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授業の理想は完全個別化・無学年化

こんにちは。エデュサポです。

集団クラスで授業をしていると、「今はクラス全員にとって良い授業ができている!」と思うことは、ほとんどありません。

集団授業では、授業に参加している大多数にとって良い授業になるように授業を設計します。

ところが、クラスにはいろいろなタイプの子どもたちが参加しているので、「あの子とあの子には別のことをやらせたいなー。」と思うことも多いです。

今回は、授業を完全個別化して、さらに無学年化できたら良いのではないかというお話をします。

私は以前、塾講師の仕事をしていました。集団塾と個別塾で講師と教室長を務め、オンライン教育系の塾運営の仕事をしていた時期もあります。かれこれ20年以上、塾業界で働きました。

今までの経験を基にお話します。1つの意見として、より良い教育を考えるきっかけとしていただければとても嬉しいです。

集団での学習の良いところ

私は、教育を完全に個別化するべきだとは思っていません。集団で何かに取り組むことはとても大切なことです

たとえば、お互いの意見や考えを交換しながら課題を解決したり、ディスカッションの中で議論を発展させたりするようなことは、集団でしかできません。

チームの一員であることで、お互いに切磋琢磨できるというメリットもあります。

一方で、単純に知識を得るための授業であれば、個別授業のほうがずっと効率的だと思います

得意不得意は全員違う

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集団授業で扱う授業内容のレベルは、そのクラスの学力の平均値当たりに設定されます。

つまり、クラス内で成績の良い生徒にとっては簡単すぎ、クラス内で成績の悪い生徒にとっては難しすぎます。

細かくクラス分けがされていたとしても、生徒にとって得意科目や不得意科目があります。

ある生徒にとっては、「数学と国語の授業レベルはピッタリだが、英語はレベルが高すぎる」という状態になってしまいます。

また、同じ数学の授業であっても、「計算のところはよくわかるけど、割合の文章題が出てくるとチンプンカンプン」という生徒もいます。

「あの生徒には計算のところはもっと難しい問題に挑戦させたいけど、割合の文章題のところはもっと基本問題をやらせたいな。」と思いながら、クラス全体の中間レベルの問題の解説をしなければなりません。

思考の順序や特性だって全員違う

算数の問題はどんな解法で解いても同じ答えに辿り着きます。逆に言えば、答案だけ見れば同じ答えに辿り着いていても、途中の過程は全然違ったりします。

考え方の順序にも得意不得意があります。同じ先生の授業に参加しているにも関わらず、「あの先生の授業はわかりやすい」という生徒がいたり、「あの先生の授業はわかりにくい」という生徒がいるのは、ここに原因があることが多いです。

特性も生徒ごとに違います。一つのことに集中して取り組むことが得意な生徒もいれば、いろいろなことを並行させながら取り組むことが得意な生徒もいます。

音で聞いたほうが理解しやすいという生徒もいれば、字で読んだほうが理解しやすいという生徒もいます。

今までは多数のための授業しかできなかった

本当は生徒それぞれの状況や特性に合わせて授業をしたいのですが、それは無理でした。

先生の数が圧倒的に足りないからです。

仕方がないので、なるべく多くの子どもに効果があるように授業を設計するしかありません。つまり、クラスの中に一番多いであろうタイプの生徒に合わせて授業を設計するしかありません。

その結果、クラスの多数派からもれてしまった生徒は、少しわかりづらくても、少し効率が悪くても我慢してもらうしかありませんでした。

授業の完全個別化は実現可能になりつつある

ネット環境の拡充とAI技術の発展で、授業の完全個別化は実現可能になりつつあります。

まず、ネット環境の拡充によって、授業の動画配信が現実的になりました。スマートフォンとタブレットがあれば、同じ教室にいながら生徒それぞれが別々の授業を受けることができます。

そしてAI技術の発展で、生徒がどんな性格で、どんな学習状況で、どんな得意不得意があるかを判別して、どんな授業を受けるべきかを判断できるようになりつつあります。

この2つを組み合わせれば、数多くの種類の動画授業を、生徒一人ひとりに合わせて適切に配信できるようになります。

一方通行になってしまう

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ただし、動画による授業は、教師から生徒への一方通行の授業になってしまいます

知識を与えるだけの授業であれば一方通行でも良いですが、主体性を育てるという観点では一方通行であることは大きな問題です。

ですので、現状目指せるのは「一方通行の完全個別授業」+「双方向の集団授業」のハイブリッド型になるでしょう。

VRとかARがもっと発展すれば、すべて完全個別化も実現可能かもしれません。

同じ物理空間にいながら、バーチャルでは別々の空間で授業を受けることができるかもしれません。

1000人に1人とか、10000人に1とかの少数派の特性を持つ子どもたちも、バーチャル空間に集まって授業ができるようになると良いのではないかと思います。

地域に縛られれば少数派であっても、日本中、世界中を探せばきっと似た特性の人間が多くいるはずです。

物理的距離に縛られて多数派の中で不自由な授業を受けずに、自分にあった授業を、同じような悩みを持つ仲間たちと受けられたら理想です

個別化を進めて無学年化もできれると良い

少し話が未来に飛躍しました。一度現代に戻ります。

今の教育は年齢とともに学年が上がっていきます。ところが、成長や習熟スピードにも個人差があり、ここでも多数派からこぼれ落ちてしまい、苦しい思いをする子どもたちもいます

たとえば、方程式の単元で、食塩水の文章題を扱う授業をまったく理解できない生徒がいます。

方程式を理解していない場合もありますし、割合を理解していない場合もありますし、なんなら分数や小数を理解していない場合もあります。問題文を正しく読むための読解力が足りていない場合もあります。

こういった生徒にとっては、方程式の文章題の授業はまったくの暗号を聞いている状態になり、ただただ苦痛な時間となってしまいます。

そして、年齢が上がっていけば授業は無情にも先に進んでしまいます。授業はますます難関な暗号になり、どんどん数学が嫌いになっていってしまいます。

今の授業体制では、こういった子を救うことができません。その子のためにもう一度分数の復習から授業をすれば、その他の多くの生徒の授業に支障が出てしまいます。

ここで、前述した動画授業による完全個別化を組み入れれば、生徒それぞれの学習状況によって、学年を問わず学習内容を変えていくことができます

課題は多い

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今回書いた内容は、まだまだ理想論ですし、机上の空論に過ぎません。解決しなければならない課題が多いです。

まず、技術的な課題は多いでしょう。また、新しい制度を設計しなければなりません。法律的な課題もあると思います。もちろん予算の問題もあります。

そして、心理的な壁も大きいでしょう。たとえば、オンラインやバーチャルでは、リアルな人同士のつながりの大切さを知ることができないのではないかと思われる方も多いでしょう。私もその点は課題だと思います。

または、「あの子はまだ8歳なのにあんなに難しいことをやっているのに、うちの子はもう15歳なのにまだ分数をやっている。」という、おかしな競争意識も芽生えてしまうかもしれません。

競争意識だけなら良いですが、そこに劣等感や上下関係が発生してしまうと問題です。大人同士の見栄の張り合いだけでなく、子供同士の優劣の比較やいじめの原因にもつながりそうです。

まとめ

今回は、オンラインとAIを活用して、授業を完全個別化・無学年化できたら良いのではないというお話をしました。

課題は多いですが、実現できればメリットは多いです。

今の学校教育に不自由を感じている子どもたちは多いです。そして、昔と違い、多数派しか救えないという状況ではありません。

理想は、生徒一人ひとりがそれぞれに合った教育を受けられる環境を作ることです

そのための一つの意見として読んでもらえたらならとても嬉しいです。

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