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ネイル~祖母が浮かべた少女のような笑顔~

前回セルフネイルについて書いた。

書いている最中に思い出が蘇ったから、今回は余談として思い出話を少し。

私は素人ながらにセルフネイルをしている。

大学時代、実家に帰省した時のこと。

脳梗塞の後遺症で高次脳機能障害になった祖母からは笑顔が減っていた。

そんな祖母を笑顔に出来ないかと母は考えていた。

そして思いついたのがネイルだった。

祖母は昔は自分でネイルをする人だったのだ。

そして、「女の人だから、指先を綺麗にしたら嬉しいんじゃないかな」と母は思った。

そして、私は母から頼まれて祖母のネイルをした。

実家に帰省中のため、使えるネイルカラーは母が持っていたものだけ。

だから単色ネイルデザインしかできなかったけれど、

祖母はネイルを塗っている間も、塗り終わった爪を見ている時も嬉しそうだった。

母の願い通り、祖母を笑顔にすることが出来たのだ。

その後、私は母方の祖母にだけネイルをするのは不公平に思い、

父方の祖母にもネイルをした。

父方の祖母は農家の生まれで、お洒落とは縁遠い人生を送り、

年老いてからも趣味で畑仕事をしている人だった。

そんな祖母も、「ばーちゃん、爪綺麗に塗ったげるから手ぇ出して」と声をかけると、

すんなりと手を差し出してくれた。

そして、私は祖母と他愛もない話をしながら祖母の爪を彩った。

完成すると、祖母は少し照れくさそうに、だけど嬉しそうに笑った。

ネイルを塗った時の祖母達の笑顔は、とても可愛らしい顔だった。

世の中では、施設に入居している女性高齢者向けにメイクをする取り組みもある。

メイクをすると、皆、女性らしさを感じられて嬉しい気持ちになり、笑顔が溢れるそうだ。

これは、女性特有の話ではあるけれど、やっぱり年齢関係なく、

女の人は女でありたいのだろう。

女らしさを一瞬でも得ることで幸せを感じるのだろう。