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実践者から学ぶマインドフルネスとコンパッション困難な状況に目を背けずに望む結果を出すには?

こんにちは。ソーシャルイノベーション事業部の本木裕子です。

必要なのに目を背けたいことがあるときや、難しい決断が必要なとき、自分を奮い立たせたり、逃げたい気持ちをこらえたりという経験が、誰しもあるのではないでしょうか。
困難な場面で、どんなことがあると、及び腰ではなく、勇気とともに望むことを叶えるための行動をとることができるのか。
7月に開催した、マインドフルネスとコンパッションの特別セッションでは、その問いに応えるヒントがありました。今日はそのダイジェストをお届けします。

講師に迎えたのは、マインドフルネスとコンパッションの体現者・研究者であり、その功績によりイギリス王室より大英帝国勲章を受勲したヴィディヤマラ・バーチ氏(写真右)と、米国でMBAやビジネスエクゼクティブ向けに教えているジェレミー・ハンター氏(写真左)です。
セッションは、ヴィディヤマラさんの知見をジェレミーさんが引き出しながら進みました。

人はつながりの中で生きている。

セッションのテーマ、「コンパッション」とは何でしょうか。
ダライ・ラマは、「自分や他者の苦しみに対する感性。それを和らげようとする深いコミットメントを伴っていること」と言いました。
マインドフルであること、自分の中で何が起きているかを知覚することを越えて、つながりを感じることに踏み出していく先にあります。

「人は一人では生きていけない」とよく言われますが、それを普段どれだけ実感していますか?講師のヴィディヤマラさんはそう問いかけます。
オンラインでの会議中、相手が画面の四角の中にいる「画」ではなく、そこにいる自分と同じような人間として、一人ひとりを感じられているか。電車で居合わせた周りの人や、道行く人と、空間を共有していることを感じられるか。

目を見てじっくり話を聴けていない、用事をこなすためだけに人に接してしまうときには、このモニュメントのように、自分も他人も顔のない、同じ形の人形のように思えることがあるかもしれません。

離れていて、バラバラで、別々に生きているかのようです。

しかし、「人間は、次の作品のように、常に周りの人にエネルギーの流れを与え、また受け取っている」とヴィディヤマラさんは言います。

「このモニュメントは、人の境がはっきりしていません。エネルギーは肉体の枠を超えて発されていて、同じ空間にある複数のこのモニュメント同士が、エネルギーを交換し合っている。こちらのほうが現実に近いのではないでしょうか」

人と人のつながりに、どのような影響を与えていくか

「人間同士はつながっている」としたとき、そこにどんな影響を与えたいですか?

「難しいことを後まわしにしたり、距離をとりがちになってしまう」という参加者の質問に対して、講師の2人は、「トレーニングで変わる。勇敢さをもち、自分の内面につながっていれば、自分の限界を拡げていける」と言い切ります。
「そのために必要なことが、マインドフルネスとコンパッションだ」と。

怒りを感じたり、不快な感覚を持ったりしたときには、まずその感覚に気づくこと。
そして、自分の中にひきこもったり、咄嗟に言い返したりという反応的な行動をとるのではなく、自分の感情を認めたうえで、反応を手放して別の選択肢を意図してとるトレーニングをするということです。

反応を手放すとは、どういうことなのでしょうか。
例えば、ヴィディヤマラさんは、10代のころの事故の影響で脊髄の損傷による下半身麻痺と慢性的な痛みがあります。それに対峙するためにマインドフルネスの実践を始めた当初は、マインドフルネスを習得すれば痛みがなくなると思っていたそうです。しかし、痛みから離れようとしても離れられず、痛みから離れようとするほど抵抗が増していくように感じていました。

感じたことに対して正直でありながら、感覚(この場合は痛み)と反応(この場合は抵抗)を区別することが「反応を手放す」ための第一歩です。手放すとは、(無理やり)追い出すのではなく、そこにあってもいいし、なくてもいいという状態にすることです。

「痛みはやはりつらい。その痛みという感覚に対してあたたかさや優しさをもってくる。そして反応だけを手放すと解放される。人生をだめにするのは感覚ではなく、反応です」

反応を手放した上で、相手や関わる人に、「今日素晴らしいことがありますように」と願ってみてくださいとヴィディヤマラさんは続けます。

「自分の内面を理解しつつ、他の人にたとえ良い感情を抱いていなくても、その人のウェルビーイングを願えるか。それぞれの個性を持ちながら、人間としての経験を一緒につくっているということに、オープンな態度でいられるか」

まずは自分に対してコンパッションを向けるところから

ヴィディヤマラさんに言われて私がほっとしたのは、「くったくたに疲れてイライラしている状態で、他の人の幸せを願うことは難しいです。そういうときは、まず自分にいいことがありますようにと願えばいいんです」という言葉でした。

難しい状況に出会ったときに、まずは自分に起きている感覚をみる。そしてそれを認めて反応を手放し、さらには相手の幸せを願う。まさにマインドフルネスとコンパッションのエッセンスが詰まったセッションでした。

もう1人の講師のジェレミーさんは、よく「山ごもりをしなくても、日常でマインドを磨いていくことはできる」と言うのですが、まさに日常という道場で日々試されていることを感じます。

Information

セルフマネジメント・マインドフルネスで結果を変える
~反応的な感情を自覚し、選択肢を広げる~

今回紹介したのは、これまでのマインドフルネス・セルフマネジメントセッションの参加者向けに特別に開催した1日のセッションです。定期的に開催しているレギュラーセッションでは、マインドフルネス・セルフマネジメントを基礎から学び、講師や仲間と共に実践しながらスキルを習得する、4回の連続セッションを開催しています。
次回は2022年10月です。

テーマは「Mastering Reactions(反応的な感情を手なずける)」。
ヴィディヤマラさんの痛みの例で言うと「抵抗」、ついイラっとしたり、悲しんだりしてしまうという「反応」に気づくこと、そしてどのように反応のパターンを変えるかを実践していきます。
講師は、これまで250名の日本のソーシャルリーダーにマインドフルネスとセルフマネジメントのセッションを届けてきたジェレミー・ハンター氏です。米国でMBAやビジネスエクゼクティブ向けに教えてきている実践的で、結果重視のセルフマネジメントを、ソーシャルリーダーに向けて、開催します。ぜひお役立てください。

開催概要
●日時:(全ての日程への参加が必須)
10月7日(金)、10月28日(金)、11月11日(金)、11月17日(木)
各日10:00~13:30 ※間に30分の休憩をはさみます

●場所:オンライン(Zoom)

●対象:
・ETIC.が主催するプログラムに参加したことがある、または、ETIC.が提供するサービスを利用したことがある方(所属する団体のスタッフの方の参加も歓迎します。)
・「ジェレミー・ハンターSpecial Session for Social Leaders in Japan」にこれまでに参加した方からの推薦がある方(ETICスタッフからの推薦も含む)

●参加費:本プログラムは、利益を目的としておらず、日本のソーシャルセクターにこのセッションが必要だと考える、ジェレミーさんの協力と、事務局のボランティアベースの活動により成り立っています。
参加費は、【一般】と【ソーシャルリーダー】の2種類を設けています。
【一般(営利企業)】25万円(税込)/人
【ソーシャルリーダー特別価格】8万円(税込)/人
 ソーシャルリーダーとは、民間非営利組織もしくはそれに準じる社会的企業、行政に所属する方を主に想定しています

 ●プログラム内容
・自覚的でない反応のパターンがどのように作用し、どのようにそれを打破するのかを学ぶ
・感情的な反応の「ロジック(論理)」について理解する
・より多くの可能性を認識するために、自身の知覚・視野を拡げる方法を習得する
・行き詰まった感情を解放し、そこから前進する方法を学ぶ
感情を生み出している源は、これまでに体験したこと、信じてきたことに影響を受けており、手放すのは簡単なことではありません。一方でそれが可能になると、選択肢が広がり、今までの延長線上ではない進化を遂げることにつながります。

全4回のプログラムでは、セッションの間に学んだスキルを日々の仕事や生活で実践し、その結果を持ち寄り、フィードバックを得ながら習得していきます。
お申し込み、詳細はこちら

<8月22日(月)12:00締切>
医療・ヘルスケア領域を起点に社会変革に挑む方を
対象とした半年間の伴走支援プログラム
「Vision Hacker Association」エントリー受付中


この度ETIC.は、次世代の医療ヘルスケアを創造し、豊かないのちに溢れる社会へと進化させる事業と共創を形づくるプログラムをファミリーヘルス財団と実施いたします。

プログラム採択メンバーはアソシエーションの一員となり、150万円の資金支援、最前線で活躍するメンター陣による伴走、社会実装パートナーとの共創支援等を活用し、共に学び合いながら、ビジョンを具体化させます。

既成概念に囚われることなく、大胆なビジョンを描き、10-20年後の医療をつくっていくチャレンジをご一緒できる方のご応募を心よりお待ちしております。

◆プログラム概要
◎実施期間:2022年9月~2023年3月
◎こんな方にオススメ:
・医療・ヘルスケア領域の最前線で活躍する起業家、専門家の力を借りて、
 本気で新しい事業を構想をしたい
・本格的な事業開始や社会実装に向けて事業モデルの仮説検証、
 実証実験を行っていきたい
・プロトタイピングなど、テクノロジー/プロダクト/サービスの
 研究・開発中である
・事業や活動のインパクトを高めたい
◎採択予定数:最大7名(団体)
◎活動奨励金:1名(団体)あたり150万円助成
◎エントリーはこちら
◎プログラムの詳細は、こちらをご覧ください。
◎応募締切:2022年8月22日(月)正午

編集後記


今回、マインドフルネスとコンパッションについて書きましたが、私は毎日マインドフルネスですということは残念ながらなく、日々、いらっとしたり、ぎくっとしたり、せわしなく感情が動いて、つい反応的になることもあります。まずはその感情に気づくところからだと講師になぐさめられながら、訓練中の身です。ただここ数年セッションを担当して実感していることは、これはスキルであり、練習することによって得られる能力だということです。これまでに、たくさんの参加者の変化をみてきました。ぜひ、これまでに参加してくれた方々のメッセージを、こちらの最下部からご覧いただけたら嬉しいです。(本木裕子)


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