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うちの子に一番合う教材は何?

発達障害の子どもの療育の件で、私は支援者の方から相談を受けることがあります。学校や療育園の先生など、最近は保護者に加え、相談支援事業所の方々からも相談を受けることが多くなりました。

そのときに、「教材はどんなものを使ってますか?」とよく尋ねられます。しかし、一般論的な答えはあるものの、実際には一人ひとりに合う教材を用意する必要があるため、その質問に答えるのはとても難しいのです。


教える側の観察力が カギ になる

たとえば、「数は数えられるけど足し算ができない」という子どもの場合、「どんなプリントだったら足し算できるようになりますか?」と尋ねられても答えは一様ではありません。
 
なぜなら、教える側が「なぜ足し算ができないのか」を理解していなければ、どんな自立課題(プリント)を与えてもあまり意味がないからです。「なぜできないのか」「どこでつまずいているのか」を知ることが先決です。

つまずいている部分を見つけたら、「その学習に対して充分に発育成長しているのかどうか」、それとも「理解が追いついていないだけなのか」を知る必要があります。そうやって初めて必要な教材がわかるようになるのです。


一番重要なのは、教材ではなく教える側の観察力だということです。

ピアジェの認知発達理論では、定型発達の子どもの場合、「液量保存の法則」が理解できるようになる「具体的操作期」(小学校1年頃)が、算数などの数の操作ができるようになるとされています。

ピアジェの認知発達理論↓

つまづきごとに教材は変わる

しかし、発達障害の子どもの場合、その時期になっても心理発達が「前操作期」にいるなどして、認知発達が未熟な場合があるのです。「数を数えられる」のと「数の量を理解している」のとでは、数への理解度が大きく異なります。数を操作できるようになるには、後者である必要があります。


定型発達の子どもは、5歳ぐらいで「5の合成」が理解できるようになります。自分の指を使って合成の練習ができるからです。ところが、発達障害の子どもの場合は、自分の身体を無意識下で動かせるようになっていない(「身体図式」が整っていない)ため、自分の指と数をイメージとしてつなげることが難しく、できるようにするには、指を使って一緒に遊んであげることです。すると、この場合の「教材」は、自分の指、つまり身体ということになるわけです。


支援用アプリや無料素材を使って、
子どもに合う教材を作る

まずは、お子さんの概念形成がどこまで進んでいるのか、学習に向うだけの発達段階にあるのかどうかを把握することが重要です。学校に入学すると、授業の内容についていけるのかに目が行きがちです。それよりも、子どもの成長段階に合った教材を用意できるかどうかのほうが大切だと思います。発達段階が追いついていないときにどんな教材を使っても、できるようになることはまずないからです。

また、発達障害のお子さんの場合、市販の教材のすべてを使えるわけではありません。部分的に必要だったり、せっかく買ったのにそのままでは使えないといったことがよくあります。要するに、教材はその子に合わせてカスタマイズする必要があるということです。現在は支援用アプリや無料素材などがたくさんあるので、PC(パソコン)などを使ってご自身で作られることをお勧めします。

PCなどが苦手だという保護者の方もいると思います。しかし、今後生きていく上でご自身もお子さんもPCやネットスキルは絶対に必要になってきます。たとえば、書字が苦手な子の場合には、文書作成にPCを使ったほうがずっと便利です。

一番身近にいる保護者がネットやPCを使えることは、彼女たちの生活を広げることに必ず役立ちます。教材を自分で作るのは大変だと思われるかもしれません。でも、一番効率よく学ぶことができますし、結局経済的にも負担が少なくて「お得」だったりするのです。

PCを使いこなせれば療育の幅が広がり、将来的にも必要なスキルが身につき、時間や労力の削減にもつながります。お子さんと一緒に好きなキャラクターなどで教材を作ると楽しいですし、興味も持ちやすいので反応もよいと思います。ぜひお試しください。

『発達障害の女の子のお母さんが早めに知っておきたい「47のルール」』より抜粋/編集

◆本書の紹介◆
発達障害の女の子の保護者や支援者が気をつけるべき点や、
知っておくべき情報などを全6章、「47のルール」としてわかりやすくまとめたのが本書です。

1章 診断や医療機関の上手な使い方について
2章 親としての心構え、親のとるべき行動
3章 日常生活での支援と療育について
4章 健やかな生活を送るための学校選び
5章 女の子に必要な「学び」-思春期と性教育
6章 療育支援Q&A
   「何度注意してもやめてくれません?」
   「プライドが高くて注意するとパニックになります」
   「新しい場所や新しいことが苦手です」など。

豊富な経験や、専門家からのアドバイスをもとに著者が作りあげてきた「発達障害の女の子たちが幸せに生きていくためのノウハウ」です。
ぜひご活用ください。

カスタマイズもできる、療育トレーニング教材がダウンロードできるあそトレはこちら↓↓

―藤原美保(Fujiwara Miho)

藤原さん250

健康運動指導士、介護福祉士。株式会社スプレンドーレ代表。エアロビクス、ピラティス、ヨガインストラクター等フィットネスのインストラクターとしてスポーツクラブ、スポーツセンターでクラスを担当。発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目のあたりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げる。

100組以上の発達障害の女の子とその保護者をサポートしてきた経験を踏まえ、実践の場からの声を届けるために、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』を執筆。



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