見出し画像

ウガンダからルワンダへ、赤道をまたぐ01

ドバイ国際空港の広大なターミナルで、私はカンパラ行きのフライト・ゲートに向かって歩いていた。ゲートはあまりにも広いドバイ国際空港ターミナルのかなり端の方だったが、搭乗まではまだ時間があるので慌てる必要はない。ようやくゲートに到着すると、付近で飛行機を待つ人たちはみな黒人だった。俄然、アフリカ旅行が現実感を増した。

年に1回は海外へ、できればそれまで訪れたことのない国へ旅行に行きたい。それで、この年はウガンダとルワンダを旅行先に決めたのだった。東アフリカに位置するこの2国について、私は特に何かを知っているというわけではなかった。私が持っていたのはせいぜい、かつてルワンダで起きた陰惨な出来事について『ホテル・ルワンダ』で得た知識くらいのものだ。

経済面でいえばアフリカはかなり前から注目を浴びていたらしい。なにせアフリカ大陸は面積でいえば地球全体の4分の1を占めるほど広大で、全人類の6人に1人はアフリカの国のどこかに住んでいる。市場の新規開拓に余念のない企業人はアフリカの国々をよく知っているのかもしれない。でも、一般人はそうではないだろう。

外務省が作成した「日本とアフリカ」というリーフレットにはこんなコピーが載っている。「遠くて近い、アフリカ。」アジアに住む私たちにとって、アフリカが遠く、馴染みの薄い地域であることは間違いない。しかし、私自身についていえば、アフリカに行こうと考えた理由はその遠さなのだと思う。地理的に遠いというのは言うまでもなく、人種・民族や文化の方面であまり馴染みがないというのが魅力的だったのだ。

実は、これまでにもアフリカ大陸に足を踏み入れたことはあった。1か月ほどかけてスペインをぐるりと回るという旅行で、ついでにモロッコまで足を延ばした時が私の初アフリカだ。ジブラルタル海峡は歴史的に見て軍事的な要衝だったが、実際にその地に赴いてみれば理由も頷ける。ジブラルタル海峡の最も狭い場所ではイベリア半島とアフリカ大陸の距離がわずかに15キロほどしかない。ここを押さえられたら地中海路はひとたまりもないだろう。その一番狭い領域を結ぶ船便が毎日スペインのタリファからモロッコのタンジェを結ぶ船便が毎日何便も出ている。所要時間は1時間足らず。日帰り旅行も可能なのだが、私は1週間ほどかけてモロッコを見て回った。

2回目のアフリカ旅行はエジプト・シャルムエルシェイクが目的地の1つだった。この地名を聞いてピンとくるのは恐らくダイバーだけだろう。普通のエジプト観光客は迷わずカイロへ直行する。意外かもしれないが、砂漠のイメージが強いエジプトはスキューバダイビングのメッカでもある。紅海でのダイビングを目的に多くのダイバーがシャルムエルシェイクを訪れる。そして中東各国からの観光客も多い。何人かの観光客と話したところ、彼らはみな心底旅行を楽しんでいる様子だった。曰く、ここでは酒も飲める。ムスリムにとってエジプトはずいぶんとおおらかな国のようだった。

もうお分かりと思うが、モロッコとエジプトはいずれもアラブ人の国で、地理的にはアフリカでも文化圏は中東である。私は、いわゆる黒人の国に行ってみたかったのだ。

アラブの文化圏を除くと、アフリカは大まかに言って西か東か南である。書店で『地球の歩き方』の背表紙を眺めてみると、刊行されているのは「南アフリカ」「東アフリカ」「マダガスカル・モーリシャス・セイシェル」という3シリーズのようだ。インド洋の島は魅力的だったが、まずは大陸が王道だろう。現時点でサファリツアーに参加する予定はなかったが、アフリカといえばやはり雄大な自然の印象が強く、野生の動物が闊歩するエリアにも少しくらいは訪れてみたい。私にとって、『地球の歩き方』の購入は旅行準備の第1歩である。丹念に読み込むのが目的ではなく、空き時間にぱらぱらと眺めて旅行気分を高めるのが好きなのだ。

よし、決めた。私は本棚から『地球の歩き方』の「東アフリカ」編を取り出すと、すでに少しばかり旅行気分に浸りながら本をレジへ差し出した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?