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妹と結婚してくれませんか

水道も電気もないアフリカの奥地に出張して、私は仕事をしていた。同行した同僚とはもともと反りが合わなかったのだが、現地で関係はさらに悪化した。途中、私が勤務する会社の女社長が合流した。スペイン人の若いカメラマンを連れている。後から思えば、すでにふたりは男女の仲になっていたのだった。

現場の責任者は30代の女性だった。現地の出身で子どもが何人かいた。私たちは実際を分かり合える関係を築いて、仕事は順調に進行し、私は無事日本に帰国した。

彼女から個人的なメールが届くようになった。自分の娘が教育を受けられるよう、サポートしてくれませんか。私は日本人だが、あなたが思っているほどの収入は得ていないので難しい、と返信した。すると、矢継ぎ早に次のメールが来た。私の妹はとてもいい娘です。ついては、妹と結婚してくれませんか。

10年の歳月が流れ、私が転職と転地を繰り返していた頃、久しぶりに彼女からメールが来た。家の裏手に果物がいっぱい生っている。輸入してくれませんか。

アフリカの女性は逞しい。そして、現実の問題に打ちひしがれている。思い返せば、私は行く先々で個人的な支援を求められ、力量がないことを言い訳に断ってきた。そのたびに、小さな幸せのひとつひとつを取りこぼしてきたように思えてならない。面白がってやってみれば、お互いにもっと逞しくなれたのかもしれない。


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