調査会社やコンサルティング会社に高いお金を払っても得られないような情報や知恵を持っていることも。優れたアイデアは、実はそこから生まれています。
3)知恵を絞り、リソースの制約を越えて新しい解決策を生み出す
一方で、社会課題の多くは、市場原理では解決できない問題です。顧客から対価を得ることも、一般の資本市場から資金を調達することも難しい。
ではどうするか。優れたリーダーはあきらめずに知恵を絞ります。どうしても何とかしたいので、寝ても覚めても考えています。人にも相談します。工夫や試行錯誤もたくさんします。その結果、これまでになかった解決策にたどり着くという、泥臭いプロセスを踏んでいます。
4)目的をテコに仲間を集める
流行り言葉風にいえば「パーパス経営」です。NPOやソーシャルビジネスに限らず、大企業であっても、金銭的報酬ではなく、社会的意義や自己成長を重視して仕事を選ぶ層が増えているのはご存知の通りです(同時に、安定志向を強めている層も増え、二極化しているようですが)。
この話は社外との連携・協働にも当てはまります。ある地方の現場を視察した大企業の社員が「行政と民間が『どう地域の課題を解決するか』を一緒に考えていることに驚いた。うちはいつも『値段』の話しかしていないのに…」と感想を漏らしたことをいまでも覚えています。
その方は、次に行政の担当者と会うときに、『値段』ではなく『地域の課題とその解決』について話す準備をして臨んだとのこと。結果、売り手と買い手ではなく、目的を共有する仲間として話ができたそうです。何より、仕事が楽しくなったとおっしゃっていました。
学びあい、協働する時代へ
私がこの仕事を始めた20年前は、「ソーシャルビジネスやNPOは企業の経営から学べることが多い」と言われていました。そして現在、逆の流れが生まれています。お互いから良いところを学ぶ、そんな機会を引き続き増やしていきたいと思います。そうした相互理解の先に、良い協働が生まれていくと思っています。
この原稿に対する読者の皆様からのフィードバック、そして協働提案もお待ちしております!
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